製造リードタイムの計算は、生産工程の構成要素を洗い出して合算することで求められます。基本的な計算式は以下の通りです:
製造リードタイム = 加工時間 + 停滞時間
さらに詳細に分解すると。
製造リードタイム = 加工主作業時間 + 加工付随作業時間 + 待ち時間 + 後処理時間 + 運搬時間
この計算式において、加工時間は実際に製品に付加価値を与える作業時間を指し、停滞時間は待ち時間や運搬時間などの付加価値を生まない時間を含みます。製造業では、この標準時間を基に算出するリードタイム(基準日程)を生産計画のスケジューリングに活用しています。
フォワード法は、製造プロセスの開始日を基準として、各工程の所要時間を順次積み上げて計算する方法です。着手日を起点として工程ごとにかかる日数を明らかにし、完了までの全体的な日数を計算します。
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具体的な計算例として、製造の第1工程が2日間、第2工程が5日間かかる場合、並行して着手できる工程は重複してカウントします。例えば工程②③を並行して実施できる場合、全体のリードタイムは2日(工程1)+ 5日(工程2と3が含まれる)= 7日となります。
フォワード法の特徴は、第1工程から順に計画していくため、工程1の開始日を早められることです。並行して作業が必要な場合や、急ぎの納品依頼があったときなどに適しています。各工程ごとに進行状況を把握しやすく、スケジュール管理がしやすいというメリットがあります。
参考)生産リードタイムの計算方法と短縮のポイント - MENTEN…
バックワード法は、納品日を基準にして逆算し、各工程の開始日を割り出す方法です。納期から逆算して製造開始日を決定する計算法として活用されます。
この方法は、顧客に対する納期遵守を重視したい場合に特に有効です。完成日(納期)から逆算して各工程の完了時期を設定し、最終的に製造開始日を決定します。リソースの最適配分と納期確実性の両立を図ることができる計算方法です。
生産プロセスが複雑ではなく「予測可能な製品」の場合にはフォワード法、顧客に対する「納期遵守」を重視したい場合はバックワード法といったように使い分けることが重要です。製造現場の特性や優先事項に応じて、適切な計算方法を選択する必要があります。
タクトタイムは「1つの製品を作るのにかける目安の時間」であり、製造リードタイム計算の重要な要素となります。計算式は以下の通りです:
参考)https://products.sint.co.jp/aisia-ad/blog/takt-time
タクトタイム = 1日の定時稼働時間 ÷ 1日の生産必要数
具体例として、稼働時間8時間、生産必要数が6,000個÷30日の場合。
8時間 ÷(6,000個 ÷ 30日)= タクトタイム144秒となります。
注意点として、定時稼働時間は休憩時間等を引いた実際の稼働時間を使用し、納期までの日数からは工場の非稼働日を引く必要があります。例えば稼働時間8時間のうち昼休憩が1時間あれば定時稼働時間は7時間となり、月間5日の非稼働日がある場合は納期までの日数は25日として計算します。
製造リードタイムの計算精度を向上させるため、在庫回転率を活用した独自の計算システムが注目されています。貸借対照表の棚卸資産項目を利用して在庫回転率を求め、そこから在庫回転期間を算出して当期の在庫日数を導き出します。
参考)適正な在庫量を保つ「製造リードタイム」の計算方法|在庫管理1…
この手法では、実際の在庫データと製造リードタイムを連動させることで、より現実的な計算結果を得ることができます。従来の工程積み上げ方式に加えて、財務データを活用した検証システムを構築することで、計算精度の向上と適正在庫管理の実現を両立できます。
製造現場における実績データと財務データの相関分析により、理論値と実績値の乖離を早期に発見し、計算モデルの継続的な改善を図ることが可能です。このアプローチにより、製造リードタイム計算の信頼性を大幅に向上させることができます。