アルカリ金属は周期表の1族に属する金属元素群で、水素を除くリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)が含まれます。
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これらの元素の最大の特徴は、最外殻電子が1個しかないことです。この価電子1個という構造により、イオン化エネルギーが小さく、1価の陽イオンになりやすい性質を持ちます。
アルカリ金属の主な特徴:
金属加工の現場では、これらの特性により非常に扱いにくい材料として知られています。空気中で扱うことはできず、不活性雰囲気のボックス内での操作が必要です。自然界では単体として存在せず、酸化物や塩化物として得られます。
リチウムは電池材料として、ナトリウムは冷却材として、カリウムは肥料として使用されることが多く、それぞれ特有の工業的用途があります。
アルカリ土類金属は周期表の2族に属する金属元素で、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が含まれます。
参考)第2族元素 - Wikipedia
従来はカルシウム以降の4元素のみがアルカリ土類金属とされていましたが、2022年4月からはIUPACの勧告に従い、ベリリウムとマグネシウムも含める定義が教科書で採用されています。
アルカリ土類金属の基本特性:
参考)2族元素(アルカリ土類金属・Mg)の特徴・性質・反応など
「土類」という名称の由来は、これらの元素の酸化物が自然界に多く存在し、熱に強く水に溶け難い性質を持つことから、発見当時の化学者が「土類(earth)」と名付けたことにあります。これらの酸化物は水に溶けるとアルカリ性を示すため「アルカリ土類」と呼ばれるようになりました。
金属加工では、マグネシウムの軽量性やカルシウムの脱酸剤としての用途などで重要な役割を果たしています。
アルカリ金属とアルカリ土類金属の化合物で最も顕著な違いが現れるのが、炭酸塩と硫酸塩の水に対する溶解性です。
参考)アルカリ金属とアルカリ土類金属の共通点と違い|高校化学・中学…
アルカリ金属の塩の溶解性:
アルカリ土類金属の塩の溶解性:
この溶解性の違いは、イオンの大きさと格子エネルギーの関係で説明できます。アルカリ金属イオンは1価で比較的大きく、水和エネルギーが格子エネルギーを上回りやすいため水に溶けやすくなります。
一方、アルカリ土類金属イオンは2価で電荷密度が高く、強い格子エネルギーを持つため、多くの塩が水に溶けにくくなります。
工業的な応用例:
水との反応性において、アルカリ金属とアルカリ土類金属では明確な違いが見られます。
アルカリ金属の水との反応:
すべてのアルカリ金属が冷水と激しく反応し、水素ガスを発生させながらアルカリ性の水酸化物を生成します。反応は以下の通りです。
原子番号が大きくなるほど反応は激しくなり、セシウムでは爆発的な反応を示します。
アルカリ土類金属の水との反応:
元素 | 冷水との反応 | 熱水との反応 |
---|---|---|
Be | 反応しない | 反応しない |
Mg | 反応しない | 反応する |
Ca | 反応する | 激しく反応 |
Sr | 反応する | 激しく反応 |
Ba | 反応する | 激しく反応 |
マグネシウムの熱水との反応。
Mg + 2H₂O → Mg(OH)₂ + H₂
カルシウム以降の冷水との反応。
Ca + 2H₂O → Ca(OH)₂ + H₂
この反応性の違いは、イオン化エネルギーの差によるものです。アルカリ金属の方がイオン化エネルギーが小さく、より容易に電子を放出して反応します。
物理的性質において、アルカリ金属とアルカリ土類金属には系統的な違いが存在します。
融点の比較:
アルカリ金属の融点は非常に低く、以下のような値を示します。
一方、アルカリ土類金属の融点はより高い値を示します。
密度の比較:
アルカリ金属は軽金属の代表例で、特にリチウム(0.53 g/cm³)は最も軽い金属です。アルカリ土類金属も軽金属ですが、アルカリ金属より密度が高い傾向があります。
結合力の違い:
この物理的性質の違いは、金属結合の強さに起因します。アルカリ土類金属は価電子が2個あるため、自由電子の密度が高く、金属同士の結びつきが強くなります。価電子が多いということは金属結合力が強いことを意味し、これが融点や機械的強度の向上につながります。youtube
工業的な意味:
この性質の違いは金属加工において重要な意味を持ちます。
マグネシウム合金は軽量でありながら十分な強度を持つため、航空機や自動車部品に広く使用されています。