透過率と吸光度の式

透過率と吸光度の式について、金属加工現場での分析に役立つ基本原理から計算方法まで詳しく解説。Lambert-Beerの法則の活用で品質管理は向上するでしょうか?

透過率と吸光度の式

透過率と吸光度の基本概念
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透過率の定義

入射光と透過光の強度比を表す重要な光学的性質

⚖️
吸光度の概念

物質がどれだけ光を吸収するかを示す定量的指標

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分析への応用

金属成分の定量分析や品質管理に不可欠な技術

透過率の基本式と計算方法

透過率(T)は、試料を通過する光の割合を示す基本的な光学量で、入射光の強度(I₀)と透過光の強度(I)から以下の式で計算されます :
参考)https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/technical-documents/technical-article/analytical-chemistry/photometry-and-reflectometry/transmittance-to-absorbance

 

透過率(T)= I/I₀
パーセント透過率として表現する場合は、%T = (I/I₀) × 100 となります 。この値が大きいほど、試料を通過する光の量が多いことを意味し、逆に小さいほど多くの光が吸収または散乱されていることを示します 。
金属加工業界では、材料の光学的性質を評価する際に透過率測定が重要な役割を果たしています 。特に薄膜や表面処理の品質管理において、透過率データは製品性能の指標として活用されています 。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/surface_treatment_technology/st01/c1820.html

 

吸光度の基本式と透過率との関係

吸光度(A)は透過率から算出される値で、物質が光をどれだけ吸収するかを表します 。吸光度と透過率の関係は以下の式で表されます:
吸光度 = 2 - log(%T) または A = -log(T) = log(I₀/I)
参考)Absorbance

 

この対数関係により、透過率が50%の場合は吸光度約0.3、透過率が10%の場合は吸光度1.0となります 。吸光度は光学密度(O.D.:Optical Density)とも呼ばれ、分光分析において濃度との比例関係から定量分析に適した指標となっています 。
実際の分析では、吸光度0.05~1.0の範囲で測定すると信頼性が高く、金属試料の成分分析においても重要な測定範囲とされています 。
参考)http://chem.okayama-u.ac.jp/~analytical/analytical_3/2.pdf

 

Lambert-Beerの法則による透過率吸光度式の応用

Lambert-Beer(ランベルト・ベール)の法則は、透過率と吸光度を濃度分析に応用するための基本法則です 。この法則によると、吸光度は以下の式で表現されます:
参考)ランバート・ベアの法則|粉体工学用語辞典

 

A = ε × c × ℓ
参考)ランベルト・ベールの法則の導出 href="https://tomonolab.com/2022/03/31/lambert_beer/" target="_blank">https://tomonolab.com/2022/03/31/lambert_beer/amp; 吸光度は0.3が最適で …

 

ここで、εはモル吸光係数[L/(mol・cm)]、cは溶液の濃度[mol/L]、ℓは光路長[cm]を示します 。モル吸光係数は物質固有の定数であるため、吸光度と濃度が比例関係にあることがわかります 。
金属加工業界では、ICP発光分光分析やフレーム原子吸光法などで、この法則を利用して金属元素の定量分析を行います 。特に鉄鋼材料の成分分析では、数十mg程度の試料から0.1%程度の元素濃度まで測定可能です 。
参考)金属試料の成分分析|東京都立産業技術研究センター

 

分光光度計での透過率吸光度測定の実際

分光光度計を用いた透過率と吸光度の測定では、光源から単色光を試料に照射し、透過光の強度を検出します 。測定装置は光源部、分光部、試料室、受光素子、表示部から構成され、透過率(T)、吸光度(A)、濃度(C)が自動表示されます 。
参考)https://www.tech-try.com/bunkou/information/sikumi.html

 

金属試料の分析では、溶液化した試料に発色試薬を添加する呈色反応を利用することが多く、微量成分でも強い吸収ピークの検出が可能となります 。例えば、六価クロムの分析では特定波長での吸光度測定により、環境規制値以下の濃度まで定量できます 。
参考)紫外可視分光光度計の利用

 

測定操作が簡単で迅速な結果が得られるため、品質管理現場での日常分析に適しています 。

金属加工における透過率吸光度式の実用例

金属表面処理剤の分析では、塩素酸イオンなどの成分定量に吸光光度法が活用されています 。測定では吸光度0.2~0.7の範囲になるよう試料濃度を調節し、Twyman・Lothianの曲線に基づく誤差を最小化します 。
参考)https://www.nc-toyama.ac.jp/library/wp-content/uploads/sites/4/2018/02/kiyou4-1.pdf

 

原子吸光分析法では、試料溶液を高温加熱して目的元素を原子化し、元素特有の波長光を透過させて基底状態原子の光吸収(吸光度)から濃度を求めます 。この手法はppm~ppbオーダーの金属元素測定に優れており、フレーム法や黒鉛炉法など複数の原子化方法が選択できます 。
参考)https://www.nstec.nipponsteel.com/technology/chemical-analysis/inorganic-analysis/inorganic-analysis_04_aas.html

 

また、金属薄膜の光学特性評価では、中赤外領域での完全吸収特性の設計に透過率データが重要な役割を果たし、ナノ構造制御による吸収性能向上の指標となっています 。これらの実用例は、透過率と吸光度の式が金属加工業界の品質向上と技術革新に欠かせない基盤技術であることを示しています 。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdfdirect/10.1002/apxr.202400012