抑制剤種類と金属加工での効果的活用法

金属加工業で使用される抑制剤の種類を詳しく解説し、腐食防止から酸化抑制まで各種類の特徴と適切な選択方法をお伝えします。作業効率と品質向上を実現するポイントとは?

抑制剤種類の基本理解と金属加工への応用

抑制剤種類と金属加工での活用
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腐食抑制剤

金属表面に保護膜を形成し、錆や腐食を防ぐ基本的な抑制剤

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酸化抑制剤

高温加工時の酸化反応を防ぎ、金属品質を維持する重要な添加剤

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ミスト抑制剤

切削加工時のオイルミスト発生を抑え、作業環境を改善

腐食抑制剤の種類と特徴

金属加工現場において腐食抑制剤は必須の添加剤です。主要な腐食抑制剤には陽極抑制剤、陰極抑制剤、混合抑制剤の3種類があります 。陽極抑制剤はクロム酸塩、硝酸塩、モリブデン酸塩などで、金属表面に薄い酸化皮膜を形成して腐食電位を低下させます 。
参考)先進の腐食抑制剤|錆と腐食を防ぐ

 

陰極抑制剤は金属表面でのカソード反応を抑制する働きを持ちます 。これには2つの作用があり、カソード毒として直接反応を遅らせるものと、脱酸素剤として水素や酸素の拡散を制限するものに分けられます。代表例としてヒ素イオンやセレンイオン、亜硫酸イオンなどがあります 。
混合抑制剤はケイ酸塩やリン酸塩などで、金属表面に皮膜や沈殿物を形成し、カソード反応とアノード反応の両方を抑制します 。この種類は錆水の形成防止によく使用され、コスト効率の良い選択肢として注目されています。

酸化抑制剤種類と金属加工での役割

酸化抑制剤は金属加工時の高温環境下で重要な役割を果たします。一次酸化抑制剤はラジカルを捕捉して自動酸化を防止し、二次酸化抑制剤はハイドロパーオキサイドを無害な物質に分解します 。フェノール系酸化抑制剤は重合工程や成形加工時の高温に対する耐熱性と電子放出性が選択のポイントになります 。
参考)https://www.tenkazai.com/pdf/additive-101/11.pdf

 

金属加工において酸化抑制剤は切削油や潤滑油に添加され、加工中の金属表面保護に貢献します。これらは加工物の品質向上と工具寿命の延長に直接的な効果をもたらし、生産効率の向上に繋がります 。
参考)https://www.nittobo.co.jp/business/materialssolution/chemical/about/area_metal_processing.html

 

遷移金属は酸化反応を促進する性質があるため、金属不活性化剤も酸化防止作用を有します 。これらの抑制剤は相互に作用し合い、複合的な防止効果を発揮することが多いのが特徴です。

オイルミスト抑制剤種類の詳細解説

オイルミスト抑制剤は切削加工現場の作業環境改善に欠かせない添加剤です。主要な種類にはPMA(ポリメタクリレート)とPIB(ポリイソブチレン)があり、これらは高い付着性を持つ特徴があります 。これらの添加剤は切削油中で物理的に生成された微粒子同士を短時間でくっつかせ、次第に大きく成長させて自重で機械内に落下させる仕組みです 。
参考)オイルミスト抑制剤

 

分子量が高いほど、また添加量が多いほどミスト抑制効果が強まる傾向にあります 。一般的には油性切削油を対象として使用されることが多いですが、最近では水溶性切削油にも添加されるケースが増えています 。
ミスト抑制剤の効果は切削諸条件によっても大きく左右されるため、現場の状況に応じた選択が重要です 。精製度の高いパラフィン系ナローカットオイルを併用することで、より優れたミスト抑制効果が得られます 。
参考)現場でのオイルミスト対策法について

 

皮膜形成抑制剤種類の独自応用法

皮膜形成抑制剤は金属表面に特殊な保護膜を形成する新しいタイプの抑制剤です。皮膜形成アミン(Film-Forming Amine, FFA)は鋼材表面に吸着し、疎水性膜を形成することで水-蒸気サイクルの腐食防止に高い効果を発揮します 。この技術は海外の発電プラントでヒドラジン添加に代わる腐食抑制技術として広がりつつあります 。
参考)報告書 詳細情報 

 

従来の抑制剤と異なり、皮膜形成抑制剤は極薄い透明皮膜を形成し、対象金属に悪影響を与えません 。特にアルミニウムやアルミニウム合金に対しては、高pH環境での腐食問題を効果的に解決します 。
参考)VERZONE LM-N1

 

金属加工現場では、循環使用を考慮した長期的効果が期待でき、乾燥後もシミなどが残らない利点があります 。これらの特性により、従来の抑制剤では対応困難だった特殊な加工環境でも活用できる可能性が広がっています。

材質別抑制剤種類の選択指針

金属の種類に応じた抑制剤選択は、効果的な加工を実現する重要な要素です。ステンレス鋼に対してはキレート化された金属イオンを利用した新規腐食抑制剤の研究が進んでおり、塩化物溶液中での局部腐食発生を抑制できることが明らかになっています 。
参考)KAKEN href="https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23581/" target="_blank">https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23581/amp;mdash; 研究課題をさがす

 

アルミニウム合金には無機系成分で構成された水溶性防錆剤が効果的で、高pH環境での腐食抑制に優れた効果を示します 。銅および銅合金用にはベンゾトリアゾール系の抑制剤が代表的で、VERZONE TTAなどの製品が変色および腐食を効果的に抑制します 。
参考)腐食抑制剤 - メーカー・企業5社の製品一覧とランキング

 

鉄鋼用抑制剤には気化性防錆剤としてDICHAN(ジシクロヘキシルアンモニュームナイトライト)やDIPAN(ジイソプロピルアンモニュームナイトライト)が使用されます 。これらの選択には加工条件、環境条件、コスト効率を総合的に考慮することが重要です。
参考)防錆剤の種類と特徴