60後期ハリアーの最も分かりやすい識別ポイントは、テールレンズの色です。前期モデルがクリアレンズだったのに対し、後期モデルは赤いテールレンズを採用しています。この変更により、テールレンズ交換時には必ず後期専用品を使用する必要があります。
フロント周りでは、フォグライトの位置と形状が大きく変更されました。前期の「鷹の目タイプ」から、後期ではフロントバンパー内に収納されたデザインに変更されています。さらに、左右端に縦型のデイライトが追加されており、全体的に横に広い印象を与えています。
整備時の注意点として、以下の項目が挙げられます。
パワーバックドアが標準搭載されたことで、リア周りの整備では電動機構の点検も必要になります。開度を5段階調節できる機能により、センサー類やモーター系統の不具合が発生しやすい傾向にあります。
60後期ハリアーで最も大きな変更点は、2L直噴ターボエンジンの追加です。このターボエンジンには専用の6速オートマチックトランスミッションが搭載されており、従来のハイブリッドやガソリンエンジンとは異なる点検項目があります。
ターボエンジン特有の点検項目:
ターボエンジンは熱負荷が大きいため、冷却系統の点検が特に重要です。ラジエーターの冷却効率確認、冷却水の交換サイクル管理、サーモスタットの開閉タイミングなど、通常のエンジンより頻繁な点検が推奨されます。
ハイブリッドシステムを搭載したモデルでは、駆動用バッテリーの劣化診断が重要な作業となります。バッテリー容量の低下は燃費悪化や走行性能の低下に直結するため、専用診断機による定期的な健全性チェックが必要です。
トランスミッション関連では、CVTとターボ用6速ATで異なるメンテナンススケジュールとなっています。特にターボ車では、高負荷運転による影響でATFの劣化が早まる傾向があります。
60後期ハリアーでは、純正ナビゲーションシステムが8インチから9.2インチに大型化されました。この変更により、電装系統の配線が複雑化し、故障診断時の手順も変更されています。
主要な電装系点検項目:
パワーバックドアの電動機構では、以下の点検が必要です。
電装系トラブルの多くは、接点不良や配線の劣化が原因となります。特に、車両の年式が進むにつれて、コネクター部分の腐食や配線被覆の劣化が発生しやすくなります。定期点検では、主要コネクターの接点清掃と防錆処理を実施することが推奨されます。
エアコンシステムでは、オートエアコンの制御基板や各種センサーの点検が重要です。室内温度センサー、外気温センサー、日射センサーなどの異常は、快適性の低下だけでなく、燃費悪化の原因にもなります。
60後期ハリアーの足回りでは、SUVとしての実用性と高級車としての乗り心地を両立させるため、複雑なサスペンション設計が採用されています。この設計により、従来のセダンやコンパクトカーとは異なる整備上の注意点があります。
フロントサスペンション関連:
リアサスペンションでは、マルチリンク式の複雑な構造により、各リンクのブッシュ類の劣化が性能に大きく影響します。特に、トレーリングアームやラテラルロッドのブッシュは、走行距離7万キロ前後で交換時期を迎えることが多く見られます。
ブレーキシステムでは、車重の重いSUVのため、ブレーキパッドやローターの摩耗が一般的な乗用車より早い傾向があります。特に、ターボ車では車重がさらに増加するため、ブレーキシステムへの負荷が大きくなります。
定期点検における重点項目:
タイヤとホイールでは、18インチまたは19インチの大径ホイールが標準装備されており、タイヤの偏摩耗が発生しやすい特徴があります。適切なタイヤローテーションとホイールアライメント調整が、タイヤ寿命の延長に重要な役割を果たします。
60後期ハリアーの中古車を整備する際には、新車時とは異なる特有の劣化パターンを理解することが重要です。2017年から2019年の製造年により、現在では車齢6~8年程度となり、各部品の経年劣化が顕著に現れる時期に入っています。
エンジン関連の重点チェック項目:
ターボ車では、ターボチャージャーのタービンシャフトのガタつき確認が最重要項目です。アイドリング時とアクセル操作時の音質変化、排気色の確認、ブーストかかり具合の測定を行います。直噴エンジンでは、インテークバルブへのカーボン堆積が深刻な問題となることが多く、吸気効率の低下により燃費悪化やアイドリング不調を引き起こします。
ハイブリッド車では、駆動用バッテリーの容量低下が最も重要な確認項目です。バッテリー容量が70%を下回ると、燃費性能が大幅に低下し、交換費用が40万円以上となる場合もあります。専用診断機による詳細なセル電圧測定と、実走行での充放電パターン確認が必要です。
電装系の経年劣化対策:
9.2インチナビシステムでは、液晶パネルの表示不良やタッチパネルの反応低下が発生しやすくなります。特に、夏場の高温環境での使用が多い車両では、液晶の色ムラや輝度低下が顕著に現れます。修理費用が15万円以上になることもあるため、中古車購入前の動作確認は必須です。
パワーバックドアでは、開閉時の動作音確認が重要です。正常時は静かな動作音ですが、モーター内部の摩耗により「ギーギー」という異音が発生することがあります。また、挟み込み防止センサーの誤作動により、完全に閉まらない症状も報告されています。
内装・外装の特殊事項:
ダークサドルタンのシートでは、合成皮革の劣化によるひび割れが発生しやすい箇所があります。特に、運転席のサイドサポート部分とセンターコンソール周辺は使用頻度が高く、早期劣化の傾向があります。補修用部品の供給状況も確認が必要です。
外装では、前期と後期で部品互換性がないため、事故修理歴の確認時には特に注意が必要です。フロントバンパーやリアバンパーの交換歴がある場合、適切な後期専用部品が使用されているかの確認が重要になります。
メンテナンス履歴の重要性:
60後期ハリアーでは、定期的なメンテナンス履歴の有無が車両の状態に大きく影響します。特に、エンジンオイル交換の頻度、CVTフルード交換の実施有無、ブレーキフルード交換時期などは、今後の整備計画に直結する重要な情報です。
ターボ車では、オイル交換サイクルの管理が特に重要で、メーカー推奨の5,000km毎の交換が守られていない車両では、タービン軸受けの摩耗やカーボン堆積が進行している可能性があります。これらの確認には、エンジン内部の詳細診断が必要となり、整備工数の見積もりに大きく影響します。