エマルカットとは金属加工効率を向上させる水溶性切削油剤の基本

エマルカットとは金属加工で使用される水溶性切削油剤

エマルカット基本定義と金属加工での役割

エマルカットは、金属加工において使用される水溶性切削油剤の代表的な製品群です。主に協同油脂株式会社が製造するエマルション型の水溶性切削油剤を指しており、切削・研削加工時に工具と被削材の間の摩擦を減少させ、加工熱を効率的に除去する役割を果たしています 。
参考）水溶性切削油剤

 

エマルカットは水で希釈すると乳白色の液体となり、これが特徴的な外観です。この乳白色は、鉱物油などの不溶性成分が界面活性剤により水中に微細な粒子として分散することで生じます 。一般的に10～30倍に希釈して使用され、希釈後のクーラントは機械のタンクに貯蔵されて循環使用されます 。
参考）エマルションとソリュブルの特徴は？水溶性切削油にはソリューシ…

 

金属加工におけるエマルカットの主な効果は以下の通りです。

• 潤滑作用：工具刃先と被削材の摩擦を大幅に軽減
• 冷却作用：切削熱を効率的に除去し工具寿命を延長
• 洗浄作用：切りくずや研削粉を除去し加工面を清浄に保持
• 防錆作用：加工後の金属表面の錆発生を防止

エマルカット種類と分類体系における特徴

エマルカットは日本産業規格（JIS）に基づいて体系的に分類されており、主にA1種（エマルション）、A2種（ソリュブル）、A3種（ソリューション）の3つの大分類に区分されます 。
参考）切削油剤の種類その２（水溶性切削油剤） 【通販モノタロウ】

 

A1種エマルションタイプの代表製品には以下があります。

• エマルカット TAF-110N：幅広い材質に対応し、アルミニウム合金から鉄系金属まで加工可能
• エマルカット TAF-510N：耐腐敗性に優れ、ステンレス鋼加工に特化
• エマルカット TAF-328 NEW：精密加工・高速加工用に開発された高性能品
• エマルカット DC-60R NEW：量産加工から精密加工まで対応し、自動車部品加工での実績豊富

  参考）水溶性切削油におけるエマルションとソリュブルの違い

   

A2種ソリュブルタイプには以下の製品があります。

• エマルカット TAF-910：消泡性・防錆性・耐腐敗性に優れ、鋳物加工時のクーラント寿命延長効果
• エマルカット FA-500S：抗菌性を持ち、特に鋳鉄部品加工に適している
• エマルカット TAF-610R NEW：鋼・鋳鉄など鉄系材料専用設計で機械周りの汚れが少ない

各タイプは含有成分や希釈後の外観、適用材料により使い分けが行われており、加工条件や被削材に応じた最適な選択が可能になっています。

 

エマルカット使用方法と希釈比率の管理

エマルカットの適切な使用には、正確な希釈比率の管理と調合手順の遵守が重要です。希釈比率は製品により異なりますが、一般的にエマルションタイプは10～30倍、ソリュブルタイプは10～50倍の範囲で使用されます 。
正しい希釈手順は以下の通りです。

1. 水を先に準備：清浄な水道水または軟水をタンクに規定量投入
2. 原液の添加：水に対してエマルカット原液を徐々に添加し攪拌
3. 十分な混合：均一に分散するまで攪拌を継続
4. 濃度確認：屈折計などで濃度を測定し規定値に調整

   参考）https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0211.html

    

注意すべきポイントは、原液を先に入れてから水を加えると適切な乳化が行われず、性能が低下する可能性があることです 。
参考）https://www.originalmind.co.jp/products/uploaddoc/coolant/coolant03.pdf

 

濃度管理における重要な要素。

• 蒸発による濃度上昇：水分蒸発により濃度が上昇するため定期的な水の補給が必要
• 混入油による希釈：作動油や潤滑油の混入により実効濃度が低下
• 温度による影響：液温上昇により微生物繁殖リスクが増大
• pH値の監視：適正pH範囲（通常8.5～9.5）の維持による防錆性確保

  参考）【水溶性切削油】切削油の濃度管理の基本

   

濃度管理には屈折計を使用した定期測定が推奨されており、週1～2回の頻度で確認することで安定した加工性能を維持できます。

 

エマルカット交換時期の判断基準と管理方法

エマルカットの交換時期は、複数の指標を総合的に判断して決定する必要があります。適切なタイミングでの交換により、安定した加工品質と経済的な運用が実現できます 。
参考）水溶性切削油の交換基準と適切な交換方法

 

主要な交換判断基準。

• 外観の変化：悪臭の発生、色の褐色化、泡立ちの異常
• pH値の変動：規定範囲（8.5～9.5）からの逸脱
• 細菌数の増加：104 CFU/mL以上での腐敗リスク
• 加工品質の低下：表面粗さの悪化、工具寿命の短縮
• 使用期間：エマルションタイプで6ヶ月～1年程度

効果的な管理方法。
定期的な濁度測定により切削油の清浄度を監視し、フィルターシステムの差圧管理を通じて適切なメンテナンス時期を判断します。差圧が設定上限値に達した際のフィルター交換や清掃は、油剤寿命の延長に直結します 。
腐敗防止のための対策として、タンクカバーの使用による蒸発抑制、適切な液温管理（25～30℃以下）、定期的な攪拌による酸素供給の確保が重要です 。
交換作業の手順。

1. 使用液の完全排出と切りくず除去
2. タンク内部の清掃と洗浄剤による脱脂
3. 清水によるすすぎと乾燥
4. 新液の調合と投入
5. 循環運転による系統内の置換

適切な管理により、エマルカットの寿命を最大限に活用し、交換頻度を最適化することが可能になります。

 

エマルカット安全な取り扱いと注意事項

エマルカットの使用においては、作業者の安全確保と環境保護の観点から、適切な取り扱い手順と注意事項の遵守が必要です 。
個人保護具の着用。

• 保護手袋：皮膚接触による刺激やアレルギー反応を防止
• 保護メガネ：飛散による眼への影響を回避
• 作業着：適切な作業服により皮膚露出を最小限に抑制
• 保護マスク：必要に応じてミスト吸入を防止

  参考）水溶性切削油剤：よくある質問　

   

作業環境の管理。
適切な換気システムにより油煙やミストの滞留を防止し、必要に応じて局所排気装置を設置します。作業場の温度と湿度の管理も、油剤の安定性と作業者の快適性にとって重要です 。
皮膚接触時の対応。
エマルカットが皮膚に付着した場合は、速やかに石鹸と清水で十分に洗浄します。異常を感じた場合は直ちに医師の診察を受け、適切な処置を受けることが重要です 。
環境配慮と廃液処理。
使用済みエマルカットは産業廃棄物として適正に処理し、無断での排水や土壌への放出は厳禁です。廃液処理業者への委託や、社内処理設備による適切な処理を行います。

 

火災予防措置。
エマルション型は水溶性のため不水溶性切削油と比較して引火リスクは低いものの、原液は可燃性の成分を含むため、火気からの隔離と適切な保管温度の維持が必要です 。
参考）切削液、なぜ油性と水溶性？ href="https://nichi-mecha.co.jp/staff_blog/cutting_fluid_water_oil/" target="_blank">https://nichi-mecha.co.jp/staff_blog/cutting_fluid_water_oil/amp;#8211; 日本メカケミカル…

 

定期的な安全教育の実施により、作業者全員がエマルカットの安全な取り扱い方法を理解し、事故防止に努めることが重要です。