圧力容器は大気圧と異なる一定の圧力で気体や液体を貯留するように設計された容器です。日本の労働安全衛生法では、圧力容器を使用条件や規模に応じて複数の種類に分類し、それぞれに適した安全基準と規制を設けています 。
参考)第一種圧力容器と第二種圧力容器の違いとは?
圧力容器の分類において最も重要な基準は、容器内で気体が新たに発生するかどうかという点です。この違いにより、第一種圧力容器と第二種圧力容器という主要な分類が生まれます 。
分類の際にはPV値(圧力と全容量の積)が重要な指標として使用されます。PV値は圧力(MPa)×全容量(m³)で計算され、この数値により具体的な区分が決定されます 。
参考)圧力容器区分について
第一種圧力容器は、容器内で蒸気その他の熱媒を受け入れ、または蒸気を発生させて固体又は液体を加熱する容器で、容器内の圧力が大気圧を超えるものと定義されています 。
参考)圧力容器 - Wikipedia
主な特徴として、容器内で液体が気体に変化することが挙げられます。具体的には、ボイラーや化学反応器、石油精製装置の蒸留塔などが該当します 。
参考)圧力容器関連
第一種圧力容器は高圧ガスを扱うことが多いため、設計により厳格な安全基準が求められます。化学工場のリアクターやボイラーは、高温・高圧に耐え、かつ内容物の漏れを防ぐため、第一種圧力容器として設計されます 。
参考)圧力容器とは?第一種、第二種圧力容器について違いを解説|MU…
法規制面では、製造許可をはじめ、製造又は輸入、設置などの各段階での厳格な管理が必要です。また、定期的な検査や資格を持った作業者による操作が義務付けられています 。
参考)第一種圧力容器(小型圧力容器)の適用区分
第二種圧力容器は、ゲージ圧力0.2MPa以上の気体をその内部に保有する容器(第一種圧力容器を除く)のうち、内容積が0.04立方メートル以上、または胴の内径が200mm以上で長さが1000mm以上の容器と定義されています 。
参考)第二種圧力容器、小型ボイラー、小型圧力容器について - ボイ…
第二種圧力容器の重要な特徴は、圧力をかけるが容器内で気体が発生しないという点です。これにより、第一種圧力容器と比較して相対的に安全性が高いとされています 。
典型的な用途として、圧縮空気タンク、家庭用ガスボンベ、空気圧リザーバーなどが挙げられます。これらは第一種に比べて低圧での使用が多く、安全基準も相応の設計が許容されます 。
参考)ボイラ及び圧力容器安全規則|技術情報|株式会社明治機械製作所
法規制では、第二種圧力容器明細書の保管、年1回以上の定期自主検査の実施、安全弁や圧力計の適切な設置などが義務付けられています 。
小型圧力容器は第一種圧力容器の一種で、ゲージ圧力0.1MPa以下で使用する容器のうち、内容積が0.2立方メートル以下または胴の内径が500mm以下で長さが1000mm以下のものです。また、最高使用ゲージ圧力とメガパスカルで表した数値と内容積を立方メートルで表した数値との積が0.02以下のものも該当します 。
簡易容器は、第一種圧力容器のうちPV値が0.001以上0.004以下の容器として定義されます。これらの容器は規模が小さく、相対的に危険性が低いため、簡素化された規制が適用されます 。
小型圧力容器は「小型ボイラーおよび小型圧力容器構造規格」に準拠し、簡易容器は「簡易ボイラー等構造規格」に基づいて製造・検査が行われます 。これらの区分により、用途や規模に応じた適切な安全管理が可能になっています。
参考)圧力容器の規定|お役立ち情報|住宅機器販売部|森永エンジニア…
興味深いことに、これらの小型容器であっても、破裂時の危険性は決して軽視できません。実際に、小型の圧力容器でも内部圧力の急激な放出により重大な事故につながる可能性があります。
圧力容器は多岐にわたる産業分野で重要な役割を果たしています。石油精製装置では蒸留塔として使用され、原油を各種石油製品に分離する際の高温・高圧環境に耐える設計が施されています 。
化学工業分野では、反応器として化学反応を制御された環境で行うために使用されます。特に脱硫装置や軽質化装置では、触媒の存在下で水素化反応や分解反応が行われ、耐食性と耐久性が重要な要件となります 。
熱交換器としての用途では、冷却、凝縮、加熱、蒸発及び廃熱回収と幅広い用途があります。多管円筒形熱交換器、二重管式熱交換器、空冷式熱交換器など、用途に応じて様々な形式が採用されています 。
貯蔵用途では、縦型と横型の槽が使い分けられています。縦型は敷地面積が小さく液面調節が容易なため原料供給槽に、横型は油・水分離を必要とする分離槽に適しています 。
圧力容器の安全管理において最も重要なのは、適切な設計圧力と設計温度の設定です。これらの値を超える条件での使用は極めて重大な危険を招くため、各国で様々な規格によって厳格に管理されています 。
日本では労働安全衛生法に基づく「ボイラー及び圧力容器安全規則」により、製造、設置、使用の各段階で詳細な規制が設けられています。第一種圧力容器は製造許可制、第二種圧力容器は構造規格適合義務が課せられています 。
参考)e-Gov 法令検索
定期検査制度も重要な安全確保策の一つです。第二種圧力容器では年1回以上の定期自主検査が義務付けられ、本体の掃除及び損傷の有無、取付ボルトの摩耗、管及び弁の損傷などを点検する必要があります 。
安全装置の設置も法的に義務付けられています。安全弁は圧力容器の最高使用圧力を超えないよう適切な吹出し圧力で設定し、圧力計の目盛盤は最高使用圧力の1.5倍以上3倍以下の範囲で設置する必要があります 。
万一の事故発生時には、速やかに事故報告書を労働基準監督署に提出することが義務付けられており、事故の再発防止と原因究明に重要な役割を果たしています 。