大気汚染物質一覧と金属加工業における影響

大気汚染物質の種類と特徴を体系的に解説し、金属加工業界が直面する環境課題と対策について詳しく紹介します。作業環境の改善に向けて何が重要なのでしょうか?

大気汚染物質一覧と分類

大気汚染物質の主要な分類と特徴
🏭
ばい煙発生施設からの排出物質

硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんなど工場や焼却炉から発生する主要汚染物質

⚠️
優先取組物質23種類

特に健康被害リスクが高く規制強化された有害大気汚染物質群

🚗
自動車排出ガス由来汚染物質

一酸化炭素、炭化水素、鉛化合物など交通由来の大気汚染物質

現行の大気汚染防止法では、人の健康や生活環境に悪影響を与える物質を規制対象として分類している。規制対象となる大気汚染物質は、ばい煙(硫黄酸化物、ばいじん、有害物質5種)、粉じん(一般粉じん、特定粉じん)、自動車排出ガス、特定物質(28物質)、有害大気汚染物質(248種類)、揮発性有機化合物に大別される。
参考)大気汚染物質の種類|大気汚染の原因|大気汚染の現状と対策|大…

 

これらの汚染物質は、工場や事業場、自動車などの人間活動から発生するものが多いが、火山噴火など自然由来のものも存在する。近年では、隣国からの大気汚染物質の流入による越境大気汚染も深刻な問題となっている。
参考)大気汚染物質について|東京都福生市公式ホームページ

 

大気汚染物質の基本的な種類と発生源

大気汚染物質は発生源によって自然起源と人為起源に分けられる。自然起源の代表的なものとしては、火山排出物、森林火災、花粉の飛散、砂塵・黄砂などがある。
参考)https://www.env.go.jp/earth/coop/coop/document/02-apctmj1/02-apctmj1-012.pdf

 

人為起源の大気汚染物質として最も重要なのは、化石燃料の燃焼による排出物である。二酸化硫黄(SO2)は硫黄分を含む石炭や石油などの化石燃料が燃えると発生し、大気中に存在できる時間が長いため広範囲に広がりやすい特徴がある。これらの物質は酸性雨の原因となり、人体への影響としてぜんそくを引き起こす原因になると指摘されている。
参考)大気汚染の種類は?発生の原因や環境問題について解説 - GR…

 

窒素酸化物(NOx)は空気中の窒素が酸化して生成され、それ自体が有害ガスとして知られている。また、二酸化窒素は酸性雨の原因物質やオゾンなどに変化することもある。

大気汚染物質の粒子状物質と健康影響

粒子状物質(PM)は固体および液体の粒を指し、工場などの煙から出るばいじんや鉱物の堆積場から発生する粉じん、ディーゼル車の排出ガスに含まれる黒鉛などが含まれる。自然に起こる土ぼこりによるものも粒子状物質に含まれる。
参考)大気汚染物質とは?種類や特徴、人に及ぼす影響について知ろう

 

微小粒子状物質(PM2.5)は、大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5μm以下の非常に小さな粒子である。その成分には、炭素成分、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩のほか、ケイ素、ナトリウム、アルミニウムなどの無機元素が含まれる。
参考)PM2.5(微小粒子状物質)について

 

PM2.5は粒子の大きさが非常に小さいため肺の奥深くまで入りやすく、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患のリスクの上昇が懸念される。また、肺がんのリスクの上昇や、循環器系への影響も懸念されている。

大気汚染物質の有害大気汚染物質と優先取組物質

有害大気汚染物質については、該当する可能性のある物質として248種類、そのうち特に優先的に対策に取り組むべき物質(優先取組物質)として23種類がリストアップされている。
参考)有害大気汚染物質の対策の推進

 

優先取組物質には、アクリロニトリル、アセトアルデヒド、塩化ビニルモノマー、塩化メチル、クロム及び三価クロム化合物、六価クロム化合物、クロロホルム、酸化エチレン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、水銀及びその化合物、ダイオキシン類、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トルエン、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、1,3-ブタジエン、ベリリウム及びその化合物、ベンゼン、ベンゾ[a]ピレン、ホルムアルデヒド、マンガン及びその化合物が指定されている。
これらの物質は発がん性や生殖毒性があるため健康リスクが高く、厳しく規制されている。特にベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンは指定物質として特別な管理が求められている。
参考)大気汚染の原因は?汚染物質の種類や与える影響、企業ができる対…

 

大気汚染物質の残留性有機汚染物質と金属加工業への影響

残留性有機汚染物質(POPs)は、動植物の体内または自然環境中に長期にわたって存在・蓄積し、循環して人間に有害な化学物質として定義される。これらは難分解性、生物蓄積性、半揮発性、高毒性という特性を持つ。
参考)https://jp.cirs-group.com/regulation-of-persistent-organic-pollutants-pops

 

金属の製錬と精製は、二酸化硫黄、窒素酸化物、粒子状物質などの有害な汚染物質を大気中に放出する。これらの汚染物質は呼吸器疾患や酸性雨を引き起こす可能性がある。
参考)金属加工が環境に与える影響は何ですか?主要な課題と持続可能な…

 

金属加工業においては、切削油やその廃液、スラッジが適切に処理されない場合、水質・土壌・大気汚染を引き起こし、有害物質の含有やオイルミストの発生が作業環境の悪化を招く。金属加工時に発生するオイルミストは、人体・作業環境・地球環境に悪影響を与える重要な課題となっている。
参考)切削油の環境問題と対策の動向を解説

 

大気汚染物質の不完全燃焼による生成メカニズム

ダイオキシン類は、炭素・酸素・水素・塩素が熱せられる過程で発生する可能性がある。不完全燃焼で生じた物質に塩素が結合するとダイオキシンが生じるため、完全燃焼を維持することが重要である。
参考)http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_25/

 

ごみ焼却炉から排出されるダイオキシンは、ごみの焼却過程で発生する排ガスから再合成される場合がある。再合成が起こるのは、煤塵(ばいじん)を含む排ガスが冷やされる部分(冷却過程)で、この際に含まれる「飛灰」と呼ばれる煤塵が再合成に直接関係している。
現在のゴミ処理施設にある廃棄物焼却炉は、完全燃焼に近づけるため800度以上の高温で処理を行っている。ダイオキシン類の排出抑制を図るためには、完全燃焼の徹底による発生抑制・分解、排ガスの冷却による再生成の抑制、高度な排ガス処理による除去が基本的な対策となる。
参考)https://www.niph.go.jp/journal/data/47-2/199847020011.pdf