車の整備現場でよく見かける回路図上のGNDマークは、実は全て物理的に接続する必要があります。GNDとは回路内の電圧の基準となる電位で、0Vを示す重要な基準点です。
回路図上に複数のGNDマークが描かれている場合、これらは全て同じ電位である必要があるため、配線で結ぶ必要があります。例えば、ECU(エンジンコントロールユニット)の回路図では、複数のセンサーからのGND線が描かれていますが、これらは最終的に車体の同一点に接続されます。
接続の基本ルールとして以下を覚えておきましょう。
特に注意すべきは、シールドケーブルを使用している回路です。シールド線のGNDは信号線のGNDとは別に処理する場合があり、ノイズ対策として重要な役割を果たします。
自動車では地面をGNDとすることができないため、車体(フレーム)をGNDの基準点として使用します。これをフレームグラウンド(FG)と呼び、車の電装品すべての基準となる重要な概念です。
フレームグラウンドの正しい接続方法。
実際の作業では、バッテリーのマイナス端子から車体への太いケーブルが基本のGND経路となります。ここから各電装品のGND線が分岐していく構造です。
エンジンブロックやトランスミッションケースなど、車体から絶縁されている金属部品には、専用のGNDストラップ(アース線)で車体との導通を確保する必要があります。これらの部品に取り付けられた電装品のGNDが正常に機能するためです。
車の電装品修理では、シグナルグラウンド(SG)とアース(接地)の概念を正しく理解することが重要です。多くの整備士がこの2つを混同していますが、実は異なる役割を持っています。
シグナルグラウンドの特徴。
アース(接地)の特徴。
例えば、O2センサーの回路では、センサー信号の基準となるシグナルグラウンドと、センサー筐体を車体に接続するアースが別々に配線されています。前者は正確な信号伝達のため、後者は安全とノイズ対策のためです。
ECUなどの精密な電子機器では、デジタル回路用とアナログ回路用でGNDを分離している場合もあります。これは相互のノイズ干渉を防ぐための設計で、修理時には配線図を確認して正しく接続する必要があります。
GND接続不良は車の電装品トラブルの約30%を占める重要な故障原因です。症状が分かりにくく、見落としやすいため、系統的な診断方法を身につける必要があります。
主な症状と診断ポイント。
→ センサーGNDの接触不良を疑う
→ フレームGNDの抵抗増加をチェック
→ 計器クラスターのGND回路を確認
診断手順。
特に重要なのは電圧降下測定です。正常なGND回路では、バッテリーマイナス端子と各GND点間の電圧降下は0.1V以下である必要があります。これを超える場合は接続不良や配線の劣化が疑われます。
長年の整備経験から編み出された、効率的なGND配線チェック法を紹介します。メーカーマニュアルには載っていない実践的な診断テクニックです。
温度変化を利用した診断法。
エンジン冷間時と暖機後でGND抵抗を測定比較します。接続部に腐食がある場合、温度上昇により抵抗値が変化するため、この方法で初期段階の劣化を発見できます。
振動負荷テスト。
エンジン回転数を変化させながらGND電圧を監視する方法です。接続部に緩みがある場合、振動により一時的な接触不良が発生し、電圧変動として現れます。
複数点同時測定法。
これら4点間の電圧を同時測定することで、どの経路に問題があるか特定できます。正常であれば全て0Vを示すはずです。
予防保全のポイント。
特に塩害地域や寒冷地では、GND接続部の腐食進行が早いため、予防保全が重要です。年式の古い車両では、主要なGND接続点の配線を新しいケーブルに交換することで、多くの電装品トラブルを未然に防げます。
このような独自の診断法を活用することで、従来では発見困難だったGND関連の潜在的問題を早期発見し、お客様により良いサービスを提供できるようになります。