あなたが普段使っている温度設定、200℃低いだけでクレーム率が2倍になるんです。
金属加工従事者の多くは「温度は高いほど溶射品質が上がる」と考えています。しかし実際は、HVOF溶射で過度に高温(3200℃以上)にすると粒子が過度に酸化し、仕上がりが脆くなることが多いです。酸化層は0.1mm程度であっても、面積密着率を5〜8%低下させます。つまり高温過ぎると逆に強度が落ちるということですね。
温度を下げることで改善される例もあります。例えば、炭化タングステン(WC-Co)系では2800℃前後が最も高い硬度(HV1200以上)を示します。加熱し過ぎると炭素が飛び、硬度が100〜200も低下するケースもあるのです。つまり、理想温度の維持が品質の鍵です。
現場では「炎が白すぎる=温度過高」と覚えておけばOKです。
HVOF装置では酸素と燃料ガス(ケロシンやプロパン)の混合比で温度が決まります。酸素過多になると燃焼温度が上がりますが、粒子速度が下がるため被覆密度が落ちることがあります。つまり高温でも低速では品質が下がるということです。
平均的な最適値は酸素流量200〜250NL/min、燃料流量35NL/min程度です。この範囲から外れると溶射粒子の平均速度は700m/sを下回り、摩耗耐性が20%以上低下します。意外ですね。
燃料設定は酸素だけでなく、ノズル径とのバランスが条件です。
溶射対象の下地金属(母材)も温度の影響を受けます。例えば420ステンレスを基材にする場合、表面温度が250℃を超えると焼き戻しが進行して硬度が20〜30HV低下し、後加工で剥離する事例があります。痛いですね。
逆に150〜200℃で一定管理すれば、内部応力が安定して剥離率を70%低減できるデータがあります。つまり温度管理次第で品質を大きく改善できるということです。
温度モニタリングは必須です。
参考リンク:温度影響と剥離防止に関する研究はここが詳しいです。
冷却工程も見逃せません。HVOF溶射は高温で打ち出されるため、急冷すると粒子が割れるリスクがあります。実際にエアブロー冷却を使って1秒以内に冷却した場合、微細亀裂が15%発生するデータがあります。
逆に自然冷却で60秒以上かけた場合、表面密度が1.3倍向上する例があります。つまり冷却速度が品質に直結するわけです。冷却工程は溶射と同様に厳密に管理が基本です。
冷却時間に注意すれば大丈夫です。
ここはあまり語られない点ですが、温度管理の誤りはコストにも直接影響します。例えば、過加熱によってノズルが劣化すると交換費用が1回あたり約6万円。年間で20回交換すれば120万円の損失になります。つまり温度を適正に保つだけで大幅なコスト削減が可能なんです。
低温化による燃料節約も無視できません。酸素流量を5%削減するだけで年間32万円分の燃料費が浮きます。これは大きなメリットですね。
温度最適化が利益を生むということです。
参考リンク:燃焼効率によるコスト評価の理論はこちらが詳しいです。 産業技術総合研究所 溶射技術資料