圧痕による硬度測定は、金属加工業界において製品品質管理の要となる技術です。この測定方法は、硬い圧子を試験片に押し付けてできた永久変形(圧痕)から硬さを求める押し込み試験法が主流となっています 。
参考)硬さ試験
金属材料の硬度測定において、圧痕の大きさや形状から硬さを数値化できるため、客観的な評価が可能です。測定物に応じて適切な測定方法を選択することで、より正確な品質管理が実現できます 。
参考)各種硬さ試験機の違いによる金属材料の硬さ試験
ビッカース硬度測定は、ダイヤモンド製の四角錐圧子を用いて圧痕の表面積から硬さを算出する方法です 。この測定法では、圧子の対角線長さd1とd2から平均対角線長さd=(d1+d2)/2を算出し、HV=0.1891×d2Fの公式で硬度値を求めます 。
参考)https://www.jim.or.jp/journal/m/pdf3/62/12/793.pdf
測定荷重は1〜50kgfの通常ビッカース硬さ試験と、5gf〜1000gfのマイクロビッカース硬さ試験に分かれ、それぞれ数百μmから数十μmの圧痕を測定します 。顕微鏡が付属しているため、局所的な部分を狙った精密な硬さ測定が可能です。
浸炭硬化層深さ測定や窒化層深さ測定など、JIS規格に基づく専門的な測定にも対応できる特徴があります 。溶接部における溶接金属や熱影響部の硬さ変化も詳細に測定できるため、金属加工現場での品質管理に欠かせない技術です。
ロックウェル硬度測定は、ダイヤモンド円錐または鋼球圧子を用いて圧痕の深さから硬さを求める方法です 。測定手順は、まず基準荷重を加えて初期位置を設定し、次に全試験力まで押し込んだ後、再び基準荷重まで戻して永久くぼみ深さhを測定します 。
参考)ロックウェル硬さ試験|測定手順/方法・表記一覧を解説 - 株…
硬度値は HR=N−Shで算出され、NとSは圧子の種類と試験力で定義されるスケールによって決まります 。主に熱処理した金属部品の硬さ測定に使用され、操作が簡単で圧痕サイズも小さい(1〜2mm程度)という利点があります 。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/vol_32/sec_1/1-2/1-4.jsp
Cスケール(HRC)は鉄鋼材料に、Bスケール(HRB)は軟質材料に適用され、一台で様々な測定手法に対応できる多機能性が特徴です 。表面の精研磨が不要で、工業現場での効率的な品質管理を実現します。
ブリネル硬度測定は、超硬合金製の球形圧子を用いて圧痕の表面積から硬さを算出する方法です 。5mmまたは10mmの鋼球を選択でき、荷重はHBW500〜3000(試験力4.903kN〜29.42kN)の範囲で設定します 。
参考)ブリネル硬さ(ブリネル硬度)測定について
アルミニウムなどの軟質材料や鋳物に対して大きな圧痕(5〜10mm程度)をつけることで、硬さのバラツキを抑制できる特徴があります 。圧痕が大きいため測定対象も比較的大きな試料が必要で、鋳造品や鋳物など粗くて不均質な粒子構造を持つ材料の測定に適しています 。
ブリネル硬度は HB=πD(D−D2−d2)2Fで算出され、球形圧子の直径Dと圧痕直径dから硬度値を求めます。測定精度を高めるため、圧痕の輪郭を正確に測定することが重要です。
圧痕形成時の表面粗さ悪化を防ぐため、部品表面のリン酸マンガン処理や黒染処理などの皮膜処理が効果的です 。また、転動体の材質変更や強化により、圧痕周辺のトライボロジー特性を改善できます。
参考)https://www.sanyo-steel.co.jp/technology/images/pdf/31/31_05.pdf
硬質クロムメッキ皮膜が施された軸受では、ブリネル圧痕が発生すると皮膜も変形するため 、予防的な保守管理が重要となります。圧痕周縁の隆起した部分は転がり疲れ過程で再変形し、平均面圧の変化をもたらすため継続的な監視が必要です。
参考)ブリネル圧痕が発生した場合、硬質クロムメッキ皮膜も変形するの…