ターニング加工は、旋盤加工とも呼ばれ、切削加工の最も基本的な手法の一つです 。その最大の特徴は、加工する対象物(ワーク)を回転させ、そこに固定した切削工具(バイト)を当てることで形状を作り出す点にあります 。円筒状の部品やシャフト、フランジといった、回転対称の形状を持つ部品の製造に広く用いられています 。木工でこけしを作る様子や、野球のバットを削り出す工程をイメージすると分かりやすいかもしれません 。
ターニング加工は、加工する箇所によって、いくつかの基本的な種類に分類されます。それぞれの加工方法を理解し、適切に使い分けることが、高精度な部品を効率よく作り出すための第一歩となります。
これらの基本的な加工を組み合わせることで、非常に複雑な形状の部品も作り出すことが可能です 。近年では、コンピュータ数値制御(CNC)を搭載したNC旋盤が主流となり、プログラムを入力するだけで、初心者でも高精度な加工を自動で行えるようになっています 。
旋盤加工の基本的な加工方法や種類について、図解入りで分かりやすく解説されています。
旋盤加工(ターニング)の特徴や代表的な加工方法を解説! | meviy | ミスミ
NC旋盤を使えば、誰でもある程度の精度の加工は可能ですが、真に高精度な製品を生み出すためには、切削条件とNCプログラムの最適化が不可欠です。これらは加工の品質、効率、工具の寿命に直接影響を与える、非常に重要な要素です 。
切削条件の三大要素は、「切削速度」「送り量」「切り込み量」です 。これらのバランスをいかに取るかが、熟練技術者の腕の見せ所と言えるでしょう。
| 切削条件 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 💨 切削速度 (m/min) | ワークの回転する周速のこと 。工具の刃先が1分間に削り進む距離を表します。 | 加工面の仕上がり(表面粗さ)や工具の寿命に大きく影響します。速すぎると工具摩耗が激しくなり、遅すぎると加工能率が低下します。 |
| ➡️ 送り量 (mm/rev) | ワークが1回転する間に、バイトがどれだけ移動するかという距離です 。 | 加工能率と加工面に影響します。大きいほど能率は上がりますが、加工面は粗くなる傾向にあります。 |
| DEPTH 切り込み量 (mm) | バイトの刃先がワークにどれだけ深く食い込むかという量です。 | 加工能率に直結しますが、大きすぎると切削抵抗が増大し、工具の欠損や機械への負担増につながります。 |
これらの条件は、被削材の材質(硬さ、粘り強さ)や使用する工具の材質、機械の剛性などを総合的に考慮して決定する必要があります 。例えば、ステンレスのような硬い材料を加工する場合は、切削速度を遅く、送り量を小さくして、工具の摩耗を抑えながら慎重に加工します。一方、アルミニウムのような柔らかい材料は、切削速度を速く、送り量を大きくして、効率的に加工を進めることができます 。
また、NCプログラムの質も加工精度を大きく左右します。NCプログラムは、Gコード(移動指令)やMコード(機械の補助動作指令)などを組み合わせて作成されます。最近のNC旋盤では、「極座標補間」という機能を使うことで、X軸(直線軸)とC軸(回転軸)を同期させ、まるでフライス加工のように複雑な輪郭形状を削り出すことも可能になっています 。このような高度な機能を使いこなすことで、加工の幅は格段に広がります。
切削条件の基本的な考え方や、計算方法について詳しく解説されています。
ターニングの計算式の使い方 | 技術情報 | MITSUBISHI MATERIALS CORPORATION
ターニング加工の主役は、言うまでもなく切削工具である「バイト」です 。どのようなバイトを、どのように使うかが、加工の成否を分けると言っても過言ではありません。バイトは、その形状や材質によって様々な種類があり、加工内容に応じて適切なものを選択する必要があります。
代表的なバイトの種類としては、以下のようなものがあります。
近年では、刃先だけを交換できる「スローアウェイバイト」が主流です 。刃先(チップ)が摩耗したら交換するだけで済むため、工具管理が容易で経済的です。このチップの選定も非常に重要で、材質、形状(チップブレーカ)、コーティングの有無など、考慮すべき点は多岐にわたります。チップのケースには、推奨される被削材や切削条件が記載されているため、必ず確認するようにしましょう 。
工具の寿命を最大限に引き出すためには、以下の点が重要になります。
工具は消耗品ですが、正しい知識を持って丁寧に扱うことで、その寿命を延ばし、結果としてコストダウンと品質向上につなげることができます。
ターニング加工の技術は、日々進化を続けています。その中でも特に注目されているのが、「複合加工機」と「インターポレーションターニング」です。これらは、従来のターニング加工の常識を覆し、ものづくりの可能性を大きく広げる技術と言えるでしょう。
複合加工機(ターニングセンタ)は、NC旋盤にマシニングセンタの機能(フライス削り、穴あけなど)を融合させた工作機械です 。従来であれば、旋盤加工の後にマシニングセンタへワークを移動させて追加工を行っていたような部品でも、複合加工機なら1台で全ての加工を完結させることができます(工程集約) 。これにより、以下のような大きなメリットが生まれます。
そして、さらに新しい技術として登場したのがインターポレーションターニング(補間旋削)です 。これは、マシニングセンタや複合加工機のミーリング主軸(工具を回転させる主軸)を利用して、旋削加工を行う革新的な技術です。工具とワークの両方を同期させて回転・移動させることで、固定されたバイトでは不可能な、非常に自由度の高い加工を実現します。例えば、通常は加工が困難な大径のワークや、アンバランスな形状のワークでも、高精度な旋削加工が可能になります。DMG森精機などの大手工作機械メーカーが、この技術を搭載した機械を次々と発表しており、今後の普及が期待されています 。
このように、ターニング加工はもはや単純な「丸削り」の技術ではありません。複合加工機やインターポレーションターニングといった技術の登場により、より複雑で、より高精度な部品を、より効率的に生み出すためのキーテクノロジーへと進化を遂げているのです。
複合加工機やインターポレーションターニングの概念について、動画で分かりやすく解説されています。
NC旋盤、ターニングセンタの違いなどを紹介! - YouTube
高精度なターニング加工を目指す上で、様々なトラブルは避けて通れません。ここでは、現場でよく遭遇する代表的な問題と、その原因および対策について解説します。
加工面がざらざらしたり、むしれたような状態になったりする問題です。
指定された寸法公差内に、加工寸法が収まらない問題です。
チップがすぐに欠けたり、寿命が極端に短かったりする問題です。
これらのトラブルは、単一の原因で発生することは稀で、複数の要因が複雑に絡み合っている場合がほとんどです。切削条件、工具、機械、ワークの状態を総合的に観察し、一つずつ要因を潰していく地道な作業が、問題解決への近道となります。

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