防爆の種類と選び方を金属加工従事者に解説

金属加工現場で使用される防爆機器には多種多様な構造があります。耐圧防爆から本質安全防爆まで、各構造の特徴と適切な選択方法を詳しく解説します。あなたの現場に最適な防爆機器はどれでしょうか?

防爆の種類と特徴

防爆構造の基本8種類
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耐圧防爆構造(d)

頑丈な容器で包み込み、内部爆発を外部に伝えない

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内圧防爆構造(f)

保護ガスで内圧を高めて危険ガスの侵入を防止

本質安全防爆構造(i)

火花や高温部自体を発生させない最高水準の安全性

防爆構造の耐圧防爆構造と機械的特徴

耐圧防爆構造(記号d)は、最も広く採用されている防爆構造の一つです 。この構造は、電気機器を頑丈な容器で覆い、万が一内部で爆発が発生しても、その圧力に耐えて外部の爆発性ガスに点火しないよう設計されています 。金属加工現場では、機械の振動や衝撃にも耐える必要があるため、容器の強度が重要な要素となります 。
参考)防爆構造の種類

 

耐圧防爆構造の最大の利点は、防爆化が比較的容易であることです 。特に小型から中型の電気機器の改造に適しており、他の防爆構造との組み合わせも可能です 。しかし、容器に強度が必要なため機器の重量が増加し、内部爆発時には内蔵機器が破損する可能性があります 。
金属加工現場における実際の適用例として、切削液ポンプの制御盤や溶接機器の電源部などに多用されています。この構造は第一類危険箇所(Zone1)および第二類危険箇所(Zone2)で使用可能です 。
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防爆構造の内圧防爆構造と空気供給システム

内圧防爆構造(記号f)は、保護ガスを容器内に供給することで内圧を外部より高く保ち、危険ガスの侵入を防ぐシステムです 。金属加工現場では、大型制御盤や分析装置など、他の防爆構造では対応困難な機器に適用されます 。
この構造には3つのタイプがあります。通風式は給排気口を持ち空気を循環させ、封入式は密閉容器で保護ガスを補充し、希釈式は可燃性ガスの濃度を希釈します 。金属加工現場では通風式が一般的で、切削油ミストや溶接ヒュームが多い環境でも効果的に機能します 。
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内圧防爆構造の課題として、保護ガスの供給源、圧力検知装置、一定時間の掃気操作が必要な点があります 。これらの要件により、設備投資と維持管理コストが他の構造より高くなる傾向があります 。

防爆構造の本質安全防爆構造と電気的安全性

本質安全防爆構造(記号i)は、最も安全性の高い防爆構造として認識されています 。この構造では、正常時だけでなく故障時においても、電気火花や高温部が爆発性ガスに点火しないことが公的機関の試験で確認されています 。金属加工現場では、検出器やスイッチなどの小電力機器に主に適用されます 。
本質安全防爆構造の特徴として、特別危険箇所(Zone0)への設置が可能で、軽量・小型化が実現できます 。携帯機器以外では安全保持器を非危険場所に設置し、微弱電流のみを危険場所に供給する仕組みとなっています 。
金属加工現場での実用性を考える際、大きな電力を消費する機器には適用できないという制約があります 。しかし、温度センサーや圧力計、流量計などの計測機器には理想的な防爆構造です 。故障の考慮数により、iaタイプ(2つまでの故障を考慮)とibタイプ(1つの故障を考慮)に分類されます 。

防爆構造の安全増防爆構造と軽量化メリット

安全増防爆構造(記号e)は、通常運転でアークや火花を発生しない電気機器に適用される構造です 。この構造の最大の特徴は軽量化が可能で、水素やアセチレンなどの危険度の高いガス(グループⅡC)にも対応できることです 。金属加工現場では、照明器具やファン、配線器具に多用されています 。
安全増防爆構造では、絶縁性能の確保、絶縁劣化防止、温度上昇の抑制が重要な設計要素となります 。金属切削時の切削液飛散や溶接時のスパッタなど、外部からの損傷に対する保護も考慮されています 。
ただし、容器の耐久性基準がないため、万が一内部で発火や爆発が発生した場合、外部への点火リスクがゼロではありません 。そのため、基本的には第二類危険箇所(Zone2)での使用が推奨されています 。金属加工現場では、リスク評価を十分に行った上で適用範囲を決定することが重要です 。

防爆構造の樹脂充填防爆構造とコンパクト設計

樹脂充填防爆構造(記号m)は、火花やアーク、高温部を絶縁性樹脂で囲い込む構造です 。金属加工現場では、センサー類や小型制御機器の防爆化に適用され、特にスペースに制約がある場所で威力を発揮します 。
この構造の利点として、樹脂が容器を兼ねることで小型化が可能で、他の防爆構造との組み合わせも容易です 。金属加工機械の狭いスペースに設置する必要がある機器には理想的な選択肢です 。電気回路全体を樹脂で覆うため、外部からの衝撃や振動からも保護されます 。
しかし、バッテリー交換ができない、絶縁性樹脂による静電気対策が必要という課題があります 。金属加工現場では静電気による着火リスクが特に高いため、適切な静電気対策が不可欠です 。故障の考慮数により、maタイプとmbタイプに分類され、適用可能な危険場所が異なります 。