20系ヴェルファイア(2015年1月発売〜2023年6月販売終了)に搭載される予約ロック機能は、パワースライドドアが閉まりきるまでの約8〜10秒間の待ち時間を解消する画期的なシステムです。この機能により、ドアクローズ動作中にロック予約を行い、完全に閉まった瞬間に自動的にロックが作動します。
純正システムの動作原理は、BCM(ボディコントロールモジュール)がスライドドアの位置情報とクローズ信号を統合管理することで実現されています。具体的には以下の流れで動作します。
純正機能を持つグレードでは、運転席・助手席のリクエストスイッチ、キーレスリモコン、スマートキーのタッチセンサーなど、通常のロック操作と同様の方法で予約ロックが可能です。ただし、リクエストスイッチ使用時はスマートキーの携帯が必須となり、車内アンテナの検知範囲にも注意が必要です。
興味深いのは、エンジン始動中における副次的効果で、予約ロック機能付きスライドドアではルームランプの消灯タイミングが早まることです。これは電装系の負荷軽減にも寄与しており、バッテリー寿命の観点からも有効な機能といえます。
純正で予約ロック機能を持たない20系ヴェルファイアには、VALENTI製「予約ロックキット パワースライドドア用(AC-RDK-01)」をはじめとする社外キットの取付が可能です。適合車種は20系アルファード/ヴェルファイア(ANH2#/GGH2#/ATH2#、H20.4〜H27.1)となっており、左右両側のスライドドアに対応する場合は2セットが必要です。
取付作業の標準時間は1ドアあたり約2時間で、主要な配線ポイントは以下の通りです。
基本配線(12ピン白コネクタ)
特に重要なのがドア開閉検知線の処理で、既存配線を切断してBCM側に緑/白線、カーテシスイッチ側に青/白線を割り込ませる必要があります。この際、接続方向を間違えると機能が正常に動作しないため、テスターでの確認が必須です。
ドアクローズ信号については、アウターハンドル、インナーハンドル、ワンタッチスイッチそれぞれに対応した配線が用意されており、車種によって使用する線が異なります。黄線接続のワンタッチスイッチでは、通常より長めの押下が必要になる点も作業後の説明事項として重要です。
動作確認では、コントローラからのリレー音、メーター内ドア開インジケータの点灯/消灯タイミング、実際のロック動作まで段階的にチェックします。異常時の原因特定も配線図に基づいて体系的に行えるため、確実な作業が可能です。
20系ヴェルファイアに社外セキュリティシステムを装着する際、予約ロック機能との併用で生じる問題は整備現場でも頻繁に遭遇するトラブルです。特にGORGO(ゴルゴ)やVIPER3903などの人気機種では、追加オプション(5,000円〜30,000円)を選択しないと予約ロック機能が無効化されてしまいます。
問題の根本原因は、セキュリティシステムが車両のドア開閉信号を監視する際、予約ロック機能の信号処理と干渉することです。具体的には以下の症状が発生します。
VIPER3903の場合、予約ロック対応オプションなしでも機能が使用可能な場合がありますが、これは配線方法や車両個体差によるもので、確実性に欠けます。専門店での作業では、セキュリティのドア開閉検知入力線を予約ロックキットの緑/白線側に接続することで問題を回避しています。
併用時の配線処理では、ダイオードを使用した逆流防止回路の追加や、ステップライトなどのLED照明への影響対策も必要です。LED が薄っすら点灯する症状が見られる場合、LED のマイナス側配線を青/白線側に接続し直すことで解決できます。
セキュリティ専門店の選定では、予約ロック機能の重要性を理解し、適切な追加配線を提案できる技術力が求められます。単純な価格比較ではなく、アフターサポートも含めた総合的な判断が必要です。
予約ロック機能の故障診断では、まず症状の分類から始めます。主要な故障パターンは以下の通りです。
完全に機能しない場合
部分的に機能する場合
診断に使用する測定器具として、デジタルマルチメーターでの電圧・導通測定は基本ですが、オシロスコープがあればBCM信号の波形解析も可能です。特に間欠的な不具合では、信号の立ち上がり/立ち下がり特性の確認が有効です。
BCMとの通信診断では、OBD2コネクタ経由でのDTCコード読み取りも重要な手がかりとなります。ドア関連のコードとしてB1342(スライドドアポジションセンサー)、B1343(ドアクローズセンサー)などが記録される場合があります。
ワイヤハーネスの経年劣化も見逃せないポイントで、特にスライドドア可動部分の配線は繰り返し応力により断線リスクが高まります。配線の屈曲部分では目視点検と併せて、軽い引張テストでの確認も有効です。
社外キット装着車両では、取付時の配線ミスが原因となるケースも多く、取付説明書との照合は必須作業となります。特に緑/白線と青/白線の接続間違いは、一見正常に見えても機能が不安定になる典型例です。
予約ロック機能の長期安定動作には、定期的なメンテナンスが不可欠です。特に20系ヴェルファイアは発売から10年以上が経過しており、電装系部品の劣化も進行しています。
定期点検項目(6ヶ月ごと)
スマートキーのメンテナンスでは、電池交換だけでなく内部接点の清掃も重要です。接点復活剤の使用により、信号伝達の安定性が向上し、予約ロック機能の応答性も改善されます。
社外キット装着車両では、コントローラ内部の基板点検も年1回程度実施することを推奨します。特に湿気の多い環境で使用されている車両では、基板上の腐食や結露による短絡リスクが高まります。
ドアクローズ動作の調整では、スライドドアの開閉速度設定も確認ポイントです。過度に高速設定にしていると、予約ロック機能の信号処理が追いつかず、誤動作の原因となる場合があります。適切な速度設定により、機能の安定性と利便性のバランスを保つことができます。
メンテナンス記録の保管も重要で、故障時の原因特定や部品交換履歴の把握に役立ちます。特に保証期間内の社外キットでは、適切なメンテナンス履歴が保証対応の条件となる場合もあります。
長期使用における予防保全として、10万km走行時点でのワイヤハーネス全体点検、15万km時点での主要電装部品の予防交換を計画的に実施することで、突発的な故障リスクを大幅に軽減できます。これらのメンテナンス計画により、20系ヴェルファイアの予約ロック機能を末永く活用していただけるでしょう。