カーボンナノチューブ(CNT)は、1991年に日本の物理学者・飯島澄男博士によって発見された革新的な炭素材料です 。その基本的な構造は、炭素原子が六角形の網目状に配列したグラフェンシートを円筒状に巻いた形状を持ちます 。
参考)宇宙エレベーターって本当に実現するの?
金属加工従事者にとって注目すべきCNTの特性は以下の通りです。
参考)カーボンナノチューブ(CNT)ナノ粒子をわかりやすく解説
これらの特性により、CNTは金属材料の代替として電磁波シールド筐体や導電性フィルム、自動車部品の電源ケーブルや燃料チューブなどへの応用が進んでいます 。
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宇宙エレベーターは、地球表面から静止軌道を経て宇宙空間まで延びる全長96,000kmのケーブルシステムです 。この構想において、CNTが注目される理由は「破断長」という材料特性にあります 。
参考)宇宙エレベーターのケーブル素材を追加展示しました|【空宙博】…
破断長とは、材料を垂直に垂らした際に自重で切断されるまでの長さを表す指標で、宇宙エレベーター実現には最低4,960kmの破断長が必要とされています 。従来材料の破断長は以下の通りです:
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理論的にはCNTの強度と軽量性により、宇宙エレベーターのケーブル材料として十分な性能を持つことが確認されています 。大林組では2050年の宇宙エレベーター完成を目標とした建設構想を発表しており、日本がこの分野で世界をリードしています 。
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CNT製造において最も重要な技術は、産業技術総合研究所で開発された「スーパーグロース法(SG法)」です 。この手法は化学気相成長(CVD)法の一種で、以下の画期的な性能を実現しています:
参考)驚異の新素材、 単層カーボンナノチューブ 世界初の量産工場が…
日本ゼオン株式会社では、このSG法を活用した世界初の単層CNT量産工場を2015年に稼働開始しました 。現在、ロール・ツー・ロール(RtoR)方式により、幅380mmのステンレス基板上に長さ5-1000μmの配向CNTを製造する技術も確立されています 。
参考)https://www.kanadevia.com/hitz-tech/pdf/2013h25_3_02.pdf
しかし、宇宙エレベーター用途には依然として技術的課題が残っています。現在製造可能なCNTの長さは最長でも数十μm程度であり 、宇宙エレベーター実現には数万km級の長さが必要です 。
参考)カーボンナノチューブ活用の最大の壁“凝集塊”を解消する超高分…
金属加工業界においてCNTは、複合材料としての活用が急速に拡大しています。主要な応用分野は以下の通りです。
電池・エネルギー分野
参考)https://unit.aist.go.jp/ncm/ja/news/CNT%20in%20brief.pdf
自動車・航空機部品
電子・半導体分野
特に注目すべきは、CNTの電磁波吸収特性により、従来の鉄やアルミニウム製筐体の代替として軽量化が図れる点です 。これにより、自動車産業における燃費向上や航空機産業でのペイロード増加に貢献しています。
CNT実用化における最大の技術的障壁は、チューブ同士の凝集問題です 。CNTは強いファンデルワールス力により絡み合い、本来の性能を発揮できない状態となります。この課題を解決するため、株式会社GSIクレオスでは「CNTの長さを保ったまま分散させる方法」を確立しました 。
森六ケミカルズでは、「高分散カーボンナノチューブマスターバッチ」技術を開発し、以下の分野での実用化を進めています :
また、産業技術総合研究所とNEDOプロジェクトの共同研究により、CNTを用いたOリングの実用化にも成功しており、これは製品化第1号として注目されています 。
参考)ナノチューブ メーカー13社 注目ランキングhref="https://metoree.com/categories/2704/" target="_blank">https://metoree.com/categories/2704/amp;製品価格【20…
宇宙エレベーター実現に向けては、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」実験棟において、CNTの宇宙環境曝露実験が2回実施されており 、宇宙空間での耐久性評価が進められています。大林組では2025年のアースポート建設着手を目標としており 、技術開発と並行して実用化への取り組みが加速しています。
参考)大林組が「宇宙エレベーター」に挑戦。低コストの宇宙往復は20…
宇宙エレベーターの技術的課題について詳細な技術資料
産総研とNEDOによるCNT量産化技術の開発成果
日本宇宙エレベーター協会による実現への技術課題解説