ledの種類と特徴を自動車整備に活用する方法

自動車整備の現場で活用されるLEDの種類と特徴について詳しく解説。砲弾型、表面実装型、COBの違いや用途、選び方のポイントまで整備士必見の情報をお届けします。あなたの作業効率は向上するでしょうか?

LEDの種類と特徴

自動車整備で使われるLEDの基本知識
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砲弾型LED

最も歴史が古く、信号機や装飾ライトに使用される定番タイプ

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表面実装型LED

現在最も主流で、ヘッドライトやテールライトに多用される高性能タイプ

COB LED

複数チップ搭載で大光量を実現する最新技術タイプ

LED砲弾型の特徴と自動車での用途

砲弾型LEDは自動車業界において最も長い歴史を持つLEDタイプです。その名の通り砲弾のような形状をしており、光る部分がドーム型のモールドで覆われています。

 

主な特徴

  • 価格が最も安価で大量使用に適している
  • 照射角度は40~60度と比較的狭い
  • 一つのパッケージに一つの光源を持つ構造
  • エポキシ樹脂を使用しているため紫外線と熱に弱い

自動車整備の現場では、以下のような用途で砲弾型LEDが活用されています。
ウィンカー・方向指示器
多くの車両でウィンカーに砲弾型LEDが使用されています。交換時には互換性を必ず確認しましょう。従来の白熱電球からLED化する場合、ハイフラッシャー現象が起こる可能性があるため、抵抗器の追加が必要になることがあります。

 

バックライト・テールライト
テールライトの一部にも砲弾型LEDが使われています。特に古い車種では、個別のLEDが故障した場合、部分的な交換が可能な設計になっていることが多いです。

 

インジケーター類
ダッシュボードの警告灯やインジケーターにも砲弾型LEDが採用されています。これらは長時間点灯することが多いため、省エネ効果が特に顕著に現れます。

 

砲弾型LEDの注意点として、連続512時間で約30%パワーが落ちてしまうというデータがあります。そのため、長時間使用される部分では定期的な点検と交換が必要です。

 

LED表面実装型の特徴と整備現場での活用

表面実装型LED(SMD:Surface Mount Device)は、現在自動車業界で最も主流となっているLEDタイプです。薄いチップ型の形状で、砲弾型LEDよりも明るく広い角度を照らすことができます。

 

技術的特徴

  • 照射角度は最大140度まで拡散可能
  • 砲弾型LEDの12~50倍の明るさを実現
  • シリコン樹脂を使用し、紫外線・耐熱性に優れる
  • 連続5万時間使用可能

自動車での主な用途
ヘッドライト
最新のヘッドライトでは表面実装型LEDが主流となっています。光の拡散性が高いため、路面を均一に照らすことができ、夜間の安全性向上に大きく貢献しています。

 

DRL(デイタイムランニングライト)
日中も点灯し続けるDRLには、耐久性の高い表面実装型LEDが最適です。長時間の連続使用にも耐え、車両の被視認性を高めます。

 

室内灯・マップランプ
車内の照明にも表面実装型LEDが多用されています。従来の電球と比較して発熱が少なく、バッテリーへの負荷も軽減されます。

 

整備時の注意点として、表面実装型LEDは精密機器のため、静電気による破損リスクがあります。作業時は適切な静電気対策を行い、専用の工具を使用することが重要です。

 

また、LEDチップが黄色く見えるのは、青色LEDと黄色の蛍光体を組み合わせて白色光を作り出しているためです。これは光の補色関係を利用した技術で、発光効率が非常に良いとされています。

 

LEDチップオンボードの特徴と照明効果

チップオンボード(COB:Chip On Board)LEDは、通常9個以上のLEDチップを1つのパッケージに密集させたマルチチップ構造を持つ最新技術です。2016年から本格的な製造販売が始まった、最も歴史の浅いLEDタイプです。

 

革新的な技術特徴

  • 複数のLEDチップを統合し大光量を実現
  • 各LEDチップの発熱量を分散・軽減
  • はんだ付け不要で故障リスクを低減
  • 多重影ができにくい均一な光を提供

自動車業界での応用
ワークライト・作業灯
整備工場では、COB LEDを使用したワークライトが急速に普及しています。広範囲を均一に照らすことができ、エンジンルームや車体下部の作業において、影の少ない理想的な照明環境を提供します。

 

フォグランプ
一部の高級車では、フォグランプにCOB LEDが採用されています。霧や雪の中でも視認性を確保する重要な安全装備として、その効果が注目されています。

 

検査用照明
車検や点検時に使用する検査用照明としても、COB LEDの均一な光は非常に有効です。傷や異常箇所の発見率向上に貢献しています。

 

現在のCOB LEDの制限として、色のバリエーションが少なく、照明用途以外の応用がまだ限定的という点があります。しかし、技術の進歩により、今後さらなる用途拡大が期待されています。

 

整備現場では、COB LEDの作業灯を使用することで、従来の蛍光灯やハロゲン灯と比較して大幅な省エネ効果を実現できます。また、瞬時点灯機能により、作業効率の向上も見込めます。

 

自動車用LEDの選び方と交換時の注意点

自動車整備においてLED交換を行う際は、適切な選択と正しい手順が不可欠です。間違った選択は車両の安全性に直結するため、専門知識に基づいた判断が求められます。

 

LED選択の基本原則
適合性の確認

  • 車種専用設計かアフターマーケット品かの判断
  • 電圧・電流値の完全一致
  • サイズ・取り付け形状の適合性
  • CANバス対応の有無

H3系統バルブの例
H3、H3a、H3c、H3d、H3Uなど、形状が似ていても互換性がない場合があります。H3とH3aは消費電力が異なり(H3/55W、H3a/35W)、発光点も若干異なります。

 

交換作業での重要なポイント
ハイフラッシャー対策
従来の白熱電球からLEDウィンカーに交換する場合、消費電力の違いによりハイフラッシャー現象が発生します。これを防ぐため以下の対策が必要です。

  • 抵抗器(バラスト)の追加
  • ICリレーの交換
  • CANバス対応LEDの使用

熱管理の重要性
LEDは発熱量が少ないものの、電子回路部分は熱に敏感です。特にヘッドライトのように密閉された空間では、適切な放熱設計が必要です。

 

極性の確認
LEDは極性があるため、プラス・マイナスの接続を間違えると点灯しません。H3c/H3dタイプは2端子が直接バルブ後方から出ているため、配線時の極性確認が特に重要です。

 

品質と安全性
認証マークの確認

  • Eマーク(欧州認証)
  • DOT認証(米国認証)
  • JIS規格適合品

これらの認証を受けていない製品は、車検に通らない可能性があります。

 

故障診断のポイント
LEDの故障パターンは白熱電球と異なります。

  • 完全消灯(チップ破損)
  • 光量低下(劣化進行)
  • 色味変化(蛍光体劣化)
  • ちらつき(電子回路不良)

LED化による省エネ効果と整備業務への影響

自動車のLED化は単なる光源の変更以上の意味を持ち、整備業界全体に大きな変革をもたらしています。省エネ効果と併せて、整備業務への具体的な影響を詳しく見ていきましょう。

 

エネルギー効率の革命
消費電力の劇的削減
LEDは白熱電球の約6分の1の電力消費を実現しています。例えば、55WのH3ハロゲンバルブをLEDに交換した場合、消費電力は約10W程度まで削減されます。

 

バッテリー負荷軽減効果

  • アイドリング時の発電量に対する照明負荷の軽減
  • 冬季のバッテリー上がりリスク低減
  • オルタネーターへの負荷軽減による燃費向上

整備業務への具体的な影響
交換頻度の変化
従来の白熱電球の寿命が1,000時間に対し、LEDは40,000時間以上の寿命を持ちます。これにより。

  • 定期交換作業の大幅削減
  • 突然の球切れによる緊急修理の減少
  • 予防保全の重要性向上

診断技術の高度化
LED化により新たな診断技術が必要となっています。

  • CANバス通信の理解
  • 電子制御ユニット(ECU)との連携
  • 故障コードの解析技術

作業環境の改善
作業灯としてのLED活用
整備工場の照明をLED化することで。

  • 瞬時点灯による作業開始時の待機時間短縮
  • 紫外線の少ない光による作業者の目への負担軽減
  • 長寿命による天井作業の減少

環境負荷の軽減

  • 水銀・鉛・カドミウムなど有害物質不使用
  • 廃棄物処理コストの削減
  • 環境配慮型サービスとしての付加価値

新たなビジネスチャンス
LED化サービスの展開

  • 車両の部分LED化から全LED化への提案
  • 省エネ効果の数値化とコスト削減提案
  • 安全性向上を訴求したアップセル

専門技術者の育成
LED技術の進歩に伴い、整備士にも新たなスキルが求められています。

  • 電子回路の基礎知識
  • 最新診断機器の操作技術
  • 顧客への技術説明スキル

今後、自動車の完全LED化が進む中で、整備業界は従来の機械的な修理から、より電子技術に特化したサービス提供へとシフトしていくことが予想されます。この変化に対応するため、継続的な技術習得と設備投資が整備工場の競争力維持に不可欠となっています。