アルニコとセラミック磁石の違い

金属加工従事者なら知っておきたいアルニコ磁石とセラミック磁石の特性・用途・性能の違いについて詳しく解説します。それぞれの磁石が持つ独特の特徴とは?

アルニコとセラミック磁石の違い

アルニコ磁石とセラミック磁石の特徴比較
⚙️
成分と製造法

アルニコは金属合金、セラミックは酸化物セラミックス

🔥
温度特性

アルニコは高温・低温に優れた安定性を誇る

💰
コストと用途

セラミックは低コストで大量生産、アルニコは高性能・高価格

金属加工業界において、磁石は様々な工程で重要な役割を果たしています 。特にアルニコ磁石とセラミック磁石は、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じて使い分けられています 。アルニコ磁石は金属合金から成る高性能な磁石で、セラミック磁石(フェライト磁石)は酸化物セラミックスから作られる経済性に優れた磁石です 。
参考)アルニコ磁石の威力:特性、用途、そして利点

 

アルニコ磁石の成分と特性

アルニコ磁石は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)を主成分とする金属合金磁石です 。JIS規格では、アルミニウム8~13%、ニッケル13~28%、コバルト5~42%の組成で構成され、銅やチタンなどの添加元素も含まれます 。製造方法は鋳造または焼結により行われ、約800度の高いキュリー点を持つのが特徴です 。金属の特性により電気を通しやすく、これが音響機器などでの性能に影響を与えます 。
参考)スピーカーのアルニコとセラミックって何が違うの??

 

セラミック磁石の組成と製造プロセス

セラミック磁石(フェライト磁石)は、酸化鉄(Fe₂O₃)を主原料とし、炭酸バリウムや炭酸ストロンチウムなどを加えて焼き固めて作られるセラミック磁石です 。化学式M²⁺O・Fe₂O₃で表され、Mの部分に様々な元素が入ります 。外観は灰黒色で陶器と同様な性質を持ち、電気を通さない絶縁体としての特性があります 。製鉄の副産物を主原料として使用できるため、コストパフォーマンスに優れています 。
参考)キャナック:フェライト磁石の概要

 

アルニコとセラミック磁石の強度比較

磁束密度の観点から見ると、アルニコ磁石は地球磁場の約3,000倍に相当する1,500ガウス程度の磁束密度を持ち、ネオジム磁石希土類磁石と同程度の強い磁力を発揮します 。一方、セラミック磁石は残留磁力は低いものの、保磁力が非常に高く、高速回転する機械装置に適した特性を持ちます 。アルニコマグネットとフェライトマグネットでは約2倍ほどの磁力の違いがあり、セラミック磁石はこれを補うために体積を大きくする必要があります 。
参考)フェライト磁石

 

温度特性と環境耐性の違い

アルニコ磁石は3種類の磁性材料の中で最も温度特性に優れており、20℃を100%とした場合、100℃で96%、200℃で93%、300℃で89%の吸着力を維持します 。高温・低温における磁力変動が少なく、厳しい環境での測定器にも使用されています 。セラミック磁石も高温には耐性がありますが、保磁力の温度特性が金属磁石と逆で、マイナス30℃以下の環境では低温減磁に注意が必要です 。また、セラミック素材のため錆に強く、高湿度環境下でも安定して使用できます 。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0047.html

 

アルニコとセラミック磁石のコスト差と市場動向

アルニコ磁石は希少金属(レアメタル)を含有しているため、セラミック磁石と比較して製造コストが大幅に高くなります 。1960年代のコンゴ動乱でコバルトが暴騰したことをきっかけに、より安価なフェライト磁石に主役の座を奪われました 。現在、アルニコマグネットはネオジウム以上に高価な素材となっており、中古市場でも「アルニコ」の文字があるだけで高値がつく状況です 。一方、セラミック磁石は世界で最も大量に生産されている磁石で、コストパフォーマンスに優れているため幅広い分野で使用されています 。
参考)アルニコ磁石 - Wikipedia