QRコードは、正方形の枠内に白黒のマスを配置した二次元バーコード技術で、複数の重要な構成要素から成り立っている 。最も目立つのは三隅にある大きな四角形で、これは「切り出しシンボル」または「ファインダパターン」と呼ばれる 。
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この切り出しシンボルの白セルと黒セルの比率は「1:1:3:1:1」になっており、これは印刷物の中で最も使われていない比率として採用されている 。この特徴的な比率により、カメラやスキャナーは周囲の文字や図形からQRコードだけを素早く抽出できる仕組みになっている 。
切り出しシンボルは位置検出や歪んだコードの外形を正確に検出する役割があり、どの角度からでも高速で読み取ることを可能にしている 。画像が歪んだり部分的に破損していても、QRコードの位置を正確に把握できるのは、このファインダパターンの優れた設計によるものである 。
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QRコード内のデータは、白黒のマス(セル)によって2進法で表現されている 。実は、白黒のマスは0と1の集合体であり、記録された言語そのものなのである 。この二次元配列により、従来のバーコードが約20桁程度の情報量しか扱えなかったのに対し、QRコードは数千文字(数字の場合は7000文字)もの情報を格納できるようになった 。
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縦横にドットを配置することで2次元で情報を持たせており、横方向と縦方向の両方にデータを詰め込むことができる 。この仕組みにより、URLや連絡先情報、商品詳細、製造履歴など、多様なデータタイプを効率的に格納可能である 。
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金属加工業界では、この大容量データ格納機能を活用して、製品の製造履歴や品質管理情報、トレーサビリティデータを一つのQRコードに集約することができる 。製品や部品にQRコードを直接刻印することで、製造から出荷まで全工程の情報を追跡管理できる革新的なシステムを構築している企業も増加している 。
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QRコードには優れた誤り訂正機能が搭載されており、L(7%)、M(15%)、Q(25%)、H(30%)の4つのレベルがある 。これらの数値は、コード面積のどの程度が欠損した場合でもデータを復元できるかを示している 。例えば、M(15%)の場合、コード面積の15%が欠損しても正確にデータを読み取ることが可能である 。
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この誤り訂正機能は「リード・ソロモン符号」という高度な数学的アルゴリズムを使用しており、周囲のドットから情報を補完してデータを復元する 。工場や物流の現場での利用を想定して開発されたため、汚れや傷による部分的なデータ損失に対して強い耐性を持っている 。
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ただし、実際の読み取り実験では、理論値よりも低い欠損率でエラーが発生することも確認されており、誤り訂正レベルの許容範囲は目安として考える方が良いとされている 。金属加工現場では、油汚れや切削粉による汚染が頻繁に発生するため、特殊ガラスコーティング処理を施したQR銘板を使用する企業も存在する 。
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QRコードリーダーは、撮像した画像から2次元コードを抽出してデコード処理を行う仕組みで動作している 。まず、カメラで撮影されたグレー画像(白黒画像)を2値化画像に変換し、その後でQRコードの規格に従ってデコードを実行する 。
参考)2次元コードリーダの読み取り原理
この読み取り過程では、アライメントパターンとタイミングパターンが重要な役割を果たしている 。アライメントパターンは右下方向にある一回り小さな四角形で、印刷時の歪みや斜めからのスキャンによる変形を補正する機能を持つ 。タイミングパターンは黒と白が交互に並ぶ線で、QRコード内のデータの読み取りタイミングを調整する役割を担っている 。
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さらに、フォーマット情報という重要な要素があり、これはエラー訂正レベルやマスキングパターンを記録した情報である 。このフォーマット情報は位置検出パターンの近く(左上・右上・左下)に分散配置され、QRコードを正確に読み取るために必要な基本情報を提供している 。
金属加工業界では、QRコードを活用した革新的な製造管理システムが急速に普及している 。上原メッキ工業のような企業では、iPadとQRコードを組み合わせた現場作業管理により、作業時間を約2割短縮することに成功している 。読み込むだけで情報を表示できるQRコードの特性が、手袋を着用した作業環境での操作性向上に大きく貢献している 。
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製造現場では、設備保守点検にQRコードを活用することで、点検作業の効率化と人的ミスの削減が実現されている 。設備にQRコードを貼付し、保守点検の記録や部品の交換履歴、稼働状況や故障履歴などの情報をデータベースで一元管理する仕組みが構築されている 。
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トレーサビリティ確保の観点では、原材料の入荷から製品出荷まで各工程でQRコードを利用し、製造履歴を記録・管理することが可能になっている 。特に高温環境での使用が想定される金属加工業界では、200℃の耐熱性を持つQR銘板が開発され、約20年間の読み取り保証を実現している 。アルミプレートに直接QRコードを切削加工し、特殊ガラスコーティング処理を施すことで、耐光性・耐腐食性・耐摩擦性を確保している 。
参考)QR銘板