膜厚計は素地と被膜の材料特性を利用して厚さを測定する精密測定器で、金属加工現場の品質管理において不可欠な装置です 。測定原理により大きく分けて、電磁式・渦電流式・超音波式・分光干渉式・蛍光X線式の5種類に分類されます 。
参考)膜厚計とは?種類ごとの原理・特徴と膜厚計の選び方を解説
電磁式膜厚計は磁性体である鉄・鋼・フェライト系ステンレス上の非磁性被膜(ペイント・メッキ・樹脂膜)を測定対象とし、磁束密度の変化を利用して膜厚を算出します 。プローブと基材の距離に比例して磁石の引っ張る力が変化する特性を活用した測定方式で、金属加工現場で最も一般的に使用されています 。
参考)【測定原理別】膜厚計選定ガイド!電磁式・渦電流式・超音波式で…
渦電流式膜厚計はアルミ・銅・オーステナイト系ステンレスなどの非磁性金属上の絶縁性被膜を測定対象とし、高周波電界によって発生する渦電流の振幅変化から膜厚を求めます 。電気を通さない絶縁性被膜であることが使用条件となり、接触式と非接触式の2種類が存在します 。
参考)膜厚計とは? 測定原理や種類、選び方のポイントを解説します
電磁式膜厚計と渦電流式膜厚計の最大の違いは測定対象となる素地の材質にあります 。電磁式は磁性体(鉄・鋼など)上の非磁性被膜を測定し、渦電流式は非磁性金属(アルミ・銅など)上の絶縁性被膜を測定します 。
参考)膜厚計とは?概要・種類ごとの使い方と選び方のポイント
測定原理の違いでは、電磁式が磁束密度の変化を利用するのに対し、渦電流式は渦状電流の振幅変化を利用します 。電磁式は塗膜が薄い場合に磁石の引っ張る力が増し、厚い場合に減少する特性を活用し、渦電流式は膜が薄い場合に渦電流の振幅が大きくなり、厚い場合に小さくなる性質を利用します 。
測定精度では渦電流式膜厚計の方が一般的に高く、特に薄膜の測定において優れた性能を発揮します 。また、現場での利便性を考慮して、両方の機能を搭載したデュアルタイプ膜厚計も多数販売されており、自動素地判別機能により作業効率の向上が図られています 。
分光干渉式膜厚計は光の干渉現象を利用した非接触・非破壊測定方式で、ナノメートルオーダーの超薄膜から数十マイクロメートルの膜厚まで高精度測定が可能です 。測定対象に白色光を照射し、膜表面と界面で反射した光の位相差から膜厚を算出する原理で、カーブフィッティング法やFFT(高速フーリエ変換)による解析手法が採用されています 。
参考)厚み/膜厚計とは
蛍光X線膜厚計は下地材料にX線を照射して発生する蛍光X線を分析することで膜厚を測定する方式で、特にめっき膜厚の測定において高い精度を発揮します 。測定システムは基本的に自動化されており、測定条件と測定位置を設定するだけで高精度かつスピーディな検査が可能です 。
参考)蛍光X線膜厚計とは?原理から構造・使用例まで基礎知識を解説|…
超音波式膜厚計は超音波の伝搬時間を計測して膜厚を求める方式で、金属・非金属を問わず幅広い素材に対応可能です 。測定対象の音速によって値が異なるため、事前のキャリブレーションが必要ですが、厚膜の測定において優れた性能を示します 。
膜厚計の選定では素地と被膜の材料特性を正確に把握することが最重要ポイントです 。磁性体の素地には電磁式膜厚計を、非磁性金属の素地には渦電流式膜厚計を選択するのが基本原則となります 。
被膜の材質も選定に大きく影響し、非磁性体の被膜(メッキ・ペイント・樹脂膜)には電磁式が、絶縁性被膜(プラスチック・樹脂・ゴム・アルマイト)には渦電流式が適用されます 。また、被膜の厚み範囲も考慮する必要があり、一般的な測定範囲0~1500μmに対し、厚膜測定には0~3000μmの広範囲対応モデルが推奨されます 。
測定環境による選定では、持ち運び性を重視する場合は電磁式・渦電流式・超音波式が適し、定期的な連続測定には赤外線式・分光干渉式の据え置き型が効果的です 。防水設計の有無も現場での使用において重要な判断要素となります 。
金属加工現場での膜厚計活用では、製品の機能性と品質確認が主要目的となります 。外壁塗装・自動車生産ライン・橋梁点検・プラント修理などの分野で膜厚管理が品質保証の重要な要素として位置づけられています 。
測定精度の向上には定期的なキャリブレーションが不可欠で、年1回の定期点検により測定精度を維持することが推奨されています 。特に超音波式膜厚計では測定対象の材料に応じた音速調整が必要で、同一材料でも異なるバリエーションによる音速の違いを考慮した設定が求められます 。
参考)https://www.sanko-denshi.co.jp/system/wp-content/uploads/pdf/jp/qa/qa_makuatu.pdf
最新の膜厚計では統計機能やデータ保存機能が標準装備され、測定から統計・印字までの手順を一台で完結できるモデルも登場しています 。これにより現場での作業効率向上と品質記録の自動化が実現し、トレーサビリティの確保も容易になっています 。
参考)【2025年版】膜厚計21選 /おすすめ膜厚計の徹底比較 測…