CFRP成形方法と樹脂硬化の基礎技術

自動車から航空宇宙産業まで幅広く活用されるCFRP成形。オートクレーブ成形やRTM成形などの代表的な手法から、プリプレグの扱い方、樹脂硬化のポイントまで、金属加工従事者が押さえておくべき成形方法の選定基準とは?

CFRP成形方法の樹脂硬化技術

CFRP成形の主要手法
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オートクレーブ成形による高品質製造

圧力釜を使用した高精度な成形方法。プリプレグの積層から樹脂硬化まで、航空宇宙分野で最も信頼される製法

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RTM成形による量産対応

金型内への樹脂注入で大規模部品を効率生産。自動車業界での採用実績が豊富

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プレス成形による短サイクル化

プリプレグやSMC基材を金型で加圧硬化。成形時間の大幅な短縮が可能

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引抜成形による連続製造

ロッド状やパイプ状製品に最適。液状樹脂を含浸させた炭素繊維を連続で金型に引き込む方式

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フィラメントワインディング成形

マンドレルへの巻き付け方式。チューブやタンク形状の高強度部品製造に適している

CFRP成形方法における樹脂硬化の役割と重要性

 

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の成形方法は、最終製品の性能を決定する最も重要な工程です。樹脂硬化プロセスは単なる最後の工程ではなく、繊維と樹脂の一体化を実現し、強度・剛性・耐久性といった機械特性を最大限に引き出す重要な役割を担っています。

 

オートクレーブ成形では、プリプレグを積層した後、加熱・加圧・真空引きを組み合わせながら樹脂を硬化させます。この時、層間に空気が残らないようにする層間圧の管理が極めて重要です。樹脂硬化中に発生したボイド(空洞)は成形品の強度低下に直結するため、真空吸引による空気排除は必須の処理となります。昇温から降温まで含めて約1~8時間程度の時間が必要となり、製造コストは高くなりますが、このプロセスにより高品質な成形品が実現されるのです。

 

各成形方法における樹脂硬化条件は異なります。RTM成形では金型内への樹脂注入速度と硬化温度の管理が、プレス成形では加圧と加熱のタイミングが、引抜成形では金型通過時間と温度プロファイルが、それぞれ成形品品質を左右する重要な要因となります。金属加工からCFRP成形に転換する技術者にとって、これら硬化条件の微妙な調整が習得すべき重要なスキルです。

 

プリプレグ積層工程での樹脂含侵と硬化準備

プリプレグはあらかじめ炭素繊維に樹脂を含侵させたシート状の中間材料であり、CFRP成形の効率性と品質を大きく向上させます。プリプレグの保管管理が樹脂硬化品質に直接影響することは、多くの成形従事者が見落としがちな重要なポイントです。

 

プリプレグを所定の形状に裁断し、設計された位置と方向に必要枚数を積層する際、層間に空気が残らないようにすることが極めて重要です。特に複雑な曲面を成形する場合、ドレーピング(繰り出し方向の調整)を適切に行わないと、樹脂が均等に流動せず、硬化後のボイド発生につながります。オートクレーブ成形では、積層後にフィルムバックで覆い、内包された空気を吸引しながら型への密着性を高める工程が必須です。この事前処理により、その後の加熱・加圧・真空引きによる樹脂硬化がより効果的に進行し、最終的な成形品の品質が劇的に向上します。

 

プリプレグの温度管理も重要です。樹脂が既に含侵されているため、室温での長期保管による樹脂の硬化促進を防ぐため、一般的に冷蔵保管(5℃以下)が推奨されています。成形の直前に室温に戻す時間を十分に確保しないと、プリプレグが冷たいまま積層され、樹脂流動性が低下して硬化ムラが生じるリスクがあります。

 

RTM成形方法における樹脂注入と硬化条件の最適化

RTM(レジントランスファーモールディング)成形は、プリフォームと呼ばれる炭素繊維の予備成形体を金型内に配置し、液状の樹脂を高圧で注入して硬化させる方法です。この成形方法は自動車業界での大量生産に適しており、オートクレーブ成形に比べてコスト効率に優れています。しかし、樹脂の流動制御が成形品の品質を大きく左右するため、緻密な工程管理が必要です。

 

樹脂と硬化剤を混合した液状の樹脂を、所定の圧力で金型内に注入する際、繊維間への均等な樹脂流動が最重要です。樹脂の粘度が高すぎると充填不足が、低すぎるとボイド発生が起こりやすくなります。また、流動フロント(樹脂が流れ込む前線)の進行速度が不均等になると、部分的に硬化が始まって、完全に硬化しない領域が生じるリスクがあります。

 

加熱硬化条件の設定も重要です。樹脂の種類によって異なりますが、一般的には60~100℃程度の温度で数十分から数時間の硬化時間が必要です。RTM成形では金型そのものが加熱源となるため、金型温度の均等性確保が欠かせません。温度分布が不均等だと、成形品の一部で硬化が遅れたり、逆に過度に進行したりして、機械特性のばらつきが生じます。実際の生産現場では、複数の温度センサーを配置し、金型の加熱均等性を常時監視することが必須の実務的な対策となっています。

 

プレス成形における加圧加熱と樹脂硬化の同時進行

プレス成形は、プリプレグやSMC基材を金型内に配置し、プレス機によって加圧しながら樹脂を硬化させる方法です。オートクレーブ成形に比べて成形サイクルが大幅に短縮されるため、大量生産に適した成形方法として自動車部品などに広く採用されています。この成形方法の特徴は、加圧と加熱がほぼ同時に進行することであり、樹脂の流動と硬化を精密に制御する必要があります。

 

加圧力の設定はプレス成形の成否を左右する重要な要素です。加圧力が不足すると、繊維と樹脂の密着性が低下し、機械特性の低下やボイド発生につながります。一方、過度な加圧は樹脂が型から溢れ出すフラッシュを増加させ、成形品の寸法精度が損なわれます。一般的には、樹脂成分が適切に流動して、繊維間に均等に充填される圧力範囲の設定が必要です。この圧力範囲は使用する樹脂の粘度、繊維の種類や配向、そして目的とする成形品の厚さによって異なります。

 

加熱温度と加熱時間の組み合わせも、プレス成形の樹脂硬化において重要な制御パラメータです。通常、室温から100~150℃程度の温度に昇温し、その温度を保持したまま樹脂を硬化させます。昇温速度が速すぎると、樹脂の流動が不十分なまま硬化が始まり、寸法精度の低下や強度不足が生じるリスクがあります。逆に、昇温速度が遅すぎると、プレス機の稼働効率が低下し、成形コストが増加します。実際の生産では、樹脂の粘度-温度特性(VT曲線)に基づいて、昇温プロフィールを最適化することが、成形品質と生産効率のバランスを取る鍵となります。

 

金型設計と樹脂硬化の相互関係における実践的ポイント

CFRP成形で最も見落とされやすい重要な視点として、金型設計が樹脂硬化プロセスに与える影響が挙げられます。金属加工の経験を持つ技術者は、金型を単なる成形形状を定義する治具と考えることが多いのですが、CFRP成形では金型の役割がより複雑です。

 

金型の熱伝導性と温度均等性は、樹脂硬化の均等性を直接左右します。熱伝導率が低い金型を使用すると、中央部と周辺部の温度差が大きくなり、部位によって硬化速度が異なるという問題が発生します。これにより、硬化の早い部位と遅い部位で、樹脂の架橋密度に差が生じ、最終的な機械特性のばらつきを招きます。現代のCFRP成形では、金型材料(通常は鋼またはアルミ合金)の選択から、加熱用のヒーターやサーモカップルの配置、さらには金型内部の冷却回路設計まで、すべてが樹脂硬化プロセスの最適化に関連しています。

 

離型性の確保も重要な設計要素です。樹脂が金型に強く付着すると、成形品の取り出し時に繊維が破損したり、樹脂がはがれたりして、成形品の表面品質が損なわれます。離型剤の塗布により対応することが一般的ですが、離型剤の選択と塗布方法が樹脂硬化の進行に影響を与える場合があります。従来の金属加工では考慮する必要がない、この微妙な相互作用が、CFRP成形の習得を難しくしている要因の一つです。

 

また、成形品の複雑さが増すほど、金型内の樹脂流動が複雑になり、樹脂硬化の最適化がより困難になります。特に、複数の流動フロントが衝突する部位や、細い凹部へ樹脂が充填される部位では、局所的に硬化が加速または遅延する可能性があります。このような課題に対応するため、現代の生産現場では、成形シミュレーション技術を活用して、樹脂流動と硬化挙動を事前に予測し、金型設計を最適化する手法が採用されるようになっています。

 

樹脂硬化の制御は、単なる時間とコストの問題ではなく、最終的な成形品の信頼性と寿命を左右する重要な要素です。金型と成形パラメータの関係を理解することで、初めてCFRP成形の真の価値が実現されるのです。

 

成形方法選定の参考となる信頼性の高い情報源としては、以下のリソースが有用です。

 

複合材料全般の基礎知識と成形技術の最新情報。
https://www.m-chemical.co.jp/carbon-fiber/about/molding/
CFRP成形方法の詳細な解説と工程別ポイント。
https://www.carbonmagic.com/cfrp/molding.html

 

 


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