スローアウェイバイトの種類と材質選定ガイド

スローアウェイバイトには材質や形状によってさまざまな種類があり、金属加工での適切な選定がコストと品質を左右します。チップの材質から形状まで種類別の特徴を比較し、どのような加工条件で最適な性能を発揮するのでしょうか?

スローアウェイバイトの種類

スローアウェイバイト基本情報
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交換式刃先工具

チップのみ交換可能で再現性とコスト削減を実現

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材質別分類

超硬合金、セラミック、サーメット等9種類の材質

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形状による分類

ネガ・ポジチップ、チップブレーカー形状の違い

スローアウェイバイト材質の分類と特徴

スローアウェイバイトの材質は大別すると9種類に分かれており、それぞれが異なる切削特性を持っています 。最も使用頻度が高いのは超硬合金で、金属切削に使用されるチップの約80%を占めています 。超硬合金は炭化タングステンとコバルトの粉末を混合し、1400℃程度の高温かつ約10〜100MPaの高圧力で焼き固めることで、硬さと粘り強さの両方を実現しています 。
参考)スローアウェイチップとは?使用材種やその特性についてご紹介 …

 

超硬合金チップは被削材に応じて記号と色で規格化されており、鉄鋼(P/青)、ステンレス鋼(M/黄)、鋳鉄(K/赤)、アルミニウム合金(N/緑)、チタン合金(S/茶)、焼入れ鋼(H/灰)として表示されています 。
参考)旋盤バイトは何種類ある? スローアウェイチップの種類と併せて…

 

その他の材質としては、セラミックが高硬度・耐熱性耐摩耗性に優れ、硬い材料の加工や高温での切削作業に適しています 。現在市販されているセラミック工具はアルミナ系材料、アルミナー炭化物複合材料、窒化珪素材料、サイアロン材料などに分類されます 。
参考)セラミック工具とは

 

セラミックス切削工具の材料特性と製法についての詳細資料

スローアウェイバイト形状による種類分類

スローアウェイバイトは形状によってネガチップポジチップの2種類に大別されます 。ネガチップは逃げ角がないぶん強度が高く、両面仕様でコストパフォーマンスに優れているため荒加工に適しています 。一方で、すくい角があまり取れないため切削抵抗が高くなるという特徴があります 。
参考)旋盤加工の切削工具!スローアウェイバイトをわかりやすく解説

 

ポジチップは逃げ角があるため刃先強度は劣りますが、すくい角が大きく取れるため切削抵抗が低く、仕上げ加工に向いています 。ただし片面仕様のためコストパフォーマンスの面ではネガチップに劣ります 。
チップの形状については、刃先角度が大きいほど剛性は高くなりますが、切削抵抗によるビビリが発生しやすくなる傾向があります 。被削材との近接性を考慮して、加工条件に応じた形状選定が重要となります 。

スローアウェイバイトのチップブレーカー種類

チップブレーカー切りくずを細かく分断し、作業者の安全性向上と製品の傷つき防止を目的として設けられています 。すくい面に溝を付けただけのシンプルなものから、複雑な凸凹を付けた高機能タイプまで多種多様な形状があります 。
チップブレーカーの選定では、送り速度や切込み深さによって排出される切りくずの形状が異なるため、それに合わせて分断できるよう工夫された形状を選択する必要があります 。粗加工・中粗加工・仕上げ加工のそれぞれに適した形状があり、送りや切り込み量も適正に設定することが重要です 。
ブレーカー形状は切粉排出に特化した形状になっており、切れ味は劣るものの強度に優れているため、取り代の多い粗取りや難削材、断続加工で用いられることが多くなっています 。
参考)チップブレーカの種類と名称

 

チップブレーカとチップポケットの詳細な技術解説

スローアウェイバイトのコーティング種類

スローアウェイバイトのコーティング技術は工具性能を大幅に向上させる重要な要素です。同じ形状のチップでも、コーティングの種類によって様々な性能特性を実現できます 。主要なコーティング方式としてPVDコーティングCVDコーティングがあり、それぞれ異なる特性を持っています 。
参考)スローアウェイチップのメリット - 切削工具の特殊製作専門店

 

PVDコーティングは比較的低温でのプロセスのため、基材への熱影響が少なく、複雑形状への処理も可能です 。一方、CVDコーティングは高温プロセスにより密着性に優れ、厚膜形成が可能という特徴があります 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/2ed154fd1382a6793967518fb836864c6efaadb3

 

コーティング選定の際は、工具の体積によってコーティング費用が決定されるため、スローアウェイチップ化により本当にコーティングが必要な刃先部分のみに限定することで、大幅なコスト削減を実現できます 。総型バイトからスローアウェイチップへの変更により、シャンク部分の不要なコーティング体積を削減し、結果として工具トータルコストの最適化が図れます 。
参考)総型バイトをスローアウェイチップ化して再研磨費削減 href="https://special-precision-cutting-tool.com/solution/002-2" target="_blank">https://special-precision-cutting-tool.com/solution/002-2amp;laq…

 

スローアウェイバイト勝手と互換性による分類

スローアウェイバイトには右勝手左勝手勝手なしという分類があり、使用する設備や加工方法によって選定が決まります 。外径加工用チップでは、右勝手ホルダーには右勝手チップ、左勝手ホルダーには左勝手チップが対応し、勝手なしチップはどちらでも使用可能です 。
重要な点として、内径加工では勝手が逆になることがあります。右勝手ホルダーには左勝手チップ、左勝手ホルダーには右勝手チップを使用するため、選定時には注意が必要です 。
スローアウェイバイトの大きなメリットとして、一般的な外径・内径チップは規格が統一されており、各メーカー間で互換性があることが挙げられます 。これにより、異なるメーカーのホルダーでも同規格のチップが取付け可能で、工具管理の効率化とコスト最適化を実現できます 。