鉄損は変圧器や電気機器の鉄心部分で発生する損失で、主に「ヒステリシス損」と「渦電流損」の2種類に分けられます 。ヒステリシス損は鉄心の磁化方向が繰り返し変わることで発生する熱エネルギーで、スタインメッツの実験式により以下のように表されます :
参考)鉄損とは?具体的な求め方や銅損との違いについて解説!
ヒステリシス損の公式:
Ph = kh × f × Bm^n × V
渦電流損の公式:
Pe = ke × (f × Bm × t)² × V
鉄損は周波数に比例して増加するため、高周波になればなるほど大きくなる特徴があります 。また、鉄損は無負荷損とも呼ばれ、負荷の大きさに関わらず常に一定となります 。
参考)鉄損と銅損について
銅損は変圧器の巻き線に電流が流れることによって発生するジュール熱損失で、巻き線の抵抗値と電流の2乗に比例します 。銅損の基本的な計算公式は以下のとおりです :
参考)鉄損 とは?鉄損と銅損の違いや、鉄損の求め方などについて解説…
全負荷銅損の公式:
Pc = r₁I₁² + r₂I₂² = R₁I₁² + R₂I₂²
負荷率における銅損:
Pcα = α² × Pc
銅損は負荷電流の2乗に比例するため、電流が2倍になると損失は4倍になります 。負荷率は負荷電流に比例するため、銅損は負荷率の2乗に比例して変化する特性があります 。
参考)変圧器の電圧変動率と損失および効率計算
変圧器の効率が最大となるのは、鉄損と銅損が等しい時です 。この条件は「最小の定理」により数学的に証明されます 。
参考)『鉄損』と『銅損』が等しい時に効率が最大となる理由
規約効率の公式:
η = (出力)/(出力+鉄損+銅損) × 100[% ]
η = (αPNcosθ)/(αPNcosθ + PI + α²PC) × 100[% ]
最大効率となる負荷率:
α = √(PI/PC)
最大効率時の条件式は以下のようになります :
PI = α² × PC (鉄損 = 負荷率αにおける銅損)
一般的に変圧器は負荷率が0.5~0.75の時に最大効率となるように設計されています 。この設計により、実際の運転条件において最も効率的な電力変換が可能になります。
実際の金属加工現場では、鉄損の計算は設備の効率評価や省エネ対策に重要な指標となります。鉄損の測定と計算には以下の実用的な方法があります 。
参考)変圧器の効率、全日効率の計算
無負荷試験による鉄損測定:
変圧器の二次側を開放状態にして一次側に定格電圧を印加した時の損失を測定します。この値が鉄損(無負荷損)PI [W]となります 。
実際の計算例:
定格容量100[kVA]の変圧器で無負荷損が500[W]、定格負荷時の銅損が1000[W]の場合。
鉄損は材料の品質や加工精度に大きく影響されるため、珪素鋼板の採用や薄板の積層構造により損失を最小限に抑える工夫が重要です 。また、一般的な小型モーターでは全損失の30~40%が鉄損、50~60%が銅損を占めています 。
実際の運転では負荷が時間とともに変化するため、1日中の総合効率を表す全日効率の計算が重要になります 。
全日効率の公式:
ηd = W/(W+p) × 100[% ]
1日の出力電力量:
W = Σ(α × PN × cosθ × T) [kWh]
1日の損失電力量:
p = 24 × PI + Σ(α² × PC × T) [kWh]
この計算では、鉄損は24時間一定であるのに対し、銅損は負荷率の2乗に比例して変化することが重要なポイントです 。例えば、無負荷で10時間、定格電流の50%で6時間、定格電流で8時間運転する場合の全日効率計算では、各時間帯の負荷率を正確に把握して計算する必要があります 。
金属加工業においては、設備の稼働パターンを分析し、全日効率を最適化することで大幅な省エネ効果を実現できます。特に断続運転が多い工場では、無負荷時間の短縮や負荷率の適正化により、エネルギーコストの削減が可能になります。