溶接作業におけるリスクアセスメントの実施方法と対策

金属加工従事者必見!溶接作業で起こりうる危険性の特定から評価、効果的な安全対策まで包括的に解説。労働災害を未然に防ぐリスクアセスメントの正しい進め方とは?

溶接作業のリスクアセスメント

溶接作業の主要リスクと対策
感電事故の防止

絶縁手袋着用・乾燥状態の維持で作業者を保護

🔥
火傷・火災の予防

防炎シート使用・可燃物除去で作業環境を安全化

😷
有害物質への曝露対策

適切な換気・呼吸用保護具で健康障害を防止

溶接作業における危険性有害性の特定

溶接作業のリスクアセスメントでは、まず作業場に存在する危険性・有害性を体系的に特定することが重要です 。アーク溶接作業では、ヒュームの吸入により気管支炎、肺炎、じん肺を発症するリスクがあります 。さらに、溶接のアーク近傍に口元を近づけて作業を続けると、一酸化炭素(CO)中毒になる危険性があります 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001411590.pdf

 

また、物理的な危険として電撃災害があり、溶接作業中断時に溶接棒をホルダに付けたまま中断した時、溶接棒先端部に触れることで感電する事例が報告されています 。スパッタやスラグの飛散による火傷、溶接直後の被溶接物に触れることによる熱傷も頻発する災害です 。
参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/risk/yousetsu04_6_2.html

 

溶接作業の健康障害リスク評価

溶接ヒュームは発がん性物質に分類されており、塩基性酸化マンガンが含まれることで神経障害や呼吸器系障害のリスクがあります 。長期間の曝露により、肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの症状を引き起こす可能性があります 。
参考)https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpo21/pdf/106_%EF%BD%9014-17.pdf

 

神経系への影響として、マンガンなどの成分により神経機能の低下、手足の震えや感覚の鈍麻を引き起こすケースが報告されています 。溶接ヒュームは体内に蓄積されると排出困難となり、熱中症様の初期症状から発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感、知覚異常の症状が2〜3日続くことがあります 。
参考)https://bbnet.shop/blogs/column/%E4%BA%BA%E4%BD%93%E3%81%AB%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E3%82%92%E5%8F%8A%E3%81%BC%E3%81%99%E6%BA%B6%E6%8E%A5%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%81%AF-%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%AA%E5%AF%BE%E7%AD%96%E6%96%B9%E6%B3%95%E3%82%92%E3%81%94%E7%B4%B9%E4%BB%8B

 

溶接作業環境の管理手順

溶接作業の環境管理では、まず作業場の気中粉じん濃度測定を実施することが基本となります 。JIS Z 3950(溶接作業環境における粉じんの濃度測定方法)により測定し、WES 9007(溶接作業環境管理基準)で定められた管理濃度3mg/m³以下を維持する必要があります 。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0110030080

 

全体換気装置による換気の実施や、これと同等以上の措置を講じることが義務付けられています 。局所排気装置やヒュームコレクターの設置により、溶接ヒュームを効果的に除去することも重要な対策です 。作業場の整理整頓を徹底し、可燃物を作業エリアから遠ざけることで火災リスクを軽減できます 。
参考)作業者の安全と健康を守る!溶接作業の安全対策を解説

 

溶接作業員の安全教育と訓練

溶接作業に従事する労働者には、アーク溶接特別教育の受講が義務付けられています 。2024年1月からは、新たにアーク溶接技能講習も導入され、作業環境の改善方法、保護具、健康障害予防、関係法令について合計6時間以上の受講が必要です 。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/we-com/bn/vol_4/sec_6/6-1.jsp

 

教育内容には、溶接ヒュームの有害性及び防止対策について詳しく含まれており、実際の作業現場での危険予知活動も重要な要素となります 。定期的な安全教育により、作業者が正しい知識と技能を身につけ、労働災害を未然に防ぐことができます 。
参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/risk/yousetsu04_8_1.html

 

溶接現場における独自の火災予防アプローチ

一般的な火災対策に加えて、溶接現場特有の予防策として「時差監視システム」の導入が効果的です。これは作業終了後も一定時間現場を監視し、遅発性の着火を早期発見する独自の安全管理手法です。

 

作業前の準備として、周囲の可燃物除去だけでなく、天井裏の断熱材や隠れた可燃性物質の確認が必要です 。作業区画の形成と関係者以外の立入禁止措置を徹底し、不燃シートや防炎シートの使用、散水の実施により火災リスクを最小化します 。
参考)溶接・切断作業等の火災にご注意ください/高岡市公式ホームペー…

 

緊急時対応策として、消火器の準備に加えて、作業後の臭気・発煙確認を必ず実施することが重要です 。危険物施設では、危険物保安監督者による立会いと、可燃性ガス測定器での測定を義務付けることで、より高度な安全管理が実現できます 。