マテリアルリサイクルによるCO2削減は、複数の要因が組み合わされた結果として実現されます。最も直接的な削減効果は、原材料の採掘・製造工程で本来排出されるはずだったCO2を避けることです。
国内のCO2排出量の29.3%は産業部門・工業プロセスが占めており、そのうち18.6%が化学分野から排出されています。金属加工業においても、新規原料の精錬には膨大なエネルギーが必要とされます。例えば、アルミニウムの新規製造と比較すると、リサイクルアルミニウムの製造には3~5%のエネルギーしか必要としません。
廃プラスチックを有効活用する際、資源・エネルギーの代替によって本来排出されていたCO2排出量を大幅に抑えられるのです。また、リサイクル工程でのエネルギー消費も新規製造よりも圧倒的に少なく、全体のライフサイクルアセスメント(LCA)で見ると、環境への正味の負荷は著しく低減します。
マテリアルリサイクルのCO2削減効果は、単なる廃棄物処理の効率化ではなく、サプライチェーン全体における根本的なエネルギー構造の変革をもたらすものです。金属加工従事者がこの仕組みを理解することで、自社の環境戦略が明確に見えてきます。
限りある資源を循環させることで、天然資源の消費を抑制するのが、マテリアルリサイクルのもう一つの重要な側面です。一から製品を製造するのと比較して、リサイクル時には使用する天然資源エネルギーを直接的に削減できます。
特に金属業界では、その効果が顕著です。例えば、スチール缶や新しいアルミ缶を製造する際、リサイクル材を使用することで、原材料採掘に伴う地球掘削やエネルギー消費が大幅に低減されます。廃タイヤ、古紙、ガラス瓶なども同様に、限りある資源を国内で循環させることで、環境への負荷を低減できるだけでなく、製造原価の削減や製品の安定的な供給にもつながります。
国内自給率の向上は、国際市況の変動による原材料価格の乱高下から企業を守るバッファとしても機能します。金属加工企業がマテリアルリサイクルに投資することは、長期的な経営戦略としても合理的な選択なのです。
海外では、レゴやパタゴニアといったグローバル企業が、サスティナブルな素材への移行を積極的に進めています。レゴは、サトウキビ由来の植物性プラスチックを使用したブロック生産を開始し、パタゴニアは「Worn Wear」プログラムで中古品の販売と回収した衣料の原料再利用を実現しています。
マテリアルリサイクルを効果的に実施するには、徹底した異物除去作業が不可欠です。リサイクルする製品に少量でも異物が入っていると、品質の劣化につながり、結果としてリサイクルの効率性が低下します。
金属加工業では、複合材料の解体と不純物の除去が特に重要な課題となります。プラスチックの分子鎖切断による強度低下、金属の不純物混入による性能低下など、品質低下のリスクは多岐にわたります。これを防ぐためには、新しい原料の適切な配合や高度な選別技術が必要です。
最新のAI選別技術は、異物除去の効率化により純度を向上させ、同時にコストを削減できます。トレーサビリティの確保や品質管理基準の確立を通じて、水平リサイクルの実現が可能になります。リサイクル前の製品と同一のものにリサイクルする水平リサイクルは、品質劣化を最小限に抑え、同じ用途での再利用を実現するため、金属加工企業にとって次の重点課題です。
環境省の『マテリアルリサイクルによる天然資源消費量と環境負荷の削減に向けて』では、複合材料の処理システムがCO2削減と経営効率の両立に不可欠であることが示唆されています。
環境省資料:マテリアルリサイクルによる天然資源消費量と環境負荷の削減
リサイクル技術の革新は、コスト削減と品質向上の鍵となり、CO2削減効果を飛躍的に高めます。現在、多くの先進企業が技術開発に積極的に投資しており、その成果は業界全体に波及しています。
日本企業の中でも、JFEスチールは使用済みプラスチックを製鉄の原料に利用するシステムを確立し、サントリーはボトルtoボトルで再生PET樹脂100%使用を実現しています。キャノンは、トナーカートリッジの回収リサイクルシステムで埋め立てをなくし、製品設計段階からリサイクル性を組み込む戦略を採用しています。
金属加工業にとって、設備投資や運営費用が高額になりやすいという課題は存在しますが、長期的には原材料コストの削減と製造効率の向上を通じて回収可能です。異なる素材の分離・選別技術や不純物除去の自動化は、製造工程改善によるエネルギー効率化につながり、環境負荷をさらに低減させます。
中辻産業のように、メタルスクラップリサイクルで大型設備と独自の選別・加工処理システムを駆使し、金属資源の100%リサイクルを目指す企業の事例からは、専門性の高い技術投資がいかに競争力となるかが明確に見えます。
マテリアルリサイクルに基づくCO2削減戦略は、企業の持続可能性と市場競争力を大きく左右する経営判断です。3R(Reduce・Reuse・Recycle)を企業活動の基本方針に組み込み、製品の軽量化、過剰包装の見直し、長寿命設計の採用を通じて削減から始める必要があります。
再生材料の市場価格は、原油価格や経済情勢により大きく変動する特性を持っています。原材料市場の変動リスクに対しては、長期契約や価格変動補填制度の活用など、戦略的な対策が求められます。ISO14001などの環境マネジメントシステムの取得と継続的な環境改善の実施は、企業のブランド価値向上にも寄与します。
北九州市のエコタウン事業など、行政と企業が連携した先進的な取り組みは、廃棄物をゼロに近づける目標設定の重要性を示しています。金属加工企業がSDGsのゴール12「つくる責任・つかう責任」やゴール13「気候変動に具体的な対策を」に貢献することで、消費者や投資家からの信頼を獲得し、長期的な企業価値の向上が実現できるのです。
マテリアルリサイクルのCO2削減効果は、ライフサイクルアセスメント(LCA)により正しく評価される必要があります。原料採取から製品生産、流通・消費、廃棄・リサイクルまでの全工程を比較することで、真の環境負荷削減が見える化され、経営判断の根拠となるのです。

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