メッキ加工の溶剤選別ガイド活用術

メッキ加工の前処理に不可欠な溶剤選びについて、脱脂洗浄から環境対応まで幅広く解説。複数の溶剤タイプの特性を理解し、最適な選択をすることで、メッキ品質を大きく左右する重要なポイントは何でしょうか?

メッキ加工の溶剤について

メッキ加工の溶剤選別ガイド活用術
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脱脂洗浄の基本概念

メッキ工程における前処理の最初のステップとなる脱脂洗浄は、加工油や防錆油、潤滑油などの有機汚れを金属表面から完全に除去するプロセスです。

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溶剤のタイプ分類

メッキ加工で使用される溶剤は、水系洗浄剤と非水系洗浄剤の大きく2つのカテゴリに分類されており、それぞれの特性と用途が異なります。

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環境対応型溶剤への移行

近年の環境規制に対応した、塩素系から炭化水素系への溶剤選択シフトが業界全体で進行しており、新たな技術確立が求められています。

メッキ加工の溶剤による脱脂洗浄の実務知識

 

メッキ加工の工程において、脱脂洗浄は最も基礎となる重要なステップです。金属の加工過程で付着する潤滑油や防錆油といった有機物質を完全に除去しない限り、後続のメッキ処理の品質に直結した悪影響が生じます。メッキ液への密着不良やピンホール発生といった不具合を防ぐため、溶剤による脱脂洗浄の選択と実施方法は極めて重要です。

 

脱脂洗浄で対象となる汚れは、粒子汚れ、有機汚れ、無機汚れの3種類に分類されます。粒子汚れはゴミや繊維、空気中の埃です。有機汚れは油分やフラックス、接着剤などの有機物で、金属加工現場で最も頻繁に遭遇する汚れです。無機汚れは酸化皮膜や水垢で、金属表面への付着力が強い特徴があります。実際には、これら3つの汚れが混在した状態で処理対象に到着するため、業者側は複合的な対応能力を求められます。

 

メッキ加工の溶剤の種類と脱脂方法の選択肢

脱脂洗浄は大きく3つのステップで構成されています。予備洗浄では金属加工後の加工油の約80%を除去し、本洗浄では残余の油の15~19%を落とし、仕上洗浄で最後の油分をすべて除去します。各ステップで異なるアプローチが採用されます。

 

溶剤系脱脂は、トリクロロエチレン(TCE)やパークロロエチレン(PCE)といった有機溶剤を使用する方法で、優れた脱脂力と速乾性を兼ね備えています。浸漬、蒸気脱脂、超音波洗浄など複数の施工方法に対応可能です。一方、エマルジョン脱脂は炭化水素系溶剤に水と界面活性剤を加えた洗浄剤で、浸漬やスプレー方式で適用されます。アルカリ脱脂は苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を主成分とした水系溶液で、ケン化反応によって油脂を分解し、浸漬や電解、超音波方式で実施されます。

 

環境規制による塩素系溶剤の規制強化に伴い、業界は炭化水素系溶剤への移行を加速しています。塩素系は毒性が強く有毒ガス発生のリスクがあるため規制対象ですが、炭化水素系は引火性があるものの安全な使用技術が確立され、蒸留再生によるリサイクルが可能で毒性も低いメリットがあります。

 

参考リンク:メッキ加工における脱脂洗浄の基本知識と実践について、詳細情報が掲載
https://www.k-erg.co.jp/column/07-2

メッキ加工の溶剤選択時の重要考慮因子

メッキ加工での溶剤選択は、単なる洗浄力だけではなく、対象物の材質特性を十分に配慮する必要があります。いかに洗浄力が高い溶剤でも、対象となる金属を溶解させたり表面を荒れさせてしまっては本末転倒です。鉄やステンレスと銅、すず、亜鉛、アルミニウムでは適切な処理方法が異なります。

 

アルカリ脱脂を実施する際、温度上昇に伴って洗浄効果が飛躍的に高まりますが、非鉄金属では高温処理やpH10以上の環境下で腐食のリスクが発生します。対象となる汚れの種類と付着強度に応じて、最適な脱脂方法と溶剤を組み合わせることが不可欠です。水系洗浄剤は無機汚れや粒子汚れの除去に適していますが、粘性の高い有機汚れ除去には非水系洗浄剤(炭化水素系や塩素系)が適しています。

 

メッキ加工の溶剤を使用した脱脂後の錆発生防止法

金属を洗浄した直後に錆が発生する現象は、多くのメッキ従事者が経験する一般的な課題です。金属の錆は、水と空気中の酸素が結合して酸化されることで発生するため、水と酸素を遮断することが錆防止の基本原理です。

 

洗浄後の防錆対策としては、複数のアプローチが存在します。第一に、有機溶剤で洗浄することで、水分が存在しないため錆びやすさが低減されます。第二に、水系洗浄後にしっかりと液切りを行い、その後乾燥させることで水分を遮断する方法があります。第三に、水系洗浄後に軽度な防錆油を塗布して防錆皮膜を形成する方法です。素材によっては洗浄後すぐに錆が発生するケースもあり、適切な処理を行うことで洗浄状態を長期間保つことができます。

 

参考リンク:メッキ工程における洗浄と防錆処理について、実践的な解説情報
https://sanwamekki.com/info/column/column_kiso/washing-vol-2/

メッキ加工の溶剤における水系アルカリ脱脂の成分構成と機能

水系アルカリ脱脂に使用される溶剤成分は、主に3つのカテゴリに分類されます。基本成分として水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)が挙げられ、これはアルカリ加水分解による脂肪酸アルカリ塩(石鹸)への変換、つまりケン化反応に不可欠な要素です。

 

ビルダー(洗浄助剤)には、炭酸塩系では炭酸ナトリウムや重炭酸ナトリウムが、リン酸塩系では第三リン酸ナトリウムやトリポリリン酸ナトリウムが、ケイ酸塩系ではメタケイ酸ナトリウムやオルトケイ酸ナトリウムが採用されます。これら全てが加水分解して水酸化ナトリウムとなり、ケン化反応を補助する役割を果たします。

 

界面活性剤はアニオン系、ノニオン系、両性の種類があり、脱脂液成分を油汚れ層に湿潤・浸透させ、引きはがした油分を処理液中に分散させて表面への浮上を防ぐ乳化分散作用を提供します。これらの複合作用により、高い脱脂効率が実現されます。注視する点として、鉱物油はケン化反応が発生しないため、このアルカリ系方法では脱脂不可能であり、その場合は溶剤系洗浄への切り替えが必要です。

 

参考リンク:メッキ加工における化学薬品と添加剤の役割について、専門的解説
https://www.georhizome.co.jp/blog_soil/archives/6270

メッキ加工の溶剤による処理で注意する有害物質と環境配慮

メッキ加工の脱脂洗浄工程において、特に注意が必要なのは使用される溶剤に含まれる有害物質です。脱脂のために使用されるトリクロロエチレン等の第1種特定有害物質は、職場環境と作業者の健康に直結した影響を及ぼします。メッキ液に含まれる代表的な有害物質としては、シアン化合物、ほう素及びその化合物、六価クロム化合物、ふっ素及びその化合物、鉛及びその化合物が挙げられます。

 

シアン化合物は特に多くのメッキに使用されるメッキ液に含まれており、アルカリ性メッキ液において液中の金属イオンが反応して沈殿することを防ぐため有効な物質です。しかし、毒性が高く適切な取り扱いが不可欠です。環境規制の観点から、溶剤系洗浄の使用が難しくなり、水系洗浄やアルカリ脱脂への移行が加速しています。水系洗浄は一般的に毒性が低く、環境負荷が減少するメリットがあります。

 

作業環境における換気の確保、個人防護具の適切な着用、廃液処理の適切な実施など、あらゆる安全対策が併行して実施されるべき事項です。これにより、作業者の健康保護と環境保全の両立を実現できます。

 

参考リンク:メッキ工場における有害物質と安全衛生について、詳細なガイドライン
https://www.fm-007.com/case/plating-safe1/

 

 


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