シーム溶接は、その名の通り「継ぎ目(シーム)」を作る溶接方法で、電気抵抗によって発生する熱を利用した抵抗溶接の一種です。この溶接方法は、2枚の円板状電極を用いて連続的に線状の溶接を行うことが特徴です。
溶接のプロセスは以下のように進行します。
抵抗溶接の原理では、材料自体の電気抵抗を利用して熱を発生させるため、外部から加熱する必要がなく、効率的な溶接が可能になります。一般的に、シーム溶接では下記の式に基づいて発熱量が決まります。
Q = I²Rt
ここで、Qは発熱量、Iは電流、Rは電気抵抗、tは通電時間を表します。つまり、高い電流を流すほど、また抵抗が大きいほど発熱量は増加します。
シーム溶接は「ラップシーム溶接」とも呼ばれ、主に重ね合わせた材料同士を溶接するために使用されます。材料を突き合わせて溶接する「バットシーム溶接」や、板端をわずかに重ねて押しつぶしながら溶接する「マッシュシーム溶接」などのバリエーションもあります。
シーム溶接とスポット溶接は共に抵抗溶接の一種ですが、それぞれに特徴と適した用途があります。主な違いを理解することで、製品に最適な溶接方法を選択できます。
【シーム溶接とスポット溶接の比較】
特徴 | シーム溶接 | スポット溶接 |
---|---|---|
溶接形状 | 連続した線状 | 点状 |
使用電極 | 円板型(回転) | 棒状(固定) |
気密性 | 非常に高い | 低い(点のみ) |
速度 | 比較的速い | 個別の点ごとに時間が必要 |
設備コスト | 高い | 比較的低い |
電力消費 | 大きい | 比較的小さい |
シーム溶接の大きな利点は連続した気密性の高い溶接ができることです。一方、スポット溶接は必要な箇所のみを点で溶接するため、材料への熱影響が局所的で、変形が少ない特徴があります。
溶接方法を選ぶ際の判断基準。
例えば、自動車の燃料タンクには漏れを防ぐためにシーム溶接が使用される一方、車体パネルの接合には多数の点でスポット溶接が用いられています。このように製品要件に応じて適切な溶接方法を選択することが重要です。
シーム溶接の最大の特長である高い気密性は、多くの産業分野で製品の品質と信頼性を飛躍的に向上させています。連続した線状の溶接により形成される緻密な接合部は、液体やガスの漏れを効果的に防止します。
気密性が重要視される主な応用分野。
気密性の数値評価と品質保証。
気密性の評価には、ヘリウムリーク試験や圧力保持試験などが用いられます。例えば、10⁻⁸ Pa・m³/s以下のリークレートが要求される超高真空機器でも、適切に施工されたシーム溶接は要求を満たすことができます。
シーム溶接の気密性による付加価値。
特に最近では、電気自動車のバッテリーケースや水素燃料電池など、新エネルギー分野での高い気密性要求に対応するためにシーム溶接技術の重要性が高まっています。適切な溶接パラメータの選定と品質管理により、製品の信頼性と安全性を大幅に向上させることができます。
シーム溶接機は、用途や対象材料によって様々なタイプが存在します。それぞれの特徴を理解し、適切な設備を選択することで、金属加工の品質と効率を最大化できます。
主なシーム溶接機の種類。
2025年の最新技術動向としては、以下のような革新が注目されています。
国内主要メーカーのランキング(2025年4月現在)。
これらのメーカーは、それぞれ独自の技術や特徴を持ち、産業ニーズに合わせた溶接機を開発しています。選定の際には、溶接対象の材質や厚さ、生産量、求められる品質レベルなどを総合的に検討することが重要です。
金属メッシュの溶接は、シーム溶接の特殊な応用分野であり、独自の技術とノウハウが求められます。メッシュ素材は一般的な金属板と異なる特性を持つため、溶接時には特別な配慮が必要です。
メッシュ溶接の基本ポイント。
メッシュ溶接の産業応用例。
実践テクニック。
メッシュと板材の接合においては、メッシュ側の熱容量が小さいため、溶けすぎを防ぐ工夫が必要です。具体的には、電流波形を制御し、立ち上がりを緩やかにすることで安定した溶接品質を確保できます。
また、メッシュ溶接では通常のシーム溶接機を産業用ロボットに組み込むことで、複雑な形状にも対応可能になります。溶接ラインの設計段階から、メッシュの特性を考慮したジグ設計が重要になります。
メッシュ溶接の品質検査。
メッシュ溶接の実例と技術詳細はこちら
シーム溶接を活用したメッシュ加工技術は、今後も医療機器や環境技術など、さまざまな分野で需要が拡大していくと予想されます。特に精密フィルターや特殊形状メッシュの製造において、その価値が高まっていくでしょう。
シーム溶接の適用においては、溶接品質と生産性のバランスを見極めることが重要です。材料特性を理解し、適切な溶接パラメータと設備を選択することで、高品質なメッシュ製品の製造が可能になります。溶接技術の継続的な改善と新たな応用分野の開拓が、金属加工業界の発展に寄与するでしょう。