銅にメッキ種類と電解特性基礎

金属加工で広く使用される銅メッキは、実は複数の種類に分類されます。硫酸銅浴、シアン化銅浴、ピロリン酸銅浴、無電解銅メッキなど、各方式の特性を理解することが加工品の品質向上に不可欠。素材や目的に最適な銅メッキ種類はどれでしょうか?

銅にメッキ種類と電解処理の選定

銅メッキの分類と用途
電解銅メッキの基本特性

外部電源を利用して銅を析出させる方式。高速厚付けが可能で、プリント基板や装飾用途に広く採用

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無電解銅メッキの活用

化学反応による方式で、複雑形状や不導体素材への適用が可能。均一な膜厚を実現

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下地メッキとしての役割

ニッケルメッキやクロムメッキ前の密着性向上と耐食性付与が主な目的。ストライク層として機能

銅にメッキの硫酸銅浴方式

 

硫酸銅浴は酸性系のメッキ液で、最も高い光沢性と優れたレベリング性を備える特性を持ちます。電流効率が良好で短時間にメッキが成膜される利点がある一方、腐食性が高いため直接法での適用に制限があります。特にプリント基板など電子部品の製造で広く採用されており、良質な物性と電気特性を実現することが最大の強みです。

 

硫酸銅浴でのメッキは均一電着性がシアン化銅浴に比べて劣る傾向にありますが、鉄素材への直接メッキでは置換反応が生じやすいため、事前処理が重要になります。メッキ液内に含まれる硫酸銅イオンと硫酸基の配合により、光沢度や皮膜の硬度がコントロールされます。プロセス条件によって表面に凹凸をつけることも可能で、意匠性が求められる製品にも対応できます。

 

業界内では硫酸銅浴が最もレベリング性に優れ、最高グレードの光沢が得られるとされており、電気特性が問題視されることはほぼないと評価されています。ただし、皮膜が比較的柔らかいため、切削や研磨などの二次加工が必要な場合は作業性が向上するメリットがあります。

 

銅にメッキのシアン化銅浴特性

シアン化銅浴はアルカリ性のメッキ液で、環境・公害面での課題がありながらも、他の銅メッキ方式には存在しない優れた特長を多数備えています。高い過電圧下でメッキされるため、非常に緻密で均一な電着特性が得られ、複雑形状の内側や素材欠陥の内部までメッキが良好に回り込むという特性があります。

 

シアン化銅浴は一般的にストライクメッキ層として利用され、ニッケルメッキクロムメッキ前の密着性向上に大きな役割を果たしています。素材表面に付着した油分などの汚れを電気化学的に洗浄し、同時に表面を活性化させる作用を持つため、前処理が不完全な場合もメッキ品質が維持される利点があります。

 

環境規制の動きから脱シアン化が業界的に推進されていますが、代替液の性能がシアン化銅浴に比べて劣るため、なお多くの製造現場で採用されています。毒性への配慮が必要ですが、パイプなどの内部への浸漬メッキでは液残りによる腐食を比較的気にしなくてよい利点から、業界推奨の方式となっています。

 

銅にメッキのピロリン酸銅浴と管理

ピロリン酸銅浴は弱アルカリ性で、シアン化銅浴より毒性が低く、優れたレベリング性と均一電着性を兼ね備えています。しかし加水分解という固有の性質を持つため、その特性を十分に理解した上での管理が不可欠になります。特に浴の寿命短縮とメッキ不良の原因となりやすく、管理が他の方式より格段に難しいという課題があります。

 

ピロリン酸塩の構造上、水との反応により分解が進行するため、浴の組成維持と濃度管理に高度な技術が要求されます。コストも硫酸銅浴やシアン化銅浴より高く、そのため使用が限定的になっています。近年の硫酸銅浴やシアン化銅浴の改良が進む中で、ピロリン酸銅浴の採用事例は減少傾向にあります。

 

ただし、光沢性が硫酸銅浴に匹敵し、かつシアン化合物を含まないため、環境意識の高い製造現場での採用を検討する価値がある方式です。浴管理の技術を確保できる企業にとっては、脱シアン化の実現手段として有効な選択肢となります。

 

銅にメッキの無電解方式と基板応用

無電解銅メッキは外部電源を用いず、ホルムアルデヒドなどの還元剤の化学反応で銅を析出させる技術です。析出した銅は自己触媒として機能し、めっきが継続的に成長します。電導体である必要がないため、樹脂やガラスエポキシなどの絶縁体にも銅膜を形成でき、プリント基板のスルーホール内壁への銅析出に欠かせない技術となっています。

 

無電解銅メッキの皮膜は均一で緻密であり、複雑な形状への対応が可能なため、プラスチック基板への導電性付与に極めて有効です。ただし浴内での副反応が発生しやすく、酸化銅(Ⅰ)沈殿の生成と水への反応により銅微粒子が発生することで、浴全体の自己分解反応を引き起こし、浴が不安定化するという弱点があります。これにより最終的にはめっきが付かなくなる現象が起きやすいとされています。

 

電子回路の高度化に伴い、無電解銅めっきの浴管理技術も進化しています。浴状態に合わせた複数パラメータのフィードバック制御や、主反応の経時的均一性確保により、高速(約4μm/h程度)かつ高品質なめっきが実現されるようになりました。フレキシブル基板の製造では、銀シード層上への無電解銅めっきが主流技術となっており、導電パターンの微細化に対応した高度な制御が求められています。

 

銅にメッキの工程と下地処理の重要性

銅メッキの加工工程は、脱脂、酸浸漬、電解脱脂、酸活性化、銅メッキ(またはストライク)、変色防止処理、乾燥という段階を経ます。各工程間には水洗いが挟まり、素材表面の完全な清浄性が品質を左右します。最初の脱脂工程では、素材に付着する防油を完全に除去することが密着性向上に不可欠です。

 

超音波洗浄は液体内に生じた気泡が破裂する衝撃波を利用するため、微細な凹凸面に付着した焼き入れスケールやバフカスを効果的に除去できます。電解脱脂工程では、多量のガスの圧力を利用して浸漬脱脂では除去できない微細な汚れを取り除きます。酸活性化では、メッキ前に素材を活性化させ、メッキの付きやすさを大幅に向上させます。鉄系、硫黄快削鋼、銅合金など素材の種類に応じた最適な活性化処理が必要になります。

 

銅ストライク層は下地素材と上層のニッケルメッキ間の接着剤的役割を果たし、極めて薄い膜厚でも密着性を大幅に向上させます。変色防止処理は銅メッキ表面が酸素と反応して黒ずむのを防ぎ、意匠性が求められる製品では必須の工程です。乾燥工程ではエアー乾燥または乾燥炉を用いて製品に付着した水分を完全に除去し、後工程での腐食発生を防ぎます。

 

各工程の処理条件は素材、寸法、形状によって調整が必要であり、特に複雑形状や穴径の小さい製品では工程設計が極めて重要になります。

 

参考リンク。
【めっき技能士直伝】銅メッキの種類や特徴と用途を徹底解説 - 株式会社コネクション
参考リンク。
【基礎中の基礎!】銅メッキについて - 株式会社三和鍍金
参考リンク。
無電解銅めっきとは?プリント基板に欠かせない技術 - YDN

 

 


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