アルマイトの剥離 方法と対策を知る

アルミニウムに施されたアルマイト皮膜は、製造工程で不要になることがあります。苛性ソーダによる化学的剥離、サンドブラスト、切削加工といった複数の手法が存在しますが、それぞれの剥離方法にはメリットとデメリット、そして素材への影響が異なります。あなたの製品に最適なアルマイト剥離法は、どれなのでしょうか?

アルマイトの剥離 皮膜除去の選択肢

アルマイト剥離方法の比較
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化学的剥離

苛性ソーダ溶液による効率的な皮膜除去

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物理的剥離

サンドブラストと切削加工による選択

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部分剥離加工

精密な切削による限定的な皮膜除去

アルマイトの剥離が必要となる製造現場の実情

 

アルミニウムに施されたアルマイト皮膜は、優れた耐食性耐摩耗性を発揮する一方で、特定の製造工程では障害となることがあります。溶接作業では、アルマイト層が電気抵抗を高め接合品質を低下させるため、事前の剥離が必須です。また、特殊な化学加工や熱処理を施す場合、酸化皮膜の存在が加工精度を制限するため、剥離による素地露出が必要になります。さらに、古い製品のリフレッシュや部品の再利用時には、劣化したアルマイト層を一度完全に除去し、新たな保護層を施す工程が経済的かつ環境的に有効な手段となります。金属加工現場では、これらのシーンが日常的に発生するため、最適な剥離法の選択が生産効率と品質管理に直結します。

 

アルマイトの剥離における苛性ソーダ化学処理のメカニズム

苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)溶液を用いたアルマイト剥離は、金属加工業界で最も一般的な方法です。約50℃に加温した苛性ソーダ液に部品を浸すことで、酸化アルミニウム皮膜が化学的に溶解します。この手法の大きな利点は、複雑な形状の製品であっても、溶液が接触する全ての表面を均一に剥離できる点にあります。針金やめっき用治具といった頻繁に再処理される部品は、この方法で何度も活用されています。しかし重要な留意点として、アルマイト皮膜はアルミニウム素材に浸透するように形成されているため、剥離時に素材自体も微量に溶解し、部品が痩せていきます。特に寸法公差が厳しい製品では、繰り返し剥離することで公差ハズレが発生するリスクがあります。鋳造品の場合、一度の剥離でも表面荒れが著しく進むため、再処理の際には追加の研磨工程が必要になることもあります。

 

三和鍍金 - アルマイトの剥離方法に関する詳しい解説と剥離後の再処理についての情報が記載されています

アルマイトの剥離におけるサンドブラスト処理のコントロール要因

物理的な削除手段として採用されるサンドブラスト法は、高速で砂粒を投射してアルマイト皮膜を機械的に除去します。この方法により表面は梨地状の仕上がりになり、その後の塗装や再加工において塗膜の密着性を向上させるアンカー効果が得られます。ただし、サンドブラストには重要な制限があります。細かい穴や隙間の内部に残存したアルマイト皮膜は、投射剤が到達しないため完全には除去できません。そのため、再度のアルマイト処理が必要な場合には、サンドブラスト後に苛性ソーダ処理を追加で実施して、深部の皮膜を化学的に剥離する必要があります。さらに注意すべき点として、投射剤の種類によって梨地の粗さが変わり、硬い投射材を使用した場合、粒子がアルミニウム表面に突き刺さって残留することがあります。このような残留物は、エアーブローや水洗いでは除去困難なため、専門的な後処理が求められます。

 

小池テクノ - アルマイト剥離方法の詳細比較と各手法の短所についての実践的情報

アルマイトの剥離における切削加工による部分対応の実践的活用

切削加工を用いた部分的なアルマイト剥離は、特定領域だけの皮膜除去が必要な場面で活躍します。電気的接地が必要な電気部品では、通電性を確保するため限定的な露地部を設ける必要があり、切削による精密な除去が最適です。製品に複数色のアルマイトを施したい場合、一色目を全面処理してから、二色目を施す領域のみを切削で皮膜と素材を除去し、その部分に異色のアルマイトを施すといった多段階加工も可能になります。興味深い事例として、アルミニウム製の会社表札看板では、緑色のアルマイト全面処理後に社名文字部分を切削で除去し、その切削部に無色のアルマイトを施すことで、緑色の文字浮き出し効果を実現しています。傷のついたアルマイト製品でも、傷部分のみを切削除去して部分再処理する方法があります。ただし、多くのアルマイト業者が部分処理を困難と判断するのは、電気めっきと異なり通電用の接点確保が複雑になるためです。技術力を有する業者なら、創意工夫によってこうした高難度な部分剥離と部分再処理を実現できます。

 

アルマイトの剥離後に発生する素材劣化と表面状態の管理課題

アルマイト皮膜を剥離する際の最大の課題は、アルミニウム素材自体への影響です。苛性ソーダによる化学剥離を繰り返すたびに、素材表面は徐々に荒れていきます。特に鋳造品では、単一回の剥離でも著しい面荒れが生じます。この問題を解決するため、公差管理が重要な寸法品では、剥離前にマスキング処理を行う方法が用いられます。保護すべき領域にマスキング材を貼付してから苛性ソーダに浸漬し、その後マスキングを付けたまま新しいアルマイト皮膜を形成することで、元の寸法を維持することができます。ただし、マスキングにも限界があり、複雑な形状では完全な保護が困難です。あるいは、剥離後に研磨工程を挿入して表面粗さを調整し、その上で新規アルマイト処理を施す方法もあります。長期間の運用を考慮した部品管理では、剥離可能な総回数を見積もった上で、交換時期を計画することが品質と経済性のバランスを保つ鍵となります。

 

アルマイト皮膜の剥離は、適切な方法選択と素材への影響を理解することが不可欠です。苛性ソーダ化学処理は最も一般的で複雑形状に対応しますが、素材痩せのリスクがあります。サンドブラスト法は塗装下地として有効ですが、細部への対応が限定的です。切削加工による部分剥離は高度な技術を要しますが、複数色処理や精密な領域制御が可能です。これらの手法を組み合わせ、製品特性と用途に最適なアプローチを選択することで、効率的で高品質な金属加工を実現できます。

 

 


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