切刃ラッパーの種類と選び方【金属加工従事者必見】

切刃ラッパーは金属加工において刃先の仕上げや修正に欠かせない工具です。ダイヤモンド砥粒を使った精密加工から、コーティング前後の研磨まで、用途に応じた種類と特徴を詳しく解説します。正しい選び方と使用法を知ることで、工具寿命の延長と加工品質の向上が可能になりますが、あなたの現場では適切なラッパーを使用できていますか?

切刃ラッパーの種類と特徴

切刃ラッパーの基本分類
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ダイヤモンドハンドラッパー

最も高精度で耐摩耗性に優れ、超硬工具の刃先修正に最適

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エアラッパー

圧縮空気を利用した高効率研磨で大型工具にも対応可能

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スーパーラッパー

バイブレーション機能付きで内径仕上げに特化した専用機

切刃ダイヤモンドハンドラッパーの構造と特性

ダイヤモンドハンドラッパーは、厳選された上質のダイヤモンド砥粒を電着技術により母材に強固に固定した精密工具です。電着とはニッケルメッキ層でダイヤモンド砥粒を保持させる方法で、最初の鋭い切れ味を最後まで保持できる特徴があります。
参考)ダイヤモンドヤスリの種類と特長 【通販モノタロウ】

 

従来のプラスチック製ハンドラッパーと比較して、鉄シャンク製のものは重量があるため手元が安定し、剛性も高く抜群の仕上がりを実現します。粒度は#80から#1000まで6種類が標準的で、#60から#3000まで製作可能な製品もあります。
参考)https://www.grandroyal.co.jp/blogs/technology/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%91%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%AF

 

超硬合金、焼入鋼、セラミックス、ガラス、強化プラスチックなどの硬質材の研削加工に最適で、各種金型の仕上げ・修正・R取り・各種刃物の研削に幅広く使用されています。

切刃エアラッパーの動力システムと応用

エアラッパーは圧縮空気を動力源とする研磨工具で、プラスチック・ダイカスト・プレス・銭造・ガラス等の各種金型の研磨仕上げに使用されます。非鉄金属、セラミックス、超硬、貴金属の研磨及び金属バリ取りにも対応可能です。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%91%E3%83%BC/

 

空気圧により安定した回転力を得られるため、長時間の連続作業でも疲労が少なく、大型工具や複雑形状の部品加工にも適しています。また、回転数の調整が容易で、材質や加工要求に応じた最適な研磨条件を設定できる利点があります。

 

手動式と比較して作業効率が大幅に向上し、一定の品質を保ちながら量産加工にも対応できる特徴があります。

 

切刃スーパーラッパーの特殊機構

スーパーラッパーは主軸の回転と同時にバイブレーションしながら上下動する特異な動きが特徴的な超精密内径仕上げ加工機です。被加工物は主軸と反対方向に回転し、砥石の運動はゆるいサインカーブを描いて上下に自動送りする状態となります。
参考)超精密内径仕上げ加工機『スーパーラッパー』 トーヨー

 

この機構により砥石の切刃の新しい面が常に被加工物の新しい面を削ることになり、スピーディでしかも能率よく研削することができます。デジタル表示の主軸回転計やツール保護用の機能を標準装備し、幅広い加工域に対応可能です。
従来の手作業による内径研磨と比較して、腰痛や極度の疲労を軽減するために立型設計が採用されており、作業者の身体的負担を大幅に軽減します。

切刃ラップ加工における砥粒選択の重要性

ラップ加工では砥粒(切削工具の切れ刃に相当)を含んだラップ剤を使用して工作物の表面を滑らかに研磨します。ダイヤモンド粉を使用したラップ処理では、フルート部(切り屑が通る溝)を滑らかにして切り屑の排出性を高めます。
参考)超硬切削工具のラップ処理

 

表面粗さが0.1ミクロンの美しい鏡面に仕上がり、製品が長持ちし溶着防止にもつながります。超硬合金などの硬い金属でも研磨可能で、精密部品の最終仕上げや削りにくく加工が大変な材料の表面処理にも適しています。
参考)ラップ加工とは?研磨方法やメリットデメリットについて解説

 

大手農機具メーカーの事例では、ラップ処理により切り粉がスムーズに排出され、従来100台の加工(800穴)で刃物が折れていたものが、250台加工(2000穴)しても折れなくなった実績があります。

切刃コーティング工具における前後処理の最適化

現代の切削工具では、TiCN-Al2O3-TiN、TiAlN-TiN、TiAlSiNなどの各種コーティングが施され、工具寿命の延長と加工品質の向上が図られています。コーティング前の前処理としてのラップ加工は、コーティングの密着性を高め、より優れた性能を引き出すために重要です。
参考)https://www.mdpi.com/2075-4701/13/5/973/pdf?version=1685095661

 

コーティング処理後のラップ加工では、面粗度を向上させて最終的な表面品質を決定します。この後処理により、切削抵抗の低減、工具寿命の延長、加工面品質の向上が同時に実現できます。
特に高速切削や難削材加工において、適切な前後処理を施したコーティング工具は、従来工具と比較して大幅な性能向上を示します。TiN0.85-Ti コーティングを施した歯車シェーパーカッターでは、密着摩耗を大幅に削減し、刃の寿命を向上させた研究結果も報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11595530/