酸化クロムの化学式と構造

酸化クロムは金属加工業界で研磨剤や顔料として重要な役割を果たす化合物で、複数の酸化数を持つ特殊な性質があります。それぞれの酸化クロムの化学式や構造、用途はどのように異なるのでしょうか?

酸化クロムの化学式

酸化クロムの基本情報
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化学式の種類

CrO、Cr2O3、CrO2、CrO3の4種類が代表的

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金属加工での利用

研磨剤、顔料、耐火物の原料として活用

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安定性の違い

3価クロムが最も安定で広く使用される

酸化クロム(II)の化学式と特徴

酸化クロム(II)は化学式がCrOで表される黒色粉末の化合物です 。この化合物は塩化ナトリウム型構造を持ち、分子量は68.00となっています 。
参考)酸化クロム(II) - Wikipedia

 

酸化クロム(II)は化学的に不安定な性質を持ち、空気中で容易に酸化されて酸化クロム(III)となります 。また、加熱により金属クロムと酸化クロム(III)に不均化する特徴があります 。
参考)酸化クロム - Wikipedia

 

製造方法としては、クロムアマルガムを空気や硝酸と反応させる方法、赤熱した酸化クロム(III)に水素やエタノールを通す方法などがあります 。しかし、その不安定性から金属加工業界での実用化は限定的です。

酸化クロム(III)の化学式と工業応用

酸化クロム(III)は化学式がCr2O3で表される暗緑色の無機化合物で、分子量は151.99です 。この化合物はコランダム構造と呼ばれる六方最密充填構造を取り、酸化物イオンがつくる八面体形の間隙のうちの2/3をクロムイオンが占める構造です 。
参考)酸化クロム(Ⅲ)

 

主な物性

この化合物は極めて安定で、赤熱して水素を通じても変化しません 。金属加工業界では研磨剤顔料(クロムグリーン)、耐火物の原料として広く使用されています 。特に研磨材料としては、その高い硬度と安定性から精密加工に欠かせない材料となっています。
参考)1308-38-9・酸化クロム(III)・Chromium(…

 

酸化クロム(IV)の化学式と磁性特性

酸化クロム(IV)は化学式がCrO2で表される化合物で、分子量は83.99です 。この化合物は黒褐色を呈し、ルチル型構造の強磁性体として知られています 。
参考)酸化クロム(サンカクロム)とは? 意味や使い方 - コトバン…

 

酸化クロム(IV)は正方晶系のルチル型構造を持ち、その磁性特性から磁性材料として磁気テープに用いられることがあります 。製造方法としては、硝酸クロム(III)の加熱や水酸化クロム(III)の酸素による酸化、酸化クロム(VI)の熱分解の中間過程で生成されます 。
参考)酸化クロム

 

金属加工分野では、その特殊な磁性と電気的性質から、特定の電子部品や磁性材料の製造に限定的に使用されています。

 

酸化クロム(VI)の化学式と危険性

酸化クロム(VI)は化学式がCrO3で表される化合物で、分子量は99.99です 。別名として三酸化クロム無水クロム酸とも呼ばれ、赤色の針状結晶として存在します 。
参考)酸化クロム(Ⅵ)

 

この化合物は強力な酸化剤として機能し、約250℃で酸化クロム(III)と酸素に分解します 。固体中では四面体形構造のクロム原子が頂点を共有して鎖状に並び、それぞれのクロム原子は隣のクロム原子と2つの酸素を共有しています 。
参考)酸化クロム(VI) - Wikipedia

 

⚠️ 重要な安全上の注意

酸化クロムの結晶構造と物理的性質

酸化クロム化合物の中で最も安定な酸化クロム(III)は、コランダム構造という六方晶系の結晶構造を持ちます 。この構造は、酸化アルミニウム(Al2O3)と同じ構造型で、酸化物イオンが六方最密充填を形成し、その八面体間隙の2/3にクロムイオンが配置されています 。
参考)コランダム構造:ルビーとサファイアの結晶構造 - はじめよう…

 

コランダム構造の特徴として、極めて高い硬度(モース硬度8~8.5)と優れた化学的安定性があげられます 。この構造により、酸化クロム(III)は石英よりも硬く、酸や塩基によって容易には侵されません 。
🔬 結晶学的特徴

  • 空間群:R-3c
  • 反強磁性(ネール温度307K)
  • 加熱により茶色に変色し、冷却で暗緑色に復帰

金属加工業界では、この優れた物理的性質を活かして、高温環境下での研磨材や耐火物の原料として重用されています 。また、その反強磁性特性は特殊な電子材料への応用も期待されています 。
参考)(クロム製品amp;label=1amp;name=研磨用酸…