コンロッドとクランクシャフトの基本構造と加工技術

コンロッドとクランクシャフトの基本構造

コンロッドの構造と構成部品

コンロッドは、レシプロエンジンのピストンとクランクシャフトを連結する重要な部品で、コネクティングロッドの略称として広く知られています 。その構造は、ピストンピンと接続する小端部（スモールエンド）と、クランクピンと接続する大端部（ビッグエンド）から構成されています 。
参考）コンロッドとは？ピストンやクランクシャフトとの関係や仕組みと…

小端部はピストンに接続され、大端部はクランクシャフトに接続される設計となっており、コンロッドベアリング、コンロッドボルト、コンロッドキャップ、ノックピンなどの部品で構成されています 。特に興味深いのは、コンロッドには二つのタイプが存在することです：コンロッド本体とキャップをボルトやノックピンで止める割コンタイプと、一体型のストラップタイプがあります 。
エンジンの種類によって、コンロッドベアリングも異なる特性を持ちます。大型車や高出力エンジンには比較的大きな接触面積を持つメタルベアリングが採用され、高い負荷に耐えられる設計となっています 。一方、回転数が求められる小型車やスポーツカーのエンジンには、細い円筒形のローラーを多数使用することで摩擦抵抗を低減できるニードルベアリングが採用されています 。
参考）クルマの心臓部！ビッグエンドの役割と仕組み - クルマの大辞…

クランクシャフトの基本構造と構成要素

クランクシャフトは、軸となるクランクジャーナル、コンロッドとつながるクランクピン、クランクピンとクランクジャーナルをつなぐクランクアームで構成されています 。クランクジャーナルはエンジンブロックのメインベアリングに支持される回転軸部分で、エンジン全体の中心軸として機能します 。
クランクピンは、ジャーナルからクランクアームに接続された位置にあり、コンロッドと接続される重要な部分です 。このクランクピンはジャーナルよりも大きく回転することが知られており、ピストンの上下運動を効率的に回転運動に変換する役割を担っています 。
参考）クランクシャフトとは｜クランクシャフトの生産工程・課題につい…

カウンターウェイト（バランスウェイト）は、ピストンやコンロッドが運動することで生じる慣性力を軽減するために搭載されている重要な要素です 。装着される位置によって、フルカウンターやセミカウンターと呼ばれ、エンジンの振動を抑制する効果があります 。水平対向エンジンのような特殊な場合を除き、ほとんどのエンジンにバランスウェイトが取り付けられています 。

コンロッドとクランクシャフトの材質と製造技術

コンロッドの製造には、主に鍛造技術が用いられます。燃焼による大きな繰り返し衝撃力に耐えられるよう、ニッケルクローム鋼などの特殊鋼をI型断面の型打ち鍛造で造り、十分な強度を持たせています 。鍛造は金属を熱してプレス機やハンマーによって圧力をかけながら金属を叩くことで、内部のすき間をつぶし内部の不純物を除去する加工方法です 。
参考）https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/00200/contents/048.htm

この工程により結晶を細かくし結晶の方向を整えることで強度を高めることができます 。また、アルミ合金製コンロッドの場合は、ダイカスト法による成形も行われます。ダイカスト法では効率的な量産が可能で、特に軽量化が求められる用途に適用されています 。
参考）自動車のコンロッドとは（コネクティングロッド）｜mameco…

クランクシャフトの製造においては、複雑な形状と厳しい強度要求に対応するため、鍛造、切削、熱処理、研磨など複数の加工方法を組み合わせて製造されます 。製造工程は熱間鍛造工程から始まり、ビレットから所定長さの素材を切り出し、切り出された素材を加熱後、予備成形を経て成形し、クランクシャフト素地を形成します 。
参考）https://patents.google.com/patent/JP2019093493A/ja

コンロッドの精密加工技術と品質管理

コンロッドの加工には、高度な精密技術が要求されます。フライス加工では刃物を回転させ固定した被削物を切削していく加工方法で、割型コンロットの合せ面やクランクシャフトの形状加工に使用されています 。また、ブローチ加工では刃が鋸状に配置された長尺の刃物を「引き抜く」ことにより被削物を加工する切削加工で、スプラインや割型コンロットの側面加工に使用されています 。
参考）切削加工｜技術情報｜株式会社藤田鐵工所 - エンジン部品・小…

コンロッド加工における重要な要素として、ブッシュ入れフルフロー加工があります。この加工を基本としますが、加工後のコンロッド小端部の肉厚が過少となる可能性がある場合には、ブッシュなしでのフルフロー加工が推奨されます 。このような精密な判断により、コンロッドの耐久性と性能を両立させています。
参考）JUN AUTO - JUN MACHINE SHOP - …

コンロッドの品質管理において、重量合わせは極めて重要な工程です。エンジンの振動を最小限に抑えるため、同一エンジン内で使用される全てのコンロッドの重量を厳密に合わせる必要があります 。この工程では、消耗パーツやチューニングパーツへの交換、フルフロー、重量合わせ、ブッシュやメタルの入れ替えが行われます 。
参考）内燃機関加工

クランクシャフト加工の最新技術と課題

クランクシャフトの加工技術は、高精度と高効率の両立を目指して進化を続けています。切削工程では、汎用的な工作機械である旋盤やマシニングセンタを組み合わせることで加工されますが、大量生産が必要な場合にはクランクシャフト専用の工作機械であるクランクシャフトミラーが生産ラインに組み込まれます 。
研磨工程では、クランクシャフト専用研磨機による高精度偏心加工が行われます。特殊で大きな砥石を使い火花を出して研磨することで、要求される表面粗さと寸法精度を実現しています 。この工程では、クランクシャフトのジャーナル部は摺動摩擦抵抗を低減するために、できるだけ鏡面に近い状態に加工することが望ましいとされています 。
参考）クランクシャフトができるまで

バランス調整は、クランクシャフトの品質において最も重要な工程の一つです。バランス調整において、まず寸法に異常がないかを検査データで確認します 。図面だけでは重心の位置がわからないため、設計変更ができない場合があり、加工後に重心が取れないことが判明することがあります 。このような場合は、重心補正が可能な設備を持つ会社での対応が必要となります。
参考）クランクシャフトのバランス調整のポイント - 軸物・シャフト…