半田メッキを施工する前の準備段階は、最終的な品質を決定する重要なプロセスです。加工対象となる金属部品の表面には、油分や酸化物が付着しており、これらが存在すると半田メッキが密着しません。まず対象物を十分に観察し、目立つ汚れやサビがないか確認してください。特に鉄製品や銅製品は酸化しやすいため、保管環境にも注意が必要です。
準備段階では、適切な脱脂溶液を使用して油分を完全に除去する「脱脂処理」が不可欠です。通常、専用の脱脂液に部品を浸漬させるか、スプレーで吹きかけて処理します。脱脂後は必ず水洗いを行い、脱脂液の残留を防ぎます。次に「酸洗浄」を実施することで、表面の酸化膜を除去し、金属素地を露出させることができます。この酸洗浄では、塩酸や硫酸を使用する場合が多く、時間管理が重要です。酸洗い時間が不足すると酸化膜が完全に除去できず、逆に長すぎるとベース金属まで侵食される可能性があります。
加工現場では、この準備段階を疎かにしたことが原因で、後工程のはんだ付けが上手くいかないトラブルが頻発しています。準備工程は地味に見えますが、全体の出来栄えを左右する極めて重要なやり方なのです。適切な時間をかけて丁寧に処理することが、結果的に作業全体の効率向上につながります。
通電処理は、はんだの水溶液に部品を浸漬させ、電気を流すことで金属表面に均一なはんだ皮膜を形成するプロセスです。この工程では、電流値、電圧、浸漬時間の3つの要素が膜厚を決定する重要なパラメータとなります。一般的に、電流を高めに設定すると膜厚が厚くなり、低めに設定すると薄くなるという相関関係があります。
大切なのは「均一性」を保つことです。部品の形状によっては、複雑な箇所に皮膜が付きにくい場合があります。このような場合、カソード(陰極)の配置を工夫したり、部品を回転させたりすることで均等に皮膜が形成されるようにします。電子部品メーカーで採用されている「溶融はんだメッキ方式」では、ベースメタルとはんだが拡散し、厳密な合金層を形成することで、曲げ加工後の剥離や割れの危険を減らしています。
膜厚の管理は非常にシビアで、業界では一般的に2~15μm(マイクロメートル)の範囲に調整されます。膜が薄すぎるとはんだ付け時に効果が減少し、厚すぎるとはんだ粉の飛散が増えたり、後工程での加工に支障が出たりします。現場では、サンプル抜き取り検査で膜厚を定期的に計測し、通電条件をコントロールして管理していくやり方が標準的です。
工業規模での半田メッキだけでなく、現場では手作業による小型電子部品や電線の半田メッキも行われています。特に電線の場合、被覆を剥き取った後の処理が重要です。金属導線が露出した部分は酸化しやすいため、手早く処理する必要があります。
電線のやり方としては、まず被覆をニッパーやワイヤーストリッパーで丁寧に剥き取り、露出した導線を軽く撚り合わせます。これにより、導線がばらけるのを防ぎます。次に、はんだごてを使用して導線全体に薄く均一にはんだをコーティングすること、これが「電線の半田メッキ」です。
コーティングの厚さは非常に大切で、導線の凹凸が適度に残るくらいが最適です。厚くしすぎると、基板の穴を通らなくなったり、後のはんだ付けで局所的な熱が集中してしまったりします。このやり方では、ラジオペンチなどで電線をしっかり保定し、こてと糸はんだを滑らせるようにして全体をコーティングしていきます。熟練には時間がかかりますが、このプロセスが後のはんだ付け性を大きく向上させるため、品質意識の高い現場では必須の工程です。
通常の脱脂・酸洗浄に加え、特定の材料や形状によっては、さらに詳細な前処理が必要な場合があります。例えば、アルミニウム製の部品では、専用のアルカリ脱脂液と特別な酸洗液を組み合わせて使用することで、表面の酸化膜を効果的に除去します。また、銅製品の場合、黒色酸化膜(銅酸化物)の除去に時間をかけることが、最終的な品質に大きく影響します。
意外に見落とされやすい点として、「前処理後の保管時間」があります。酸洗浄後から半田メッキまでの時間が長すぎると、せっかく露出させた金属素地が再び酸化し始めます。特に湿度が高い環境では数分で表面が変色することもあり、前処理後はできるだけ早く通電処理に移行するやり方が理想的です。業界では「前処理完了から30分以内に通電開始」というルールを設けている企業も多くあります。
さらに、使用するはんだの水溶液の成分管理も重要です。鉛レス(Pb-free)はんだが主流となった現在、従来の鉛入りはんだとは異なる通電条件が求められます。PbフリーのはんだはSn(錫)とCu(銅)の合金であることが多く、これに対応した電源設定とタイマー管理が必要です。メーカーの推奨条件から外れた条件でやり方を自己流に変更すると、ウィスカー発生などの深刻な不具合につながる可能性があります。
半田メッキ完了後の品質確認は、製品として市場に出す前の最後の砦です。まず目視検査では、皮膜の色合いと均一性を確認します。良好な半田メッキは銀白色で、ムラなく光沢があるのが特徴です。色にくすみや黒ずみが見られる場合、通電不足や液の劣化が疑われます。
次に「密着性試験」を実施します。簡易的には、加工完了した部品をテープで強く張り付けてから剥がし、皮膜が剥離しないか確認する方法があります。業界では、より厳密な「曲げ試験」を実施する場合もあり、細い線状の部品であれば数回曲げ伸ばしをして剥離の有無を判定します。
はんだ付け性の検証では、実際に部品をプリント基板にはんだ付けしてみて、ぬれ性と接合強度を評価します。この段階で不具合が見つかった場合、原因は通常、(1)膜厚不足、(2)密着不良、(3)表面汚染、のいずれかです。逆流して原因を追跡するやり方として、まずは画像記録と記録条件の確認を行い、その後に材料サンプルの再検査、通電装置のキャリブレーションなどを段階的に実施していきます。
日本の金属加工業界では、これらの品質管理の仕組みが徹底されているため、後発国との競争優位性が保たれています。細部にこだわるやり方こそが、製品の信頼性と加工現場の評判につながる重要な要素なのです。
参考:はんだめっきの基本知識と予備はんだの重要性について解説。めっきの役割と後続工程への影響を詳しく説明しています。
参考:電線のはんだメッキ処理と電子部品実装の手順について。小型部品のやり方から電線処理まで実践的な情報が掲載されています。

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