ボールねじの推力と計算の基本知識

ボールねじの推力計算は機械設計の基本ですが、どのような公式を使えば正確な値を求められるのでしょうか?

ボールねじの推力と計算

ボールねじ推力計算の要点
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基本公式の理解

推力計算に必要な基本公式とその構成要素

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効率と摩擦の考慮

機械効率と摩擦係数が与える影響の検討

🔧
実用的な設計指針

モータ選定と最適化のための実践的アプローチ

ボールねじの推力計算における基本公式

ボールねじの推力計算は機械設計における重要な基礎技術です 。推力を得るための駆動トルクは、基本的に以下の公式で求められます 。
参考)制御機器FAQ(よくあるご質問)

 

基本計算式:
Fa = (2π × η × T) / l
この公式において、Fa は発生推力(N)、η は機械効率、T は駆動トルク(N・m)、l はリード(mm)を示しています 。機械効率は一般的に0.9~0.95の値を使用し、ボールねじは滑りねじと比較して非常に高い効率を誇ります 。
参考)ボールねじの推力について教えてください②

 

実際の設計では、外部荷重によるトルクと予圧によるトルクを個別に計算し、これらを合計して必要駆動トルクを求める必要があります 。特に精密な位置決めが要求される用途では、予圧設定による影響も考慮することが重要です。
参考)回転トルクの検討|選定のポイント|ボールねじ|製品情報|TH…

 

ボールねじの効率と摩擦計算方法

ボールねじの機械効率は推力計算の精度を左右する重要な要素です 。効率計算には摩擦係数μとリード角βが関与し、正効率η1は以下の式で表現されます :
参考)ボールねじの効率と計算方法 - ボールねじ 修理・製作センタ…

 

η1 = (sinα - μ1tanβ) / (sinα + μ1 / tanβ)
ボールねじの摩擦係数は一般的に0.001~0.005程度と非常に小さく、これにより90%以上の高い機械効率が実現されます 。滑りねじの効率が30%程度であるのに対し、ボールねじは転がり接触により摩擦を大幅に削減しています 。
参考)ボールねじの推力とは - ボールねじ 修理・製作センター.c…

 

転がり量に対する滑り率は0.005~0.05程度であり、この値の小さささがボールねじの高効率の源泉となっています 。実用的には、標準的な潤滑条件下で効率0.95を使用することが多く、これにより安全側の設計が可能になります 。
参考)ボールねじの摩擦

 

ボールねじの外部負荷トルク計算

外部負荷に対して必要な回転トルクの計算は、案内面の摩擦抵抗や外力を考慮する必要があります 。負荷トルクTLは以下の式で求められます :
参考)https://www.orientalmotor.co.jp/ja/tech/e-learning/st-list/st-sizing/3-3

 

TL = [F・PB / (2π・η)] + [μ0・F0・PB / (2π)] = 1/i
ここで、F は運転方向荷重、PB はボールねじピッチ、μ0 は摩擦係数、F0 は垂直荷重を表しています 。水平搬送の場合、摩擦係数μは0.1程度を使用することが一般的です 。
参考)【初心者向け】サーボモーター選定の基本のき|計算例から学ぼう

 

垂直軸への適用では、重力による定常外力も考慮する必要があり、正方向と負方向で異なる外力値を設定します 。また、カウンタウェイトを使用する場合は、重量差分を外力計算に反映させる必要があります 。
参考)SigmaSize+ HELP(機械諸元)

 

ボールねじの加速トルクと慣性モーメント

加速時に必要なトルクは、システム全体の慣性モーメントと角加速度の積で求められます 。総合慣性モーメントJAは以下の要素の合計です :

  • ボールねじ軸の慣性モーメント:JMC = π ρB lB dB⁴ / (32 R²)
  • 負荷質量分の慣性モーメント:JW = (mW + mT)(K / 2π)²
  • 減速機とカップリングの慣性モーメント:JG

ボールねじ自体の慣性モーメントは、単位長さあたりの値に実際の使用長さを乗じて算出します 。回転部品であるベアリング内輪やカップリングの慣性も加算する必要があり、これらの値はカタログ仕様から入手できます 。
高精度な計算では、ボールねじの密度ρB(一般的に7800 kg/m³)と軸径dBを用いて詳細な慣性計算を行います 。

ボールねじのリード選定と推力最適化の実践的アプローチ

リードの選定は推力と送り速度のバランスを決める重要な要素です 。大きなリードは高速送りを可能にしますが、同一トルクで得られる推力は小さくなります。逆に小さなリードでは大きな推力が得られますが、送り速度は制限されます 。
参考)リードの選定・軸径の選定|選定のポイント|ボールねじ|製品情…

 

転造ボールねじでは軸径とリードの組み合わせが規格化されており、標準的な組み合わせから選定することで経済性と性能を両立できます 。精密位置決めが要求される用途では、リード精度等級C3~C5を選択し、搬送用途ではC7~C10を使用することが一般的です 。
参考)ボールねじの精度|選定のポイント|ボールねじ|製品情報|TH…

 

予圧の適切な設定も推力の安定性に影響します。軽予圧では動トルクが小さく高効率ですが、中・重予圧では剛性が向上し位置決め精度が高まります 。ダブルナット予圧では予圧量を調整可能で、用途に応じた最適化が図れます 。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/c1388.html

 

実用的な設計では、安全率1.2~1.5を考慮し、計算値の120~150%の能力を持つモータを選定することで、温度上昇や負荷変動に対する余裕を確保できます 。
参考)ボールネジの場合 - 動力技術計算-住友重機械工業株式会社 …