半金属一覧と金属加工従事者が知るべき基本特性

半金属とは金属と非金属の性質を併せ持つ特殊な元素群で、工業分野で重要な役割を果たしています。ホウ素やケイ素など代表的な半金属の種類から製造業での実用的な応用まで、どのような特徴を持つのでしょうか?

半金属一覧と特性

半金属の基本情報
代表的な半金属元素

ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルルの6元素

🔬
電気的性質

金属と非金属の中間的な電気伝導性を持つ半導体特性

⚙️
工業利用

電子機器、太陽電池、ガラス製造など幅広い用途

半金属の基本定義と元素分類

半金属(メタロイド)は、金属と非金属の両方の性質を併せ持つ特殊な元素群です。周期表では金属と非金属の境界線に階段状に位置しており、完全に金属でも完全に非金属でもない中間的な特性を示します。
参考)半金属 - Wikipedia

 

一般的に半金属として分類される6つの元素は、ホウ素(B)ケイ素(Si)ゲルマニウム(Ge)ヒ素(As)アンチモン(Sb)、**テルル(Te)**です。これらに加えて、セレン(Se)、ポロニウム(Po)、アスタチン(At)が半金属に含まれることもあります。
参考)https://pt.kle.cz/ja_JP/metalloids.html

 

半金属の特徴として、金属光沢を持ちながら脆性を示し、電気伝導性は金属ほど高くないものの非金属よりは優れています。この電気的性質により、半導体として機能することが可能で、不純物を添加することで電気的挙動を制御できる特性を持ちます。
参考)https://proleantech.com/ja/6-metalloid-properties-elements-uses-applications/

 

半金属の物理的・化学的特性詳細

半金属の物理的特性は、金属と非金属の中間的な性質を示します。金属光沢と呼ばれる光沢のある表面を持つため、見た目は金属に似ていますが、圧力がかかると簡単に壊れたり、ひび割れたりする脆性を持ちます。
参考)半金属の特性 - KDMFab

 

電気的性質では、半金属は半導体として機能し、その電気的挙動を制御することが可能です。特に小さな不純物(ドーパント)を添加することで、電気伝導性を調整できる特性があります。例えば、シリコンやゲルマニウムに対してリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)を添加するとN型半導体が、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)を添加するとP型半導体が作られます。
参考)何をどれだけ含めば不純物半導体?真性半導体との違いや純度の話…

 

化学反応を起こす際は、非金属のような振る舞いを示し、金属イオンを形成する傾向は低くなります。この特性により、特定の化学反応では触媒や反応剤として有効に活用されています。
参考)半金属のヨウ化物を用いたヨウ素化反応:臭素化・ヨウ素化反応解…

 

半金属の製造業における用途と応用

半金属は現代の製造業において極めて重要な役割を果たしています。最も広く使用されるケイ素は、半導体産業の基盤材料として、コンピューターチップや太陽電池の製造に不可欠です。近年では、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といった次世代半導体材料として注目を集めており、電気自動車のインバーターや高速通信システムで重要な役割を担っています。
参考)https://jp.rs-online.com/web/content/discovery/ideas-and-advice/semiconductor-raw-materials-guide

 

ホウ素は、難燃剤や特殊ガラスの製造に使用され、その軽量性と高い融点から航空宇宙産業でも重宝されています。アンチモンは、難燃剤の主要成分として電気ケーブルや電子機器の安全性向上に貢献するほか、活字の製造や合金の添加剤としても利用されています。
参考)半金属リスト - 各半金属の特性と用途を知る - KDM F…

 

ゲルマニウムは、高周波回路や光ファイバー通信技術に使用され、特に赤外線光学系での応用が進んでいます。これらの半金属は、電子機器の小型化・高性能化に伴い、ますますその重要性が高まっています。
参考)半金属の用途:航空宇宙から半導体まで

 

半金属の冷間加工と熱間加工への影響

半金属を含む材料の加工において、温度管理は極めて重要な要素です。冷間加工(720℃以下)では、半金属の結晶構造が緻密になり、精度の高い加工が可能となります。特に半導体用途では、結晶欠陥を最小化するため、低温での精密加工が必要とされます。
参考)https://www.toishi.info/metal/reikan_nekkan.html

 

半金属材料は一般的に脆性を示すため、冷間加工時には加工硬化による内部応力の蓄積に注意が必要です。一方、熱間加工(900℃~1200℃)では、半金属の再結晶が促進され、残留応力が少なくなりますが、高精度な寸法管理が困難になる場合があります。
参考)鍛造加工の歴史と主な鍛造加工|塑性加工ゼミ|マコー株式会社

 

温間加工(300℃~800℃)は、冷間加工と熱間加工の中間的な特性を活用でき、半金属を含む複合材料の加工に適している場合があります。この温度域では、材料の変形抵抗が適度に低下し、精度と加工性のバランスを取ることが可能です。
参考)設計開発

 

半金属を活用した先端技術と金属加工業界への影響

近年、トポロジカル半金属という新しい分野が注目を集めており、従来の半金属とは異なる電子構造を持つ材料が発見されています。ディラック半金属やワイル半金属と呼ばれるこれらの材料は、極めて高い電子移動度を示し、超高速電子デバイスへの応用が期待されています。
参考)世界最高品質の単元素トポロジカル・ディラック半金属を実現~新…

 

これらの先端半金属材料は、電気機械応答特性を利用した振動発電やセンシング技術への応用も検討されており、従来の金属加工業界にも新たな技術革新をもたらす可能性があります。特に、精密機械部品や電子部品の製造において、これらの材料特性を活用した新しい加工技術の開発が進められています。
参考)電子相関と高移動度を併せ持つディラック半金属を発見

 

金属加工従事者にとって、半金属の特性理解は、電子機器用部品の製造精度向上や新材料への対応において必要不可欠な知識となっています。電磁波シールド部材や高精度電子部品の加工では、半金属の電気的特性を考慮した加工条件の設定が求められており、従来の金属加工技術との融合が進んでいます。
参考)モバイル機器用シールドケース向け表面処理鋼板