CFRTP成形方法 ホットプレス射出ハイブリッド成形

自動車・航空宇宙業界で急速に採用されているCFRTP成形技術。ホットプレス、射出成形、ハイブリッド成形など複数の方法があり、各々メリット・デメリットがあります。金属加工従事者が習得すべきCFRTP成形方法の最新トレンドと実装方法は何でしょうか?

CFRTP成形方法とプロセスの最適化

CFRTP成形の3つの主要アプローチ
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ホットプレス成形法

カーボンファイバープリプレグを積層し、加熱圧縮で一体成形。高強度部品の量産に最適。

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射出成形法

短繊維CFRTPを加熱溶融後、金型注入。複雑形状と短納期を両立させる効率的プロセス。

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ハイブリッド成形法

プレスと射出を組み合わせ、連続繊維の強度と複雑形状を実現する次世代成形技術。

CFRTP成形方法の基礎知識と材料特性

CFRTP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)は、熱可塑性樹脂とカーボンファイバーを組み合わせた複合材料で、軽量性と高強度を兼ね備えた革新的な素材です。従来の熱硬化性CFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)と異なり、加熱すると軟化し冷却すると固まる特性を持つため、繰り返し成形やリサイクルが可能となります。

 

金属加工従事者にとって重要な点は、CFRTPは金属製の機械部品と比較して1/5程度の軽量性を実現しながら、同等かそれ以上の強度を維持できることです。特に自動車業界では燃費向上のための軽量化圧力が強まっており、CFRTP部品の需要は急速に増加しています。

 

ホットプレス成形によるCFRTP成形プロセス最適化

ホットプレス成形はCFRTP成形の最も一般的な方法で、カーボンファイバープリプレグ(予め樹脂が含浸されたシート)を複数枚積層し、赤外線ヒータや通電抵抗加熱金型で加熱した後、プレス機で圧縮成形します。この方法で最大の課題となるのが「ボイド(空隙)制御」です。

 

プレス圧が不足するとボイドが残存し、強度が大幅に低下してしまいます。一方でプレス圧を過度に上げると樹脂が流出し、これも強度低下の要因となります。三光合成などの先進企業では、型内予備成形と型周部の冷却管配置を組み合わせることで、樹脂流出を防止しながら含浸性を向上させる技術を開発しています。

 

成形温度は一般的に180~220℃の範囲で、材料の融点や加工方法により微調整されます。成形時間は数分から十数分で、大型パネルの場合は通常10分前後が目安です。プレス圧は一般的に2~5MPa程度が使用されますが、部品形状や繊維ボリューム分率により最適値は異なります。

 

射出成形法によるCFRTP複合部品の高速製造

射出成形法は、短繊維で強化した熱可塑性CFRTPを溶融状態で金型に注入する方法です。この成形方法の最大の利点は成形サイクルが極めて短く、通常1~3分で複雑な形状の成形品が得られる点にあります。特にリブやボスなどの三次元形状を容易に成形できるため、自動車内装部品や電子機器部品の製造に適しています。

 

成形温度は一般的に250~320℃と比較的高く、スクリュー回転速度と背圧により樹脂の流動性を精密制御します。短繊維CFRTPの場合、繰り返し成形により繊維が短縮化するため、材料設計段階で初期繊維長を10~20mm程度に設定することが重要です。

 

短繊維CFRTPの繊維ボリューム分率は一般的に20~40%程度で、連続繊維を使用するホットプレス成形の40~60%と比較して低いため、強度要求が中程度の部品に適しています。射出成形は大量生産に向いており、金型設計・製造費用が高いため、年間数万個以上の生産量が必要となります。

 

ハイブリッド成形法:連続繊維と射出の融合による革新的アプローチ

ハイブリッド成形法は、プレス成形と射出成形を組み合わせる次世代技術で、弊社の特許取得技術としても知られています。このプロセスではまず連続繊維で強化したCFRTPをホットプレスで予備成形し、その直後に短繊維CFRTPを射出成形で金型内に注入します。

 

このアプローチの革新的な点は、複雑な形状を持つ部品において表層部に連続繊維の高強度・高剛性を確保しながら、内部にリブやボスなどの細部構造を射出成形で一体成形できることです。従来は複数工程が必要だった製造が1工程で完結し、総生産時間が大幅に短縮されます。

 

ハイブリッド成形により、連続繊維による外層の意匠性と耐久性、短繊維射出成形による内部構造の自由度を両立させた製品設計が可能になります。成形サイクルはプレス成形と射出成形の合算になりますが、総工程数削減による生産効率化で相殺されるため、実質的なコスト削減効果は大きいです。

 

CFRTP成形における含浸性と繊維配向制御技術

CFRTP成形での難題は熱可塑性樹脂の高粘度です。従来の熱硬化性CFRPの樹脂粘度は一般的に0.1~1Pa・s程度ですが、熱可塑性樹脂は10~100Pa・s以上と非常に高く、炭素繊維束内への樹脂含浸が困難になります。この問題を解決するために、複合糸技術が開発されました。

 

パウダー含浸ヤーンやコミングルヤーン、シースを用いた複合糸など、炭素繊維と樹脂を事前に組み合わせた中間材料を使用することで、含浸性が飛躍的に向上します。特にカバーリング複合糸を用いた織物状CFRTPは、製織時の炭素繊維ダメージを最小化しながら高い含浸性を実現する最新技術です。

 

繊維配向制御も重要な要素で、3D印刷技術を用いたCFRTP成形では、主応力方向に繊維を配向させることで力学的特性を最適化する研究が進められています。コンピュータシミュレーションにより応力分布を予測し、繊維配向方向を自動生成するツールパス技術が開発されており、複雑形状部品の性能向上に貢献しています。

 

通電抵抗加熱金型による成形技術と次世代トレンド

通電抵抗加熱金型(TAM:Thermally Assisted Molding)は、金型自体に電流を流して加熱する革新的な成形技術です。従来の赤外線ヒータによる加熱と異なり、金型内部を均一かつ迅速に加熱でき、材料の含浸性と成形精度が向上します。特に厚み方向の温度差を最小化できるため、大型部品の均一な成形が可能になります。

 

TAM成形法では、フィルムスタッキング法(樹脂シートとカーボン繊維を交互に積層する方法)によるCFRTPプリプレグの高速成形が実現されています。成形温度管理の自由度が高いため、材料ごとの最適な成形条件を微調整でき、成形時間の短縮も可能です。

 

さらに、通電抵抗加熱金型とホットスタンピング技術の組み合わせにより、スポーツ用品や航空機部品などの複雑形状部品の高精度成形が実現されています。この技術は従来の加熱方法と比較して成形サイクルを30~50%短縮でき、大量生産コストの削減に貢献しています。

 

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