塩光測定分光析法とは、物質に光を照射し、その反射や発光スペクトルを分析することで元素の種類や濃度を測定する分析手法です。この技術は分光測色法(Spectrophotometry)の応用として位置づけられ、可視光線、近紫外線、近赤外線領域の電磁スペクトルを対象とした定量的研究手法として確立されています。
参考)https://www.shiojigyo.com/study/upload/book_methods5th.pdf
分光測色計を用いることで、光の波長ごとの強さを測定し、物質の特性を数値化することができます。特に塩素系化合物や金属塩の分析においては、元素特有の発光線を利用した高精度な定量分析が可能となっています。
参考)https://www.customs.go.jp/ccl/etc/5.htm
この手法の特徴として、試料から反射された光を回折格子等で分光し、複数のセンサーで各波長の反射率を測定する点が挙げられます。これにより、刺激値直読方法では得られない詳細な分光情報を取得できるため、より高精度な分析が実現されています。
参考)5分で読める!色を感じるメカニズムから測定方法まで
💡 分光測色方法は、人の目のような単純な赤・緑・青の3センサーではなく、複数のセンサーを用いることで分光特性を詳細に測定します。
発光分光分析法(ICP-OES)は、塩光測定分光析法の中核をなす技術です。ICP発光分光分析装置では、6,000~10,000Kの高温アルゴンプラズマを発光光源として使用し、霧状にした溶液サンプルをプラズマに導入することで元素固有のスペクトルを発光させます。
参考)ICP 発光分光分析装置(ICP-OES)の基礎と原理(第一…
このプラズマ中では、原子や分子が励起状態となり、基底状態に戻る際に元素特有の波長の光を発することになります。光の波長の違いと強さを同時に測定することで、元素の種類と量を定量できるのです。
📊 主な測定可能元素数:
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunkou1951/12/1/12_1_41/_pdf
高性能な回折格子(グレーティング)を用いることで、光源から得られたスペクトルを高分解能に分離し、多元素の同時分析を実現しています。この技術により、従来の化学分析では困難とされていた複雑なスペクトルを持つ元素の定量も可能になっています。
金属加工業界において、塩光測定分光析法は品質管理と工程管理の両面で重要な役割を果たしています。特に各種地金のJIS分析法として分光分析法が正式に採用されており、合金の溶解工程などの管理に広く応用されています。
水銀法食塩電解工業では、消石灰中の有害不純分(Cr、Mn、Ti)の定量分析や、原塩中に混入したクロム鉱から塩水中に溶出したCrの定量分析に活用されています。これにより、従来は経験的にしか判断できなかった材料の適否を科学的に評価できるようになりました。
🔧 実用的な応用例:
タンタル精錬工業では、溶融試料粉末-スパーク法により、従来分光分析では困難とされていた主成分の定量や、複雑なスペクトルを持つTa、Nbなどの元素の定量を実現しています。この方法により、主成分のTaをはじめ12種類の不純分を同時に定量することが可能になっています。
塩光測定分光析法は、従来の化学分析手法と比較して多くの優位性を持っています。最も大きな特徴は、同時多元素分析能力です。ICP発光法では一回の測定で約75種類の元素を迅速に分析できるため、効率的な品質管理が可能です。
感度の面でも優れており、測定濃度範囲が広いという特長があります。ケイ酸塩分析においてICP発光法と他の分析法を比較した研究では、ICP発光法の感度の良さと測定濃度範囲の広さが実証されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunkou1951/34/1/34_1_37/_pdf/-char/en
⚖️ 分析手法の比較:
原子吸光分析法との比較では、原子吸光法が単一元素の高精度分析に優れる一方、塩光測定分光析法は多元素同時分析において圧倒的な優位性を示します。鉄鋼やアルミニウム合金中のマンガン定量などでは、両手法とも高い精度を示しますが、作業効率の面で分光析法が選択されることが多くなっています。
近年の技術革新により、塩光測定分光析法はさらなる発展を遂げています。レーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)は、前処理を原則必要とせず、計測対象物をそのままの状態で迅速に計測することが可能な新しい発光分光による元素分析法として注目されています。
参考)https://api.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1785432/tj0990_abstract.pdf
この技術は従来の分光分析法の制約を大きく改善し、現場での即座な分析を可能にします。特に金属加工現場では、工程中の材料をリアルタイムで分析できることから、品質管理の効率化に大きく貢献することが期待されています。
🚀 技術革新のポイント:
ラマン分光法との組み合わせも注目されており、分子内・分子間振動の詳細情報を得ることで、より深い材料解析が可能になっています。インラインでの分析により、晶析プロセスのモニタリングや反応メカニズムの解明にも活用されています。
参考)ラマン分光法とインライン分析
分光分析化学的手法を用いた塩添加による水の構造化把握に関する研究も進んでおり、食品分野での品質評価への応用も期待されています。遠赤外領域(900 cm⁻¹以下)のスペクトル挙動が塩溶液内の水の状態評価に有効であることが示唆されており、新たな分析領域の開拓につながっています。
参考)https://www.saltscience.or.jp/images/2023/07/202042.pdf
これらの技術革新により、塩光測定分光析法は単なる成分分析から、材料の構造や状態まで包括的に評価できる総合的な分析手法へと進化を続けています。金属加工従事者にとって、これらの最新動向を把握することは、競争力向上と品質管理の高度化において極めて重要です。