金属加工業界において循環型社会を実現するため、3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動が重要な役割を果たしています。 リデュース(発生抑制)では、製造工程の見直しや技術開発により廃棄物の発生量を大幅に削減できます。実際に、ある企業では年間15トン発生していたスラッジをゼロにし、工場全体の熱原単位を前年度比16%削減することに成功しました
参考)https://www.pref.ishikawa.lg.jp/haitai/recycle/documents/3rzireisyu.pdf
リユース(再利用)の取り組みでは、工程から発生する多様な形状・性状の金属くずを効率的に分別し、有価性を高める工夫が重要です また、使用済み設備や部品を適切にメンテナンスして再利用することで、新規資源の投入量を削減し、コスト効率も向上させることができます。
リサイクル(再資源化)においては、金属の特性を活かした循環利用が可能です。鉄やアルミニウム、銅などの金属は、品質を維持しながら何度でも再利用できる特性があり、適切な分別と処理により高い再資源化率を実現できます
参考)【解説】金属の3Rと鉄がリサイクルされる仕組み
金属リサイクルにおける回収システムは、循環型社会の基盤を支える重要な仕組みです。工場から排出される金属スクラップや一般家庭・事業所からの使用済み金属製品を効率的に回収し、再資源化プロセスに供給します
参考)https://kankyounomikata.co.jp/corporate/business/service/column/metal-recycling/
金属リサイクルの流れは、「回収→分別・洗浄→溶解・精錬→再資源化」という工程で進められます 特定家庭用機器(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)については、家電リサイクル法に基づいた適切な処理が求められ、製造業者にはリサイクル義務、小売業者には回収義務が課されています
実際の企業事例では、グループ全体で3Rを推進し、ゼロエミッションに取り組んだ結果、2011~2012年実績で廃棄物量を6.9%(6,011t)削減することができました 工場全体の月例会における写真や画像を使った教育により、分別の徹底による再生利用・有価物化を推進し、大きな減量効果を実現しています。
循環型社会の実現には、根本的な廃棄物削減技術の導入が不可欠です。製造工程では、減容化装置の活用により廃液量を最大90%削減できる技術が実用化されています この装置は水溶性洗浄液の水分を蒸発させることで廃液を濃縮し、廃液処理コストを大幅に削減すると同時に環境負荷軽減にも貢献しています。
参考)減容化装置|高橋金属株式会社
圧縮減容技術の導入も効果的な取り組みです。廃棄物を圧縮・減容することで運搬回数や作業時間を削減し、運搬コストや人件費の削減につながります 実際に、物流センターでは一日あたり2トンの段ボール箱を処理し、年間約576万円のコスト削減効果を実現した事例があります
参考)圧縮減容のメリット
金属加工業においては、塩ビ含有物の分別、ガラス類の着色瓶分別、紙類の細分別など、徹底した分別により再生利用率を向上させることができます これらの取り組みにより、処理コストがかかるごみを「売れる資産」に変換し、利益を生み出すことが可能になります。
金属製造業界では、環境負荷削減のための包括的な取り組みが進められています。DOWAグループのような企業では、リサイクル原料の集荷から高効率な金属生産、金属の高付加価値化というサイクルを実現する循環型ビジネスモデルを構築しています このシステムでは、「環境・リサイクル部門」が廃棄物の無害化と金属リサイクルを行い、「製錬部門」が多様なリサイクル原料からリサイクル金属を生産しています。
参考)資源循環
エネルギー効率の向上も重要な取り組みです。金属加工には多くのエネルギーが必要ですが、効率的な機械の導入や再生可能エネルギーの利用により、エネルギー消費を削減し、CO2排出量の削減に寄与できます 実際に、川崎エコタウンでは循環型製造技術の活用により、年間約25万2千トンのCO2削減を実現しています
参考)https://www.wakatech.co.jp/2024/08/29/2902/
水資源の管理も環境負荷削減の重要な要素です。金属加工では冷却や洗浄に大量の水を使用するため、使用済み水のリサイクルや再利用により環境負荷を減らす取り組みが求められています これにより、水資源の保護と処理コストの削減を同時に実現できます。
循環型社会の実現には、従来の枠組みを超えた革新的な技術と産業間の連携が重要です。リチウムイオン電池のリサイクル技術開発では、これまで困難とされていた金属回収を民間企業の新技術により安全性を確保しつつ効率的に実現しています リチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタルの回収は、感電や発火の危険性があるため高度な技術が必要ですが、技術革新により実用化が進んでいます。
参考)金属リサイクルとは?持ち込み・買取価格から伝票の流れ、課題と…
産業共生システムの構築も注目すべき取り組みです。デンマークのカルンボーでは、1960年代から地域企業群が地方政府と連携し、工場排熱を地域暖房に供給し、薬品工場の有機系廃棄物をコンポスト化して農家に提供するなど、理想的な産業エコシステムを構築しています
参考)循環型製造技術を活用した低炭素・循環型社会の形成 (2008…
日本でも川崎エコタウンにおいて、廃プラスチックをガス化して製鉄プロセスのコークス代替品として利用する高炉還元施設や、廃プラをアンモニア製造用合成ガスに変換する施設などが稼働し、循環型製造技術の実用化が進んでいます これらの施設では天然資源の代替として廃棄物を活用し、資源採掘や輸送に伴う環境負荷を削減しています。