電着 エポキシで防錆・耐食性を実現する

電着 エポキシ塗装は自動車業界から電子部品まで幅広く採用される下地塗装技術です。複雑な形状にも均一に施工でき、高い防錆性と耐食性を持つこの技術について、実務的な活用方法や素材別の施工ポイントを詳しく解説します。あなたの製品には最適な塗装ソリューションですか?

電着 エポキシの基本と防錆性能

電着 エポキシ塗装の概要
電気を利用した塗装メカニズム

水に分散させた電着塗料に導電性を持つ被塗物を浸漬し、被塗物と電極間に直流電流を流すことで、塗料の膜成分が電気を帯びて製品に電気的に接着します。電極付近で塗料が化学反応を起こし、不溶性の樹脂ポリマーへと変化し、複雑な形状や細部にもピンホールなく均一な塗膜を形成するのが特徴です。

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電着 エポキシの防錆・耐食性能

エポキシ樹脂系の電着塗料は、1,000時間以上の塩水噴霧試験に合格する高い防錆性能を備えています。これはエポキシ樹脂がその分子構造により水分や酸素を通さない性質を持つためです。密着性に優れた厚い塗膜が形成され、耐食性・耐湿性が飛躍的に向上し、従来の塗装方法との比較で大きなアドバンテージを生みます。

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カチオン電着とアニオン電着の違い

被塗物が陰極(-)となる場合をカチオン電着、陽極(+)となる場合をアニオン電着と呼びます。カチオン電着は防錆性に優れ、自動車業界で大手メーカーの下地塗装として広く採用されています。一方、アニオン電着は小型電子部品の精密絶縁に適した特性を持ち、エッジ部の絶縁性が強化される利点があります。

電着 エポキシの理論的基礎と応用分野

 

電着塗装の本質は、電気化学反応を利用した塗装技術にあります。水溶性の電着塗料が含む陽イオン性の樹脂分子は、外部電場により被塗物の表面に移動し、そこで不溶化反応が生じます。この反応過程により、どれほど複雑な形状や隙間であっても、均一な厚さで塗膜が形成されるという他の塗装方法にはない大きな優位性が生まれます。

 

エポキシ樹脂を主成分とした電着塗料が優れている理由は、その化学構造にあります。ベンゼン環を含むエポキシ樹脂分子は、架橋密度が高い硬化膜を形成し、これが優れた防性と耐食性を実現するのです。特に自動車ボディの下地塗装では、このカチオン電着 エポキシが標準的に採用されており、その信頼性は実績によって証明されています。

 

応用分野は自動車業界にとどまりません。建材、スチール家具、家電製品、電子部品、農機具、鋳物など、導電性を持つあらゆる金属製品が対象となります。環境配慮の面でも、水を使用した塗装であるため大気汚染が少なく、火災のリスクが低く、鉛フリー処方で土壌汚染の心配がない点が、現代の製造業において重視される要件になっています。

 

電着 エポキシの施工工程と品質管理

電着塗装は単なる浸漬工程ではなく、複数の精密な工程を経て完成します。全体のプロセスは約1時間を要し、各段階での品質管理が最終的な塗膜性能に直結します。

 

まず前処理工程では、被塗物をハンガーに固定した後、複数槽を通じて油分や汚れを除去します。この段階で残存した汚染物質があると、後の塗装工程での密着不良や塗膜欠陥につながるため、時間をかけて丁寧に行われます。次に皮膜処理工程に移行し、製品表面にリン酸亜鉛皮膜を形成します。この金属皮膜層は、エポキシ樹脂との密着性を向上させ、さらなる耐食性向上に貢献する重要なステップです。

 

電着塗装工程では、処理済みの被塗物を電着槽に浸漬し、製品と槽内電極間に直流電圧を印加します。興味深い点として、電着塗料は純黒色ではなく、白みがかったグレー色をしています。この段階では電気化学反応により塗膜が形成されます。その後の回収工程では、余分な塗料分を専用の回収液でろ過し、純水で製品表面を洗浄します。この洗浄が不十分だと、焼付後に塩析白粉が現れることがあります。

 

最終段階の焼付工程では、形成された塗膜を加熱により乾燥・硬化させます。自然乾燥でもある程度の硬化は起こりますが、完全な硬化と機械的性質の発現には焼付が必須です。ここで製品種別に応じて焼成温度と時間を調整することで、所定の膜性能が達成されます。

 

電着 エポキシの性能特性と膜厚管理

電着塗装で形成されるエポキシ系塗膜は、極めて優れた複合特性を備えています。検出される固有体積抵抗値は10の16乗Ω・cmという非常に高い値であり、これが電子部品の絶縁塗装に採用される理由です。耐電圧性能も優れており、推奨膜厚20~40μmの範囲では、4kV程度の耐電圧を発現します。

 

耐熱性もまた重要な特性で、270℃(F種相当)の耐熱温度を持ち、自動車エンジンルーム内での使用にも対応できます。加熱時の分解挙動を測定すると、空気中での5%分解開始温度が270℃に達するため、一般的な自動車や電子機器の使用環境では劣化が極めて遅いことが保証されます。

 

膜厚管理は電着塗装品質を左右する重要な要素です。推奨膜厚は20~40μmとされていますが、複雑な形状を持つ製品ではエッジ部や細部での膜厚ばらつきが発生しやすくなります。特にアルミニウムや銅などの非鉄金属を被塗物とする場合、素材加工精度とエッジ部の形状が最終的な耐電圧性能に大きく影響するため、前工程での部品加工精度が重要になります。

 

電着 エポキシ塗料の成分構成と配合設計

エポキシカチオン電着塗料の構成は、一般的にF-1(顔料分散液)とF-2(エマルション溶液)の2液混合系となっています。この配合設計が塗料の性能を決定づける重要な要素です。

 

分散樹脂として使用されるのは、アミン変性エポキシ樹脂です。これはエポキシ樹脂とアミンを反応させ水溶化したもので、各塗料メーカーで合成される重要な核材料です。分子量や水和官能基量は各社で異なりますが、これらの違いが最終製品の粘度や塗着効率に影響します。

 

顔料構成には、着色顔料(酸化チタン、カーボンブラック)、体質顔料(沈降性硫酸バリウム、カオリン、タルク)、防錆顔料(モリブデン化合物、ランタノイド系)が含まれます。特に防錆顔料は、電着膜の長期的な耐食性を担う重要な成分であり、ランタノイド系防錆顔料は複雑な形状のエッジ部での防錆性向上に貢献します。

 

硬化触媒としてはスズ化合物やビスマス化合物が用いられ、焼付時の硬化反応速度を制御します。また、添加剤として消泡剤が必ず含まれます。電着塗料の製造・撹拌時に泡が立つのは避けられないため、塗膜欠陥を防ぐためにこの添加剤が不可欠なのです。

 

電着 エポキシ塗装のメリットと実装上の工夫

電着塗装の最大のメリットは、複雑な形状に対しても均一な塗膜を形成できる点です。被塗物を塗料中に浸すという原理的特性により、構造の内部、凹凸面、複雑な細部にまでムラなく塗装が可能になります。自動車の複雑な鋳造部品やエンジンブロックの細部隙間まで、完全に塗膜がカバーされるこの特性は、スプレー塗装では決して実現できません。

 

塗料利用効率も極めて高く、塗着効率が高いため塗料のロスがほとんどありません。大量生産体制では、加工ラインが自動化されているため、高い品質を安定して維持しながら大量生産が可能になります。このスケーラビリティと品質の両立は、大規模製造業にとって経済的に大きな意義があります。

 

環境配慮の観点からは、水系の塗装であるため有機溶剤がなく、VOC(揮発性有機化合物)排出がほぼゼロに近い点が特筆されます。火災リスクも低く、安全管理コストが削減される利点もあります。

 

実装上の工夫として、塗料槽の維持管理が重要です。電着槽内の塗料は一定期間使用するうちに徐々に劣化し、塗膜性能が低下します。そのため塗料液の定期的な分析、不溶物の除去、適切な添加剤補充が必要になります。色変更時には全量入れ替えが必要となるため、事前の生産計画が重要です。

 

日本電化工機のカチオン電着塗装ページ:エバポレータ等の防錆仕様製品への電着塗装適用例と留意事項を確認できます。塗膜剥離対策やメンテナンス方法が記載されています。
大北製作所の絶縁電着塗装ページ:精密電着塗装技術の詳細、特にエッジ部の耐電圧性能向上技術と複雑形状部品への適用事例が参考になります。

 

 


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