カムシャフトとクランクシャフトの違い

金属加工従事者必見のエンジン部品基礎知識。カムシャフトとクランクシャフトはどこが違うのか?構造や機能、加工方法まで詳しく解説。知っているようで知らないシャフト部品の秘密とは?

カムシャフトとクランクシャフトの違い

カムシャフトとクランクシャフトの基本的な違い
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カムシャフト

バルブの開閉を制御するエンジン部品

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クランクシャフト

ピストンの上下運動を回転運動に変換

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連動関係

タイミングベルトで回転を連動させる

エンジン内部において重要な役割を果たすカムシャフトとクランクシャフトは、金属加工従事者にとって理解必須の部品です 。カムシャフトはエンジンの吸気・排気バルブの開閉タイミングを制御する部品で、卵型のカム(凸部)がバルブを押し上げたり戻したりして吸排気サイクルを実現します 。一方、クランクシャフトはピストンの往復運動を回転運動に変換するエンジンの心臓部となる部品です 。
参考)クランクシャフトとは?カムシャフトとコンロッドの構造上の関係…

 

この2つのシャフトは異なる機能を持ちながらも、タイミングベルトやタイミングチェーンによって回転が連動し、4ストロークエンジンの正常な動作を支えています 。金属加工業界では、これらの部品の精密加工技術や外観検査技術が重要な技術分野となっています 。
参考)カムシャフトとバルブの開閉 - メカニズモ

 

カムシャフトの構造と機能

カムシャフトは「カム」と「シャフト」を組み合わせた部品で、直列4気筒エンジンの場合、ひとつのシャフトに4つのカムが組み合わされます 。カムは断面の形状が卵型をしており、突出している部分を「カムノーズ」または「カム山」、突出していない部分を「ベースサークル」と呼びます 。
参考)車にとって大切な部品、カムシャフトとは? 詳しい構造や交換費…

 

エンジンのバルブ開閉において、カムシャフトは吸気と排気のタイミングを決定する重要な役割を担います 。4ストロークサイクルエンジンでは、クランクシャフトが2回転する間にカムシャフトは1回転し、この回転比が正確なバルブタイミングを実現しています 。現代のエンジンでは可変バルブタイミング機構も搭載され、エンジン回転数に応じてバルブの開閉時期を変化させることで高効率化を実現しています 。
参考)カムシャフト クランクシャフト 高周波焼入れ  - 富士電子…

 

カムシャフトとバルブの詳細な動作メカニズム

クランクシャフトの仕組みと役割

クランクシャフトは軸の中心となる「クランクジャーナル」、ピストンと接続する「クランクピン」、これらを繋ぐ「クランクアーム」で構成されています 。この機構により、エンジン内部の燃焼によるピストンの上下動を効率的に回転運動に変換します 。
参考)車好きなら知っておきたい! クランクシャフトの役割と構造

 

クランクアームには慣性力を打ち消すためのバランスウエイト(カウンターウエイト)が取り付けられており、これによりエンジンの振動を抑制しています 。クランク機構の歴史は古く、中国の漢王朝時代(紀元前206年〜208年)にすでに存在していたといわれ、12〜13世紀頃にアラビアの発明家アル=シャザリがコネクティングロッドと組み合わせる構造を発明しました 。
この回転運動がトランスミッションを通じて車輪に伝達され、自動車の推進力となります 。クランクシャフトはまさにエンジンの心臓部として、車両の動力源を生み出す重要な役割を果たしています 。

カムシャフト加工技術と外観検査

カムシャフトの製造には高度な金属加工技術が必要で、特にカム部分の研削加工では極めて高い精度が求められます 。カム研削面やジャーナル部分には鋳巣・打痕・ビビリなどの加工不良が発生する可能性があり、これらの検出には専用の外観検査装置が使用されています 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ac295a9051ddd2902e457d108a2ed41d76ffcda9

 

現代の検査技術では、光切断法を用いた高さ形状測定により、加工された基準カムシャフトとの高さ差を検出する方法が採用されています 。オムロンの画像処理システムFHシリーズなどでは、「高精度キズ汚れ」処理項目を使用し、目視では確認困難な微小な巣穴も検出可能です 。
参考)https://www.fa.omron.co.jp/product/applications/case/ap00087.html

 

金属加工従事者にとって重要なのは、光沢の強い金属部品特有の反射(ハレーション)の影響を受けずに検査を行う技術です 。これらの検査技術により、不良品の市場流出を未然に防ぎ、品質の向上を実現しています 。
カムシャフト外観検査の具体的な事例と技術

クランクシャフト精密加工の特殊性

クランクシャフトの加工は偏心形状という特殊な形状のため、通常の加工技術とは異なるアプローチが必要です 。研削加工においては、CBNクランクシャフトGFシリーズなどの専用研削盤が使用され、自動車部品として要求される高精度な仕上げが実現されています 。
参考)クランクシャフト外観検査装置 - ユキ技研株式会社

 

クランクシャフトの外観検査では、ワーク回転とカメラの位置関係を同期制御することで偏心形状のワークにも対応可能な技術が開発されています 。この技術により、複雑な形状を持つクランクシャフト全体の品質管理が可能となります。
また、クランクシャフトオイルシールの劣化により、エンジンオイル漏れが発生する場合があり、一般的に10万kmは持つものの、車種によっては20万〜30万km走行しても問題ない場合があります 。金属加工従事者は、これらの耐久性を向上させる表面処理技術についても理解しておく必要があります。

タイミングベルトによる連動メカニズム

カムシャフトとクランクシャフトを連動させるタイミングベルトは、歯付ベルトやタイミングチェーンなどの形式があります 。タイミングベルトの一般的な耐用期間は約10万km、タイミングチェーンは約30万kmとされていますが、ゴム部分の経年劣化により10年での交換が推奨される場合もあります 。
参考)【タイミングベルト】仕組みや交換費用を徹底解説!タイミングチ…

 

タイミングベルトの交換作業では、クランクシャフトとカムシャフトを調整してピストン圧縮上死点を調整する工程が含まれ、高度な技術が必要です 。この作業が不適切だと、ピストンとバルブが衝突してエンジンが損傷する危険性があります 。
タイミングベルトを長持ちさせるには、エンジンオイルと冷却水の定期交換が重要です 。劣化したエンジンオイルはエンジン回転部の滑らかさを低下させ、ベルトに大きな負担を与えます 。また、冷却水不足によるエンジン高温化は、ゴム製タイミングベルトの劣化を促進させる要因となります 。
参考)車の点検時はタイミングベルトの確認も!長持ちさせるためのポイ…

 

タイミングベルトの詳細な交換方法と維持管理