鉄骨構造の種類と特徴

建設業界で幅広く使用される鉄骨構造にはどのような種類があり、それぞれどんな特徴を持っているのでしょうか?

鉄骨構造の種類

鉄骨構造の主要分類
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重量鉄骨構造

鋼材厚さ6mm以上の大型建築物向け

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軽量鉄骨構造

鋼材厚さ6mm未満の小規模建築物向け

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構造形式

ラーメン・ブレース・トラス構造

鉄骨構造の重量による分類

鉄骨構造は使用する鋼材の厚さによって重量鉄骨構造と軽量鉄骨構造の2つに大別されます 。この分類基準は鋼材の厚さが6mmを境界としており、建築物の規模や用途に大きく影響します 。
参考)鉄骨構造 - Wikipedia

 

重量鉄骨構造は厚さ6mm以上の鋼材を使用し、高層ビル、大型マンション、工場、倉庫などの大規模建築物に採用されています 。基礎工事や地盤改良により大きな投資が必要ですが、強度が高いため柱の本数を少なくでき、広い内部空間を確保できる特徴があります 。
参考)鉄骨造(S造)とは?用いられる材料の種類とメリット・デメリッ…

 

軽量鉄骨構造は厚さ6mm未満の鋼材を使用し、主に一般住宅、小規模なアパート、2〜3階建ての建物に利用されます 。重量鉄骨と比較して建設コストが安く、建物全体が軽量のため地盤改良工事を省略できる場合もあります 。
参考)鉄骨造とは?木造や鉄筋コンクリート造との違いも解説|暮らしガ…

 

鉄骨構造のラーメン構造による特徴

ラーメン構造は鉄骨構造の中で最も一般的な構造形式であり、柱と梁を剛接合して長方形の枠組みを形成します 。ラーメンという名称はドイツ語の「Rahmen(枠・額縁)」に由来し、筋交いを必要としない構造的特徴があります 。
参考)ラーメン構造とは?メリット・デメリットから壁式構造との見分け…

 

この構造形式は重量鉄骨造における主要な工法として位置づけられ、高層マンションや大型施設で広く採用されています 。柱と梁の接合部が一体化することで、建物全体の強度を確保し、横揺れの地震や強風による水平荷重に高い耐性を示します 。
参考)鉄骨構造

 

ラーメン構造の最大の利点は間取りの自由度の高さです 。耐力壁や筋交いが不要なため、壁面に大きな開口部を設けたり、ガラス張りの建物も建設可能で、将来的なリフォームや改修工事も行いやすい特徴があります 。
参考)ラーメン構造とは?メリットや耐震性について、わかりやすく解説…

 

鉄骨構造のブレース構造による耐震性

ブレース構造は軽量鉄骨構造で多用される構造形式で、柱と梁の間に斜めの補強材(ブレース)を配置することで建物の強度を高めます 。このX型の筋交いは「鉄骨軸組工法」や「ブレース工法」とも呼ばれ、木造軸組構造の鉄骨版として理解されています 。
参考)鉄骨構造(S造)とは?柱や梁などの骨組みに鋼鉄部材を使用した…

 

ブレース構造の最大の特徴は、斜めに配置されたブレースが水平方向からの外力を効率的に受け止めることです 。地震や風圧による横からの力に対して、ブレースが荷重を分散し、主要構造材である柱や梁への負担を軽減します 。
参考)鉄骨造におけるブレース構造とは?ラーメン構造や壁式構造との違…

 

この構造形式は取り付けが簡単で、ボルト接合により少ない工期で合理的に強度向上を実現できる利点があります 。ただし、ブレースの配置により間取りの制約が生じるため、リフォーム時の制限や解体時の手数増加というデメリットも存在します 。
参考)鉄骨の種類もいろいろ 解体手順と費用について

 

鉄骨構造のトラス構造による大スパン対応

トラス構造は鉄骨部材を三角形ユニットとして組み合わせ、荷重を効率的に分散させる高度な構造形式です 。体育館、駅舎、大型スタジアム、橋梁など、大規模で長いスパンが必要な建築物に特化して採用されています 。
参考)鉄骨造トラス構造の設計原理と活用事例

 

この構造の基本原理は、各部材が引張または圧縮の軸力のみを負担することです 。三角形の幾何学的安定性により、外力を受けても変形しにくく、節点部をピン接合とすることで曲げモーメントやせん断力が生じない構造特性があります 。
参考)【建築構造】トラス構造ってなに?|一級建築士の備忘録|ひろ

 

トラス構造は細い部材でも大きなスパンを支えることができ、軽量性と強度を兼ね備えた効率的な構造システムです 。しかし、接合部が複雑になり施工手間がかかるため、他の構造形式と比較して採用される機会は限定的です 。

鉄骨構造に使用される鋼材断面形状の種類

鉄骨構造で使用される鋼材は、引張強度は高いものの曲げや圧縮強度が相対的に低いため、様々な断面形状に加工して強度を向上させています 。中央から遠い位置に断面を集中させ、想定する方向への曲げに対して断面二次モーメントを大きくする設計思想が採用されています 。
参考)H形鋼 - 普通鋼電炉工業会

 

H形鋼は最も多用される鋼材で、引張、曲げ、圧縮のいずれの応力にも優れた耐性を示すバランスの良好な特性があります 。断面がアルファベットのHに似た形状で、建築分野で使用される鋼材の約70%を占める主力製品です 。
参考)建設現場で使われるH形鋼とは

 

角形鋼管は断面がボックス状になった鋼材で、X-Y方向で同等の断面性能を示すため柱材として多用されています 。閉鎖断面構造により曲げ捩れ変形や局部座屈に対して高い抵抗力を持ち、冷間成形による製造過程で角部の材質硬化が生じる特徴があります 。
参考)一級建築士独学diary 構造 ~鉄骨造(S造)角形鋼管柱~…

 

円形鋼管、山形鋼(アングル)、溝形鋼(チャンネル)、リップ溝形鋼(C形鋼)など、用途に応じた多様な断面形状が採用され、それぞれ特有の構造特性と適用範囲を持っています 。
参考)鉄骨はどんな材料?3分でわかる鉄骨材料の性質、種類、耐火被覆…