リチウムイオン電池回収ボックスと産業廃棄物処理の完全ガイド

金属加工業界でリチウムイオン電池の適正廃棄は法的義務となっています。回収ボックスの設置から産業廃棄物処理まで、安全なリサイクル方法をご存じですか?

リチウムイオン電池回収ボックスと産業廃棄物処理の基本

リチウムイオン電池回収の重要性
法的義務と火災防止

資源有効利用促進法により製造業者には回収義務が課されている

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回収ボックス設置効果

ごみ収集車両やリサイクル施設での火災事故を防止

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資源リサイクル推進

コバルト、ニッケル、リチウムなどの貴重な金属を再利用

金属加工業界においてリチウムイオン電池の適正処理は重要な課題となっています 。資源有効利用促進法により、リチウムイオン電池を含む小型二次電池の製造事業者と使用機器の製造事業者には、自主回収と再資源化が義務づけられています 。
参考)大阪市:リチウムイオン電池等の訪問回収を実施しています (……

 

リチウムイオン電池の不適正処理は深刻な問題を引き起こします。ごみ収集車両やごみ処理施設において、家庭ごみや産業廃棄物に混入したリチウムイオン電池が原因の火災事故が全国的に発生しており、人命や設備に重大な被害をもたらしています 。
参考)産業廃棄物である小型充電式電池の取扱いについて - 愛知県

 

回収ボックスの設置は、これらの事故を防止するための重要な対策です。大阪市では令和5年7月から市内10か所の環境事業センターに「リチウムイオン電池等回収ボックス」を設置し、市民からの持ち込みによる受付を開始しています 。この取り組みにより、火災事故の防止と資源の有効利用が一層推進されています。

リチウムイオン電池回収ボックスの設置場所と利用方法

全国の家電量販店、ホームセンター、スーパーなど81か所にJBRCの協力店として回収ボックスが設置されています 。これらの協力店では、小型充電式電池(リチウムイオン電池、ニカド電池、ニッケル水素電池)を無料で回収しています 。
参考)協力店・協力自治体検索(検索システム)

 

回収対象となる製品には以下が含まれます。

  • モバイルバッテリー
  • スマートフォン(取り外せない電池込み)
  • ワイヤレスイヤホン
  • 電動工具のバッテリー
  • 最大辺または径が30センチメートル以内のもの

利用する際は、金属端子部(プラス極とマイナス極)にビニールテープを貼り絶縁処理を行ってから投入することが重要です 。膨張・変形したリチウムイオン電池も回収対象となっていますが、破損が激しい場合は専門業者への相談が必要です 。
参考)神戸市:電池類回収ボックスを設置

 

産業廃棄物としてのリチウムイオン電池処理方法

金属加工業などの事業所から排出されるリチウムイオン電池は産業廃棄物として処理する必要があります 。産業廃棄物のリチウムイオン電池は、金属くず(外装の金属部分)と汚泥(内部の電解質等)の混合廃棄物として分類されます 。
参考)乾電池は産業廃棄物の分類上どうなる?汚泥と金属くずの混合物!…

 

処理の流れは以下の通りです。

  1. 事業者による適切な保管(絶縁処理、衝撃防止)
  2. 産業廃棄物収集運搬許可業者への委託
  3. リサイクルセンターでの一時保管
  4. 処理場での分解・分離処理
  5. 金属成分のリサイクル

    参考)乾電池の産業廃棄物の分類は?処分方法についても解説

     

マニフェスト(産業廃棄物管理伝票)の作成が法的に義務づけられており、適正な処理が行われているかを確認する必要があります 。虚偽記載や交付を怠った場合は罰則の対象となります。
参考)事業者の「電池類」はどう処理する?

 

特定化学物質を含むリチウムイオン電池の危険性管理

リチウムイオン電池には、コバルト、ニッケル、リチウムなどの特定化学物質が含まれており、金属加工業界では特に注意深い取り扱いが求められます 。これらの物質は、PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)の届出対象物質に該当する場合があります 。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdfdirect/10.1002/cssc.202102080

 

電池内部の電解液には有害な化学物質が含まれており、液漏れが発生すると作業環境汚染や健康被害のリスクがあります 。保管時は直射日光を避け、使用済み電池と未使用電池を分けて保管することが重要です 。
参考)電池類はどのように処理する?|電池(水銀使用製品)|廃水銀|…

 

最新の研究では、深共晶溶媒(DES)を用いた環境に優しい回収技術が開発されており、従来の高温処理に比べて環境負荷を大幅に削減できることが報告されています 。この技術により、リチウム、マンガン、コバルト、ニッケルを効率的に回収し、新しい電池材料として再利用できます。
参考)https://chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/open.202400258

 

リチウムイオン電池リサイクルの法規制と最新動向

2025年に入り、リチウムイオン電池のリサイクルに関する法規制が強化されています。政府は来年4月の法改正に合わせて、モバイルバッテリー、スマートフォン、加熱式たばこの3品目について回収とリサイクルを義務化する方針を発表しました 。
参考)リチウムイオン電池内蔵 モバイルバッテリーなど 回収とリサイ…

 

欧州では、EU電池規則により電池の原材料調達から製造、リサイクルまでの全工程でサステナブルな製品供給が求められており、日本企業にも大きな影響を与えています 。この規制により、リチウムイオン電池の設計段階からリサイクル性を考慮することが必要となっています。
参考)欧州(EU)電池規則とは|内容・日本企業への影響をわかりやす…

 

産業界では、機械化学的アップサイクリング技術が注目されています。この技術では、使用済みLiCoO2電池から新しいLiNi0.80Co0.15Al0.05O2電池を100%原子効率で製造できるため、環境負荷とCO2排出量を大幅に削減できます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10083615/

 

金属加工業界においても、これらの最新技術と法規制の動向を把握し、適切なリサイクル体制を構築することが競争優位性の確保につながります 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11636252/