ビッカース硬さ試験は、材料の硬さを高精度に測定するための標準的な方法です。この試験方法は1924年にイギリスのVickers社によって開発され、現在では世界中の金属加工業界で広く使用されています。
ビッカース硬さの基本原理は、対面角136°のダイヤモンド製四角錐圧子(ピラミッド型)を試料表面に一定の荷重で押し込み、その際に生じる永久的な圧痕(へこみ)の表面積から硬さを算出するというものです。この方法は特に精密な測定が求められる場合に適しています。
ビッカース硬さ(HV)は以下の式で計算されます。
HV = 1.8544 × F ÷ d²
ここで、Fは試験荷重(N)、dは圧痕の対角線の平均長さ(mm)です。結果は単位なしの数値として表され、「HV」という記号が付きます。例えば、「800 HV」のように表記します。
測定に使用される試験機には、以下の主要な構成要素があります。
ビッカース硬さ試験は、試験荷重によって次のように分類されます。
マイクロビッカース試験は、特に表面硬化層や薄い材料、小さな部品の硬さを測定する場合に非常に重要です。微小な荷重(一般的には0.01kgf〜1kgf)を使用することで、材料の最表面の硬さを正確に測定することができます。金属加工業界では、熱処理や表面処理の効果を評価する際に、マイクロビッカース硬さ試験が頻繁に活用されています。
ビッカース硬さ試験の利点は、単一のスケールで広範囲の硬さを測定できることと、試験片のサイズや形状に対する制約が少ないことです。このため、金属加工において、様々な製品や部品の品質管理に適しています。
金属材料の品質管理において、ビッカース硬さ試験は極めて重要な役割を果たしています。硬さ測定は、材料の機械的特性を簡便かつ非破壊的に評価できる方法として、製造プロセスの各段階で広く活用されています。
硬さと他の機械的特性には密接な相関関係があります。一般的に、硬さが高い材料ほど引張強度も高くなる傾向があります。例えば、鋼材の場合、ビッカース硬さ(HV)と引張強度(MPa)の間には以下のような近似的な関係があります。
引張強度(MPa)≒ 3.3 × HV
この関係を利用することで、硬さ測定から材料の強度を推定することが可能になります。これは特に、引張試験が困難な小型部品や複雑形状の部品の評価に役立ちます。
金属加工において、ビッカース硬さ測定は以下のような品質管理の場面で活用されています。