透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡の違いと使い分け

透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型電子顕微鏡(SEM)の違いを金属加工の現場目線で解説。試料作製コストや分析目的による使い分けを知らないと、数十万円の無駄が生じることも。どちらを選ぶべきか?

透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡の違いと使い分け

SEMで分析を依頼したのに、実は内部欠陥の原因究明にはTEMしか使えず、試料を作り直すと追加費用が50万円以上かかるケースが報告されています。


🔬 TEMとSEMの違い:3つのポイント
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観察対象の違い

TEMは試料の「内部構造」を原子レベルで観察。SEMは試料の「表面形状」を立体的に観察します。

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試料作製コストの違い

TEM用試料の薄片化加工(FIB法など)は1点あたり数万〜数十万円。SEM用試料はほぼそのまま使えます。

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金属加工現場での使い分け

割れ・剥離の表面観察はSEM。析出物・転位など結晶内部の解析はTEM。目的を誤ると分析が無駄になります。


透過型電子顕微鏡(TEM)の基本原理と金属分析での役割

透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)は、電子線を試料に「透過」させることで内部構造を観察する装置です。光学顕微鏡が可視光を使うのと同じ発想ですが、電子の波長は可視光の約10万分の1程度と極めて短いため、0.1ナノメートル(nm)以下という原子レベルの分解能を実現しています。


金属加工の現場で特に重要なのは、TEMが「結晶格子の乱れ」を直接見られる点です。鉄鋼材料の焼入れ時に生じるマルテンサイト変態、アルミ合金の時効硬化で析出するGPゾーン(直径数nm〜十数nm)、疲労破壊の起点となる転位の集積など、これらはすべてSEMでは観察できない内部現象です。


TEM像の種類は主に3つあります。


  • 🔸 明視野像(BF像):透過した電子で像を形成。密度が高い部分が暗く見える
  • 🔸 暗視野像(DF像):特定方向に回折した電子だけを使う。結晶粒・析出物のコントラストが強調される
  • 🔸 高分解能TEM像(HRTEM):原子配列を直接撮影。格子定数0.2〜0.3nm程度の列が縞状に見える


金属加工の不具合解析では、HRTEM像から「界面のミスフィット転位密度」を計測し、めっき密着不良の原因を原子レベルで特定した事例があります。つまり内部が原因の不具合分析ならTEMが原則です。


ただし最大のハードルは試料作製です。TEMは電子線を「透過」させる必要があるため、試料の厚みを100nm以下(髪の毛の直径の約1/700)に薄くしなければなりません。この薄片化作業が難しいところですね。代表的な方法はFIB(集束イオンビーム)加工で、1点あたりの外注費用は5万〜30万円程度が相場です。


走査型電子顕微鏡(SEM)の基本原理と表面観察の強み

走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)は、電子線を試料表面に「走査(ス