光学顕微鏡は光の特性を利用して微細な物体を拡大観察する装置で、現在では15種類以上の豊富な観察方法が確立されています 。基本構成は対物レンズ、接眼レンズ、照明、光路の4つの要素から成り立っており、観察対象に応じて最適な種類を選択することが重要です 。金属加工分野では品質管理や不良解析において重要な役割を果たしており、製造業の生産性向上に不可欠な検査機器として位置づけられています 。
参考)15種類の光学顕微鏡とは?特徴と最適な用途から選定方法まで徹…
明視野観察は最も基本的な観察方法で、観察対象に照明を透過または反射させて観察する手法です 。光源からの光が試料を通過すると、対物レンズが像を拡大して接眼レンズまたはカメラに投影される仕組みです 。電源投入後、調光ダイヤルで明るさを調整し、眼幅・視度を調整してからサンプルをセットしてピントを合わせます 。
参考)顕微鏡の種類を知って、ミクロの世界の知識を深めよう
ランプの光は黄色みを帯びているため、色濃度変換フィルターを使用することで自然な色調に近づけることができます 。血液検査や病理検査などの分野で広く活用されており、染色した細胞や組織の観察に最適です 。ただし、透明や無色透明のサンプルはコントラストが得られにくいという制約があります 。
参考)顕微鏡で物体を拡大して観察できる仕組みとは?基本原理から詳し…
暗視野観察は観察対象に直接光を当てずに散乱光を利用する観察法で、微生物や細胞の観察、段差や凹凸の検出に効果的です 。斜めからの照明を利用してコントラストを強調し、微小な構造や輪郭、運動などを観察できるのが特徴です 。観察視野は暗くなりますが、微細な構造の輪郭がより鮮明に見える利点があります 。
位相差観察は光の「回折」と「干渉」を利用した観察法で、観察対象を染色する必要がなく生きたまま観察可能です 。透明な試料の位相差を利用してコントラストを高めた像を得ることができ、培養細胞の観察などに適しています 。暗視野観察とは異なり、位相差観察では透明・無色透明のサンプルでも鮮明な像を得ることができます 。
参考)https://www.activewave.co.jp/column/digital-microscope/what-is-brightfield-observation
偏光観察は偏光させた照明で試料を照らし、偏光特性によって生じるコントラストを利用した観察法です 。顕微鏡に2枚の偏光板を装着し、偏光の干渉を利用して複屈折性の存在する部分を明暗や色のコントラストに置換えて観察します 。岩石や鉱物などの結晶、高分子材料の観察、痛風検査などの医療分野でも活用されています 。
参考)https://evidentscientific.com/ja/learn/support/learn/02/029
蛍光観察は蛍光物質で標識した試料に特定波長の光を当て、発する蛍光を観察する方法です 。細胞内にあるDNAやRNAの観察、タンパク質の局在を可視化できる高度な観察技術です 。特定のタンパク質や遺伝子の局在を可視化できるため、生物学や医学分野の研究において重要な役割を果たしています 。
微分干渉観察は光が観察対象を透過した際に生じる光路差を利用した観察法で、明暗のコントラストによって細部を観察します 。試料の厚さや屈折率の差を利用して立体的な像を得ることができ、細胞の表面構造の観察に適しています 。無色透明の観察対象や細胞などの生体観察において、染色なしでも高いコントラストを得られるのが大きな特徴です 。
実体顕微鏡は双眼鏡のように左右の光路が別々に構成されており、両眼で同時に標本を見ることで立体的な観察が可能です 。昆虫の観察など、サンプルをそのまま観察する場合に便利で、対物レンズとステージまでの距離が長いため、観察しながら解剖などの作業も可能です 。鉱物の観察では試料を対物レンズの下に持ってきて、手で上下させてピントを合わせて観察します 。
参考)https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/mineral-rock-sirabekata/mineral44/epx-mineral/mineral-jittaikennbikyou/mineral-jittaikenbikyou.htm
正立型顕微鏡は標本を上方から観察するタイプで、一般的な生物顕微鏡の形態です 。半導体ウエハや電子部品などの表面構造の観察で主に使用され、観察対象が比較的小さい場合に適しています 。金属顕微鏡では対物レンズと同じ側に照明があり、標本から反射された光によって観察する落射照明方式を採用しています 。
参考)https://evidentscientific.com/ja/learn/microscope/terms/feature10
倒立型顕微鏡は試料を下側から観察する構造で、対物レンズはステージの下にあります 。正立顕微鏡と同じ観察姿勢となるように光軸は途中で反転される仕組みです 。ステージ上部のスペースが広く、重く大きなサンプル・ワークの観察が可能なため、金属組織の観察では試料作製の手間とコストが軽減できます 。同軸落射照明で対物レンズ内から試料を照明し、試料からの反射光を観察するため、研磨された金属組織・材料の表面観察や分析に適しています 。
参考)倒立顕微鏡|レイマー 顕微鏡オンラインショップ【公式】
光学顕微鏡の分解能は倍率ではなく対物レンズの開口数(NA)によって決まり、レイリーの式によって計算されます 。青色光では解像限界はおよそ0.2μm、赤色光では0.35μmとなり、UV光を用いると0.2μm以下の分解能を達成可能です 。開口数が高いほど分解能は向上しますが、乾燥系対物レンズの場合は最大で1.0、液浸系では最大約1.45となります 。
参考)https://evidentscientific.com/ja/learn/support/learn/03/045
有効倍率は対物レンズの開口数×500~1000の範囲とされ、この範囲を超えるとバカ拡大(無効倍率)となります 。人が肉眼で識別できる分解能は約0.1mmなので、限界分解能の0.2μmを観察するには適切な総合倍率が必要です 。総合倍率は対物レンズ倍率と接眼レンズ倍率の積で表され、例えば40倍の対物レンズと10倍の接眼レンズでは400倍の総合倍率となります 。
参考)「無効倍率(バカ倍率)」をご存じですか?|技術・事例|顕微鏡…
金属加工分野では光学顕微鏡が品質管理と不良解析の重要なツールとして活用されています 。表面構造や欠陥の詳細観察により、製造業における生産性向上に貢献し、微細な部品を顕微鏡下で組み立てる際にも使用されます 。半導体検査では半導体ウェハーの表面や微細構造の観察・検査に、電子部品検査ではICチップや電子基板の接続部や微細構造の検査に用いられます 。
参考)工業用顕微鏡|レイマー 顕微鏡オンラインショップ【公式】
金属材料検査では金属素材の表面組織・結晶構造等の検査が行われ、樹脂成型品検査ではプラスチック等成型品の状態確認・微細構造の検査に活用されます 。金属加工における検査方法の詳細(TECH-JOURNEY)によると、表面特性検査では光学顕微鏡・電子顕微鏡による表面構造や微細な傷の観察が重要な検査項目として位置づけられています 。組織観察では実体顕微鏡を使用してまず試料の状態を確認し、低倍での観察で大まかに確認した後、適切な倍率で詳細な情報を観察する手順が推奨されています 。