ビレットとブルームとスラブの違い

金属加工に欠かせない三つの素材、ビレット、ブルーム、スラブの違いを詳しく解説します。サイズから用途まで完全網羅し、製造工程での選び方も分かりますか?

ビレットとブルームとスラブの違い

ビレット・ブルーム・スラブの基本特徴
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ビレット

断面160mm以下の小型鋼片で、線材・棒鋼製造に使用

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ブルーム

断面160mm以上の正方形鋼片で、形鋼製造の基礎素材

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スラブ

厚さ50mm以上の板状鋼片で、厚板・薄板製造に最適

ビレット・ブルーム・スラブの基本定義と分類基準

金属加工従事者にとって、ビレット・ブルーム・スラブは連続鋳造によって製造される重要な中間素材です 。これらの鋼片は、厳密な寸法基準によって明確に分類されています。
参考)連続鋳造 - Wikipedia

 

ビレットの正式名称は押出用鋳塊で、断面が正方形で1辺が160mm以下の小型鋼片を指します 。主に線材、丸鋼、棒鋼の製造に使用され、円形断面の「ラウンドビレット」も継目無鋼管の製造に用いられています 。
参考)一般用語・用例事典|有限会社スチール・ストーリージャパン

 

ブルームは条鋼圧延用鋳塊の正式名称で、断面が正方形で1辺が160mm以上(一般的には130mm超)の大断面鋼片です 。形鋼製品や、さらに小さなビレットの製造素材として活用されています 。
参考)鉄のつくり方:なぜ同じ鋼種でも鉄鋼メーカー毎に特性が違うのか…

 

スラブは圧延用鋳塊と呼ばれ、厚さ50mm以上、幅300mm以上の角形断面を持つ板状の鋼片です 。幅が厚さの2倍以上という条件も重要な特徴となっています 。

ビレット製造工程の特殊性と品質管理

ビレットの製造工程は、他の鋼片と比較して独特な特徴を持っています。連続鋳造法において、溶鋼はタンディッシュから水冷された鋳型へ注がれ、急速な冷却・凝固により棒状のビレットが形成されます 。
参考)ビレットの基本を簡単解説!特長や用途、鋳造・鍛造との違いとは…

 

鋼製ビレットの製造では、溶解から切断・梱包まで各工程で厳密な検査が実施されるのが特徴です 。アルミニウムビレットの場合、原料を約780℃で溶解後、保持炉で成分調整を行い、水素ガス除去工程を経て鋳造機で円柱形に仕上げられます 。
参考)https://material.st-grp.co.jp/technology/aluminum/process/casting.html

 

品質管理の重要なポイントとして、結晶構造の均一性が挙げられます 。ビレットの結晶の均一性は最終製品の物性に直結するため、冷却速度や温度管理が特に重要になります 。
参考)ビレットの特長と製造業での利用方法

 

ブルーム鋼片の断面寸法と用途展開

ブルーム鋼片は、その断面寸法によって幅広い用途展開が可能になっています。標準的なブルームの断面サイズは390mm×500mmの矩形や直径500mmの丸形など、用途に応じて5種類程度のサイズが製造されています 。
参考)特殊鋼ブルームを専門的に製造・販売。|メタル事業部 スチール…

 

大断面ブルームの製造技術も進歩しており、400×560mmサイズの大断面ブルーム鋳造も実現されています 。この大型化により、より大きな製品径の鋼材製造が可能になり、製品の拡大に貢献しています 。
参考)https://tetsutohagane.net/articles/search/files/66/2/KJ00002710575.pdf

 

ブルーム製造では、鋳片のサイズに応じて軽圧下技術も適用されます 。約6〜7mmの圧下により、鋼種に応じた最適な形状制御が行われ、圧下効率の向上が図られています 。
参考)https://www.nipponsteel.com/tech/report/nsc/pdf/36112.pdf

 

スラブ鋼片の板厚設計と圧延適応性

スラブ鋼片の設計において、板厚は製品品質を決定する重要な要素です。通常の連続鋳造では厚さ100〜250mmで鋳造されますが、近年は30〜80mm厚さの薄スラブ鋳造技術も実用化されています 。
参考)https://www.jfe-21st-cf.or.jp/jpn/chapter_2/2j_2.html

 

薄スラブ技術の採用により、次工程の熱間薄板圧延で粗圧延機を省略できるメリットがあります 。この革新的なプロセスでは、7.0m/分という高速鋳造が可能で、ミニミルでの採用が進んでいます 。
スラブの形状特徴として、「巨大なかまぼこ板」のような外観が特徴的で 、この独特な形状が厚板・薄板製造における優れた圧延適応性を実現しています。幅が厚さの2倍以上という寸法比により、効率的な板材製造が可能になっています 。

ビレット・ブルーム・スラブの連続鋳造技術革新

現代の金属加工業界では、連続鋳造技術の革新が三つの鋼片すべてに大きな影響を与えています。日本製鉄では、板製品用にスラブ、形鋼製品用にブルーム、線材製品用にビレットを製造する専用連鋳機を運用しています 。
参考)製鋼工程

 

連続鋳造機の方式には、垂直型、垂直曲げ型、彎曲型、垂直逐次曲げ型、水平型があり 、製品特性や生産量に応じて最適な方式が選択されています。スラブ・ブルーム・丸ビレット兼用連鋳機も開発され、1台の設備で複数の鋼片製造が可能になっています 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/998138047310c3dfc24fe3ae24dd83a6eb7cc3ef

 

品質向上技術として、鋳片内の溶鋼を電磁誘導撹拌する電磁撹拌装置や、溶質元素の偏析を制御する圧下装置が導入されています 。これらの技術により、三つの鋼片すべてで内部品質の大幅な改善が実現されています。
日本製鉄の製鋼工程紹介 - 連続鋳造による鋼片製造の詳細説明
一般用語・用例事典 - ビレット・ブルーム・スラブの正確な定義と分類基準
JFE21世紀財団 - 連続鋳造機の種類と製造方式の詳細解説