洋白(洋銀、ニッケルシルバー)は銅(Cu)50~70%、ニッケル(Ni)5~30%、亜鉛(Zn)10~30%から構成される三元系銅合金です。代表的なC7521では銅62~66%、ニッケル16.5~19.5%、残部が亜鉛という組成になっています。銀白色の美しい光沢を持ちながら、実際に銀は含まれていない点が特徴的です。
参考)洋白 - Wikipedia
洋白の機械的特性は、各成分比率の調整により幅広く制御できます。一般的にニッケルが増すほどばね性が、亜鉛が増すほど強度が、銅が増すほど展延性が向上する特性を持っています。引張強度は375~540MPaの範囲にあり、黄銅よりも優れた機械的性質を示します。
参考)金属豆知識
耐食性と加工性も洋白の重要な特徴で、柔軟性・屈曲加工性に富み、比較的優れた耐食性を持っています。導電率は6%IACS、熱伝導率は33W/m・K、密度は8.7g/cm³となっており、電気・電子分野での使用にも適しています。
白銅(キュプロニッケル)は銅を主体としてニッケルを10~30%含む二元系合金です。最も一般的なC7060では銅とニッケルの合計が99.5%以上を占め、鉄1.0~1.8%、マンガン0.20~1.0%も含有しています。100円硬貨に使用される白銅は銅75%、ニッケル25%の組成です。
参考)https://www.toishi.info/sozai/cu/c7060.html
白銅の大きな特徴は優れた耐食性と耐海水性にあります。高温環境下でも比較的強く、海水を扱う設備や船舶関連の部品に多く使用されています。硝酸など強酸には耐えられませんが、その他の酸や海水には高い耐性を示します。
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白銅は銅の展延性を保持しながら、加工硬化率が比較的弱いため、深絞りや圧延などの塑性加工性に優れています。強度はニッケル量が多くなるほど高くなりますが、約60%を境に低下する特性があります。炭素や硫黄といった不純物に敏感なため、マンガンを添加してMnSを形成させ、硫黄を除去する必要があります。
両合金の最大の違いは、洋白に亜鉛(Zn)が添加されていることです。白銅に亜鉛を加えることで、様々な性質の変化がもたらされます。亜鉛の添加量により、明青銅色から青・緑・黄、さらに銀白色まで色調が変化する特徴があります。
参考)https://dda40x.blog.jp/archives/52034339.html
亜鉛添加の主要な効果として、強度向上があります。洋白の引張強度375~540MPaに対し、亜鉛の添加により機械的性質が向上します。また、亜鉛は合金の加工性を改善し、複雑な形状への加工を容易にします。コスト面でも、亜鉛の添加によりニッケルの使用量を減らすことができ、洋白は白銅よりも安価に製造できます。
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亜鉛は優れた防錆効果も発揮します。酸化された際に酸化物皮膜を形成し、銅の保護作用を強化します。また、合金中で陰極として作用することで酸化反応を妨げ、電気化学的な保護作用をもたらします。これにより、洋白は耐食性と加工性を両立した合金となっています。
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機械的特性では、両合金に明確な違いがあります。洋白は引張強度375~540MPa、伸び20%以上、硬度120~180HVを示します。一方、白銅は展延性に優れ、深絞りや圧延などの塑性加工において優位性を持っています。
ばね性能では洋白が優秀で、腰の強い合金としてバネ材料にも適用されています。洋白は耐疲労性にも優れており、繰り返し荷重に対する耐久性が高い特徴があります。特にC7701のような高強度洋白では、引張強度540~860MPa、硬度150~270HVの高い値を示します。
参考)https://www.toishi.info/sozai/cu/c7521.html
加工性では、洋白が複雑な形状への加工に適している一方、白銅は深絞り加工に向いています。洋白は絞り性に優れ、展延性と耐疲労性を兼ね備えているため、精密部品の製造に適しています。白銅は加工硬化率が弱いため、大きな変形を伴う加工において有利です。
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導電率では両合金に差があり、洋白のC7521で6%IACS、C7701で5%IACSとなっています。電気的特性を重視する用途では、この差が材料選択の重要な要因となります。
洋白の主要用途は装飾品、楽器、電子部品、精密機器です。銀色の美しい光沢と変色のしにくさから、洋食器、ナイフ・フォークなどの食器類に広く使用されています。ホテル業界では「hotel silver」として本物の銀器の代用品として採用されています。電子分野では、スイッチ、コネクター、リレー、接点、シールドケース、水晶振動子などに使用されています。
参考)洋白
白銅は耐海水性を活かし、海洋関連設備に特化した用途が中心です。復水器管、熱交換器管、船舶部品、海水処理装置などで幅広く採用されています。貨幣としては50円硬貨と100円硬貨に使用されており、日常生活で最も身近な白銅製品です。
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コスト面での選定では、洋白が有利です。買取価格を見ると、洋白が273円/kg(税抜)に対し、白銅は818円/kg(税抜)となっており、洋白の方が大幅に安価です。これは亜鉛添加によりニッケル使用量を削減できるためです。
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用途別の選定指針として、装飾性と加工性を重視する場合は洋白、耐食性と耐海水性を重視する場合は白銅を選択するのが適切です。電子部品では導電率とコストのバランスから洋白が、海洋環境では確実な耐食性から白銅が選ばれます。