トルシア型ボルト締め方と手順・検査の基本

トルシア型ボルトの正しい締め方を知っていますか?一次締め・マーキング・本締めの3ステップと検査ポイントを、施工ミスによるリスクや再使用禁止ルールとあわせて詳しく解説します。あなたの現場の締め付けは本当に正しい手順を踏んでいますか?

トルシア型ボルトの締め方・手順と検査ポイント

一度使ったトルシア型ボルトを再使用すると、軸力が最大36%低下して構造物が基準を満たさなくなります。


🔩 トルシア型ボルト締め方:3ステップ概要
1️⃣
一次締め(仮締め)

専用シャーレンチでボルト径ごとの規定トルク(M16:約100N・m、M20/22:約150N・m、M24:約200N・m)で1回だけ締め付ける。2度締めは厳禁。

2️⃣
マーキング

ボルト・ナット・座金・部材の4点をまたぐように一直線のマークを施す。共回り・軸回りの検査に不可欠。

3️⃣
本締め(ピンテール破断確認)

専用電動シャーレンチでピンテールが破断するまで締め付け。破断確認と±30°以内のナット回転量バラつきチェックが必須。


トルシア型ボルトの一次締めで守るべき規定トルクと手順

トルシア型高力ボルト(S10T)の一次締めは、「建方一番」などの一次締め専用シャーレンチを使用して行います。 ボルト径ごとに規定トルクが決まっており、M16は約100N・m、M20・M22は約150N・m、M24は約200N・mと明確に定められています。 1N・mというトルクは、1mのレンチに1kgの力をかけた回転力に相当します。150N・mはおよそ体重60kgの人が約25cmのレンチを握り締める力と考えるとイメージしやすいでしょう。 feskk.co(https://feskk.co.jp/%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%88%EF%BC%88s10t%EF%BC%89%E3%81%AE%E7%B7%A0%E4%BB%98%E6%96%B9/)


一次締めのトリガーを引くと、レンチが自動的に規定トルクで締め付けて停止します。 必ず1回だけ引き切ることが絶対ルールです。 同じ箇所を2度締めすると、ナットの座面やねじ山に過剰な摩擦が発生し、本締め時に正規の軸力が得られなくなります。 これは規定を守ったつもりでも施工不良になる典型的なミスです。 kouriki-bolt(https://kouriki-bolt.com/faqs/faq_questions/index/limit:20/page:2?frame_id=21)


締め付けの順序も重要です。ボルト群の中央部から外側(端部)に向かって順番に締めていきます。 端部から締めると、すでに締めたボルトが浮き上がる「バタ付き」が起こりやすく、接合面の密着が不均一になります。 中央から順番に——これが原則です。 jiro-kk.co(https://www.jiro-kk.co.jp/reference/item003)


  • ⚠️ 一次締めは1回のみ(2度締め禁止)
  • ⚙️ 締め付け順序:ボルト群の中央→端部へ
  • 📋 始業前に専用レンチの調整状態を確認すること
  • 🔄 ボルト挿入から本締め完了まで同日中に行う


参考リンク(一次締めトルク値の数値根拠として活用できます):

一次締めのトルク値一覧および専用レンチの使い方について解説されているページです:

高力ボルトの1次締めトルク値 – ミカオ建築館


トルシア型ボルト締め方でのマーキングの目的と正しい方法

マーキングは「記録のため」と思っている人が多いですが、本来の目的は本締め後の検査にあります。 一次締め完了後、ボルト・ナット・座金・部材の4点にまたがる一直線のラインを引くことで、本締め後に「共回り」と「軸回り」が起きたかどうかを目視で確認できます。 マークがズレていれば異常あり、一直線なら正常と判断できる仕組みです。 an-sd(https://an-sd.jp/%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A2%E5%BD%A2%E9%AB%98%E5%8A%9B%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%88%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E9%87%8D%E8%A6%81%E6%80%A7%E3%81%AB%E3%81%A4/)


共回りとは、ボルトとナットが一緒に回転してしまい、正規の締め付けトルクがボルト軸力に変換されない現象です。 共回りが発生すると、見た目はピンテールが破断していても、実際には必要な軸力(S10T・M22の場合、標準で約205kN)が得られていません。 軸力不足のまま完成すると構造的な欠陥になります。 an-sd(https://an-sd.jp/%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A2%E5%BD%A2%E9%AB%98%E5%8A%9B%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%88%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E9%87%8D%E8%A6%81%E6%80%A7%E3%81%AB%E3%81%A4/)


これは見過ごしやすいですね。 マーキングのズレが「群の全ナットの平均回転角度から±30°を超える」場合は、そのボルトを新しいものと取り替えなければなりません。 適正範囲内かどうかを目視一発で確認できるのが、マーキングの真の役割です。 jiro-kk.co(https://www.jiro-kk.co.jp/reference/item003)


  • 📏 マークは「ボルト・ナット・座金・部材」の4点を1本の線でつなぐ
  • 🔍 本締め後にマークのズレを全数確認(目視検査)
  • ⚠️ 平均回転角度から±30°超のばらつきは即交換
  • ✅ 共回り・軸回りの有無を必ず記録に残す


参考リンク(マーキングの重要性と検査方法の解説):

トルシア形高力ボルトのマーキングの重要性について – 構造設計.com


トルシア型ボルト締め方の本締め手順とピンテール破断確認

本締めは、トルシア形高力ボルト専用の電動シャーレンチを使います。 シャーレンチのインナーソケットでピンテール部をつかみ、アウターソケットでナットを回して締め付けを行います。 トリガーを押し続けることで、ピンテールが自動的に剪断(破断)され、締め付け完了となります。 kouriki-bolt(https://kouriki-bolt.com/wysiwyg/file/download/1/124)


つまり「ピンテールが折れたら完了」が原則です。 ピンテールが破断することで、そのボルトに所定の軸力が正しく導入されたことを機械的に担保している仕組みです。 単にトルク管理をするのではなく、物理的な破断という「証拠」で管理できるのがトルシア型の最大の特長です。 ntm-project(https://ntm-project.com/archives/5424)


ただし、専用シャーレンチが使えない狭い箇所では、トルシア型ではなく高力六角ボルトに切り替えて、トルク法またはナット回転法で施工します。 トルシア型をそのまま無理に締めようとすると、ボルトへの偏荷重やソケット破損につながるため注意が必要です。 場所に応じた工具・ボルトの選定が条件です。 kouriki-bolt(https://kouriki-bolt.com/faqs/faq_questions/index/limit:20/page:2?frame_id=21)


  • 🔧 本締めには専用電動シャーレンチのみ使用可
  • 💥 ピンテール破断=所定軸力の導入完了のサイン
  • 📐 ナット余長:ナット面からねじ1山〜6山が正常範囲
  • 🚫 狭所で電動レンチが入らない場合は高力六角ボルトへ変更


参考リンク(締め付け手順の全体フローが確認できます):

トルシャーボルト(S10T)の締付方 – ファーイーストサービス


トルシア型ボルトの締め方における再使用禁止と保管ルール

一度締め付けに使用したトルシア型高力ボルトは、必ず廃棄します。 再使用が禁じられている理由は、一度締めたボルトはピンテールが破断しているため締め付け完了の確認ができないからではありません——本当の理由は、締め付けの際にねじ山やナット座面に生じた摩擦熱や変形によって、トルク係数値が変化してしまうためです。 同じボルトを再使用すると、見た目はピンテールが破断しても、必要な軸力(例:M22なら約205kN)が得られない可能性があります。 kobelco-bolt(https://kobelco-bolt.com/wp-content/uploads/2025/05/2ed6bba4cf604435fe44d12afefcc89b.pdf)


また、ボルトの保管にも厳格なルールがあります。 搬入時は未開封のまま現場に持ち込み、メーカーの規格品証明書を確認することが義務付けられています。 温度変化によってトルク係数値が変わるため、高温・多湿な環境での長期保管は避けなければなりません。 kobelco-bolt(https://kobelco-bolt.com/wp-content/uploads/2025/05/2ed6bba4cf604435fe44d12afefcc89b.pdf)


さらに仮ボルトとしての使い回しも禁止です。 精度調整作業などでねじ山が傷むと、本締め時に正規の軸力が導入されなくなります。 仮ボルトには六角ボルトを使うのが基本です。 nikkenren(https://www.nikkenren.com/kenchiku/sekou/steel_frame_Q&A/B-2-6.pdf)


禁止事項 理由 リスク
使用済みボルトの再利用 トルク係数値の変化 軸力不足による構造欠陥
仮ボルトとして流用 ねじ山損傷 本締め時の軸力不足
開封後の長期野積み保管 温度・湿度によるトルク変化 締め付けトルクの不安定化
一次締めの2度打ち 座面・ねじ山の過剰摩擦 本締め時の軸力不達成


トルシア型ボルトの締め方で見落とされがちな受入検査と品質管理

施工精度だけでなく、現場に搬入されるボルト自体の品質確認も締め方の一部です。 これは見落とされやすいポイントです。 トルシア型高力ボルトの受入検査では、メーカーの規格品証明書の確認、導入張力確認試験、トルク係数値確認試験が必要です。 jiro-kk.co(https://www.jiro-kk.co.jp/reference/item003)


導入張力確認試験では、実際に軸力計にボルトをセットして締め付け、規定の軸力(標準ボルト張力)が得られるかを確認します。 トルシア型の場合、トルク値やナット回転量の測定は不要で、軸力計の読み取りのみで判定できます。 これは手間が省けますね。 nichiwa-rent.co(https://www.nichiwa-rent.co.jp/spec_wrench.html)


一方、気温が低い冬季の施工には注意が必要です。 低温下ではトルク係数値が変化し、同じ操作をしても導入軸力が変わってしまう可能性があります。 特に気温が5℃以下になる環境では、始業前の締め付け確認試験を1セット多く行うことで、軸力のばらつきを早期に発見できます。 kobelco-bolt(https://kobelco-bolt.com/wp-content/uploads/2025/05/2ed6bba4cf604435fe44d12afefcc89b.pdf)


現場での確認作業をルーティン化したい場合は、日本鋼構造協会(JSSC)が発行している「トルシア形高力ボルト使用の手引」を手元に置いておくと、検査項目のチェックリストとして活用できます。 kouriki-bolt(https://kouriki-bolt.com/wysiwyg/file/download/1/124)


  • 📦 搬入時:未開封状態の確認+規格品証明書チェック
  • 🌡️ 低温時(5℃以下):始業前に追加の締め付け確認試験を実施
  • 📊 全ボルトのピンテール破断:目視による全数確認が義務
  • 🗒️ 検査記録:共回り・軸回り・余長の測定結果を記録・保管


参考リンク(受入検査の具体的な手順が掲載されています):

現場受入検査手順(トルシア形超高力ボルト)- ニチワ


参考リンク(施工手順の全体フローと確認項目の公式資料):

トルシア形高力ボルトの締付け概要 – ジロー株式会社