タンデム仕上げ圧延機は、複数の圧延スタンドを連続的に設置し、金属材料を一度の通板で最終板厚まで圧延する金属加工機です。通常2~6基の圧延機を直列に並べて構成され、各スタンドは独立した制御システムを持っています。
基本的な構成要素は以下の通りです。
・入側シャー:先端形状を整えるための切断装置
・複数の圧延スタンド:通常4基のスタンドが主流
・サイドトリマ:側面の寸法調整装置
・チョッパ:長さ調整用切断機
・テンションリール:巻き取り装置
各スタンド間には張力制御システムが設置され、テンションバーによって精密な張力管理が行われます。この構造により、材料の移動や運搬がなくなり、圧延工程の生産性が大幅に向上します。
参考)https://www.uacj.co.jp/review/furukawasky/004/pdf/04_abst01.pdf
タンデム仕上げ圧延機の最大の利点は、連続的な製造が可能な点です。従来のリバースミルのように正逆転を繰り返す必要がなく、一度の通板で最終板厚まで圧延できるため、生産効率が飛躍的に向上します。
参考)圧延加工の5つの特徴とは?
主な利点。
・高速製造: 秒速40mから100mでの高速圧延が可能
参考)圧延機(アツエンキ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
・高精度: 板厚制御、クラウン制御、温度制御など様々な制御システム
・大量生産対応: 1km以上に及ぶシート製品の製造が可能
・生産コスト削減: 連続製造による効率化でコスト低減を実現
特に最新の設備では、厚さ約3cmのシート材を0.03分後に2mmまで圧延し、長さを3.2km以上に延伸することが可能です。これは従来の単体圧延機では実現できない圧倒的な生産能力です。
参考)https://www.iloencyclopaedia.org/ja/part-x-96841/paper-and-pulp-industry/major-sectors-and-processes?%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C%5C=%27%27amp;start=650
冷間タンデム圧延機は、材料を常温で圧延する装置として、高精度で滑らかな表面加工を実現します。熱間圧延帯板コイルを冷却後、酸洗により表面の酸化膜を除去してから圧延処理を行います。
参考)https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=04%3A1013583
冷間圧延の技術的特徴。
・高精度制御: X線厚み計によるAGC(automatic gage control)システム
・張力管理: スタンド間の張力計による精密な張力制御
参考)https://www.nsfellows.com/files/user/site/CRkoujou.htm
・表面品質: ブライト仕上げとダル仕上げの選択が可能
・圧延油システム: 大量の圧延油による潤滑と冷却
油圧圧下システムの採用により、電動スクリュー方式よりも応答速度が速く、板厚の自動制御がより精度良く実現できます。これにより製品品質に大きく影響する重要な工程を安定して管理できます。
現代のタンデム仕上げ圧延機では、高度な制御システムが導入されています。川崎製鉄と日立製作所が共同開発した制御方式では、出側に設置された厚み計信号に基づいて、後続スタンドの板厚を体積速度一定の原理で算出します。
参考)https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1979/09/1979_09_07.pdf
制御システムの特徴。
・予測制御: 各スタンドのロール間隙または張力を予測的に制御
・帰還制御: 実測値に基づく帰還的制御の併用
・最適化: 製品板厚の二乗偏差を最小化する制御手法
・段付圧延: 同一コイル内での板厚変更システム
この制御システムにより、材質や工程のばらつき、鋼板とロール間の摩擦係数の変動にも対応できる安定した圧延が実現されています。特に微細粒鋼の製造においても、この制御技術が重要な役割を果たしています。
参考)https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/7218/files/B17848.pdf
従来の議論では触れられることの少ない重要な側面として、タンデム仕上げ圧延機のエネルギー効率と環境対応性があります。連続圧延システムは、単体圧延機と比較して電力消費量を30~40%削減できる特性を持っています。
環境対応の技術革新。
・水溶性圧延油: 最新技術では水溶性detergent系圧延油を使用し、H₂100%雰囲気ガスでの焼鈍により電解清浄工程を省略可能
・省エネルギー: 連続製造による待機時間短縮で電力効率向上
・廃材削減: 精密制御による歩留まり向上でスクラップ材発生量削減
・熱回収システム: 圧延時の発熱を他工程で有効活用
これらの技術により、従来比で二酸化炭素排出量を約25%削減することが可能となり、持続可能な製造業への転換を支援しています。