ハンディ研磨機は、金属加工現場において欠かせない電動工具です 。先端に砥石を装着して研削・研磨作業を行うため、英語ではDie Grinder(ダイグラインダ)と呼ばれています 。この工具の最大の特徴は、先端の細い砥石によって細かい部分の研削・研磨を得意とすることです 。
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従来の大型グラインダーでは対応できない狭い箇所や複雑な形状の加工物に対して、ハンディ研磨機は優れた作業性を発揮します。特に、パイプを切断した時に発生する内側のバリ除去や鋳物・溶接面の仕上げなどに使用されることが多く、金属加工従事者にとって重要な工具となっています 。
また、ハンディ研磨機は砥石の研削面と作業者が直線上に重ならないため、比較的安全性が高いという特徴があります 。ただし、作業方法によっては砥石の破裂など作業者が危険に晒される場合があるため、手袋やゴーグルなど保護具の装着は必須です 。
ハンディ研磨機の基本構造は、モーター部とスピンドル部、そして先端の砥石取付け部から構成されています。モーター部には高回転を実現するためのブラシモーターまたはブラシレスモーターが搭載され、通常7,000~29,000min-1の範囲で回転数を調整できます 。
砥石の取付け方式には主に2つのタイプがあります。一般的なのは軸付き砥石を装着するコレットチャック方式で、3mmまたは6mmの軸径に対応しています 。もう一つは高出力の大型タイプで採用されるネジ止め方式で、円盤状のインターナル砥石を使用します 。
近年では、一部のハンディ研磨機で軸の交換によりコレットチャック方式とホイルナット止め方式の両方に対応できるモデルも登場しており、作業の多様性に対応しています 。これにより、一台で異なる種類の砥石を使い分けることが可能になり、作業効率の向上に貢献しています。
ハンディ研磨機には電源方式による分類と、砥石取付け方式による分類があります。電源方式では電源コード式と充電式に大別され、それぞれ異なる特徴を持っています。
電源コード式は安定した電力供給によりパワフルな研磨作業が可能で、連続使用時間に制限がないため、長時間の作業に適しています。一方、充電式は取り回しの良さが最大の特徴で、電源の確保が困難な現場や狭い作業スペースでの使用に優れています 。
特に注目すべきは、HiKOKI GP36DAのような高性能充電式モデルです。マルチボルト36V動作により電源コード式同等の性能を備え、無段回転数切り替え機能も搭載しています 。このような技術進歩により、充電式でも十分な作業性能を確保できるようになっています。
砥石取付け方式の違いでは、軸付き砥石対応モデルが最も一般的で、豊富な形状の砥石から作業に適したものを選択できます 。材質も研磨用から切断用まで幅広く、一台で多様な作業に対応可能です。
金属加工現場におけるハンディ研磨機の用途は多岐にわたりますが、主要なものとして以下の作業が挙げられます。研磨工程は大きく5つの用途に分類され、それぞれ異なる特性が求められます 。
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ビード除去作業では、溶接箇所に発生したビードを除去し平坦化する作業を行います 。この作業には研磨力と凹凸に負けない耐久性が重要で、通常#36から#80の番手の砥石が使用されます 。ハンディ研磨機の機動性により、大型機械では困難な狭い溶接部位にもアクセスできます。
バリ取り作業は、溶断・切断・プレス加工後に発生したバリを除去する作業です 。被研磨物への馴染みと扱いやすさが重要で、#60から#120の番手が適用されます 。特にパイプ内側のバリ取りなど、内径研磨作業においてハンディ研磨機の細い砥石は大きな威力を発揮します。
表面仕上げ作業では、金属表面の面粗度を目標値に整える作業を行います 。塗装前仕上げや美観を目的とした作業で、安定した仕上がりと寿命が求められます 。この段階では#120以上の細かい番手を使用し、均一で美しい表面を作り上げます。
ハンディ研磨機を安全に使用するためには、適切な知識と準備が不可欠です。まず、作業前の点検として砥石の最高使用回転速度の確認が重要で、機械の定格回転数を超えて使用してはいけません 。
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砥石の取り付けと試運転については、取り付けを完全に行い、オーバーハングは13mm以内での使用が推奨されます 。作業前には必ず試運転を行い、砥石を取り替えた時は3分間、作業開始時は1分間の試運転が必要です 。この際、砥石の飛散方向に立たないよう注意が必要です。
保護具の着用も重要な安全対策の一つです。作業中は必ず防塵メガネを着用し、手袋は軍手ではなく、より強度のある専用手袋を使用します 。軍手や作業手袋の繊維が高速回転している部分に触れると巻き込まれる危険があり、最悪の場合は指の切断にまで至る事故となります 。
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また、ハンディグラインダーの定期点検として、毎月の点検が推奨されており、グラインダーの回転速度、軸ブレ・チャックの異常の有無を調べる必要があります 。適切なメンテナンスにより、安全で効率的な作業を継続できます。