シャルピーとアイゾットの違いを徹底解説

金属加工現場で重要な衝撃試験であるシャルピー衝撃試験とアイゾット衝撃試験には、試験片固定方法や打撃位置などで明確な違いがあります。それぞれの特徴と使い分けのポイントを詳しく解説しますが、どちらを選ぶべきでしょうか?

シャルピーとアイゾットの違い

シャルピーとアイゾット衝撃試験の基本構造
試験片固定方法の違い

シャルピーは両端固定、アイゾットは片端固定

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ハンマー打撃方向

シャルピーはノッチ反対側、アイゾットはノッチ側を打撃

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試験片形状と寸法

規格により異なる試験片サイズと配置

シャルピー衝撃試験の基本原理と特徴

シャルピー衝撃試験は、切り欠きのはいった角柱状の試験片に対して高速で衝撃を与えることで試験片を破壊し、破壊するために要したエネルギーと試験片の靭性を評価するための衝撃試験です 。この試験は、フランスの技術者ジョルジュ・シャルピーが考案した方法で、現在でも金属加工業界で最も重要な試験の一つとして位置づけられています 。
参考)シャルピー衝撃試験 - Wikipedia

 

シャルピー衝撃試験では、試験片の両端を支持し、試験片の中心をハンマーで打撃させる方法を採用しています 。ノッチの反対側を打撃することで、応力集中を効率的に発生させ、材料の靭性を評価できます 。アンビル(試験片台)に試験片を置くだけなので効率よく試験が可能であり、衝撃試験の中でも主流として採用されています 。
参考)衝撃試験(シャルピー/アイゾット)とは

 

JIS(ISO)規格推奨の打撃方向として、シャルピーではノッチが入った反対側を打撃し、対象規格はJIS K 7111-1、ISO 179-1、ASTM D6110となっています 。試験片の破壊に要したエネルギー[J]を切欠部の原断面積[cm²]で割ったものをシャルピー衝撃値[J/cm²]といい、靭性を表すのに用いられています 。

アイゾット衝撃試験の構造と測定方法

アイゾット衝撃試験は、衝撃に対する強さ(靭性)を評価する衝撃試験の方法で、かつての技術者の名に由来して命名されました 。試験片の片端を固定し、反対側をハンマーで打撃させる方法を採用しており、ノッチ側を打撃面とします 。
参考)アイゾット衝撃試験 - Wikipedia

 

この試験の特徴として、シャルピーに比べ試験手順が多く、作業工数が多いという点があげられます 。1999年8月からJIS規格は改定されておらず、一部の自動車メーカーでは現在もアイゾットを採用しており、取引のある部品・材料メーカーなどではアイゾット試験を行っています 。
アイゾット衝撃試験では、振り子状のハンマを試料に打ち付け、試料衝突後のハンマ振り上がり角度から吸収エネルギー[J]を測定し、アイゾット衝撃強さ[kJ/m²]を求めます 。試験値は試験される試料の巾で破壊に要したエネルギーを割って求めるのでJ/mとなります 。合成樹脂の機械的性能の評価によく用いられています 。
参考)衝撃試験 アイゾット衝撃強さ

 

シャルピーとアイゾットの試験片固定方法の相違点

シャルピー衝撃試験とアイゾット衝撃試験では、試験片の固定方法に根本的な違いがあります 。シャルピー衝撃試験では試験片の両端を固定するのに対し、アイゾット衝撃試験では片端のみを固定します 。この固定方法の違いが、試験結果に大きな影響を与えています。
参考)シャルピー衝撃試験のJIS規格(金属材料の試験片や試験方法)…

 

片端固定のアイゾット衝撃試験の方が、固定時の締付による影響が結果に現れるため、値のバラツキが大きい傾向にあります 。シャルピー試験では試験片の左右の端を固定し中央に打撃を与える一方、アイゾット衝撃試験では試験片の一端を固定し、もう一端に打撃を与えます 。
参考)シャルピー衝撃試験による破面の定量評価

 

ハンマーの打撃位置も異なっており、シャルピー衝撃試験では、ノッチの反対側中央面に打撃を与えますが、アイゾット衝撃試験の打撃位置は試験片の端かつノッチ側です 。この違いにより、それぞれ異なる応力状態が発生し、材料評価の観点も変わってきます。

シャルピー衝撃試験における破面解析の重要性

シャルピー衝撃試験では、吸収エネルギー、シャルピー衝撃値、脆性破面率、横膨出量、遷移温度といった衝撃特性値を算出することができます 。破面解析は材料の靭性評価において極めて重要な要素であり、破面の様相から材料の破壊メカニズムを詳細に解明できます。
参考)【簡単解説】金属の低温脆性とシャルピー衝撃試験について │ …

 

温度によって破壊形態が変化する特性があり、高温域では延性破壊となり破面に多数のディンプル(くぼみ)が見られます 。一方、低温域では脆性破壊となり平坦で光沢のある破面(へき開破壊)が多くなります 。シャルピー衝撃試験を行えば、脆性破壊に切り替わる遷移温度(脆性遷移温度)を明確にでき、材料選定の重要な指標となります 。
参考)なぜ必要?シャルピー衝撃試験で分かる金属材料の強さと弱点

 

衝撃特性(衝撃強度)の評価には、破面解析によって、温度に対する破面様相の変化を詳細に観察することが不可欠です 。破断面には徐々にリバーパターンが混在し、最終的にはリバーパターンのみが形成される過程を解析することで、材料の破壊抵抗性を総合的に評価できます 。
参考)破面解析・フラクトグラフィー|種類や見方 - 株式会社神戸工…

 

アイゾット試験における金属加工業界での実用性評価

アイゾット衝撃試験は金属加工業界において、特定の用途や業界標準において重要な役割を果たしています。一部の自動車メーカーでは現在もアイゾットを採用しており、取引のある部品・材料メーカーなどではアイゾット試験を行っています 。これは長年の実績と信頼性に基づく選択といえるでしょう。
アイゾット衝撃試験では、低温・高温での試験が可能であり 、プラスチックなどの材料は温度によって衝撃強さが異なるため、幅広い温度範囲での評価が重要です 。試験片を破壊した後のハンマーの動きが重要になり、破壊した後に高く振り上がった場合は、試験片が衝撃をあまり吸収できなかったことを示します 。
参考)衝撃試験とは?主な目的や試験の種類・方法について|品質検査.…

 

振り子式の打撃ハンマーを用いて、ハンマーの持ち上げ角度と、試験後のハンマーの振り上がり角度から計算する方法により 、材料の衝撃吸収能力を定量的に評価できます。金属やプラスチックなどさまざまな材料で実施され、材料選定や品質管理において重要な判定基準となっています 。